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21世紀、日本の針路 ⑦東アジア共同体の歩み [平和外交]

 日本は、対米従属一辺倒の外交でなく、アジアに正面から向き合う新機軸の外交を進めてほしい。21世紀の外交戦略の第一歩は、東アジア共同体の推進である。その歩みをたどってみよう。

 

 1.樋口レポートの轍を踏むな

冷戦後の世界情勢の変化を先取りして、1994年に細川元首相が、防衛問題懇談会を立ち上げた。座長はアサヒビール会長(当時)で、「日本の安全保障と防衛力のあり方」(通称樋口レポート)が作成された。

樋口レポートの核心は「多角的安全保障協力=共同体の促進」であったが、米の戦略と一致せずつぶされた。日本は、樋口レポートの轍を踏まないよう、この経験を活かさなければならない。

 

2.東アジア地域協力(ASEAN+3)の動き

 199911月、ASEAN+3の首脳会議において、「東アジアにおける協力に関する共同声明」が採択された。これは、経済、社会、政治、安全保障に至る、包括的な協力の枠組みに言及したもの。

その後、中国が「中国・ASEANパートナーシップ行動計画」を発表し、域内の関税撤廃を進めた。

 日本は、対米・対欧関係重視の立場から消極姿勢を取っていたが、2002年に、小泉元首相が演説で、ASEAN+3にオーストラリア、ニュージーランドを加えた共同体を提唱し、東アジアを「共に歩み共に進むコミュニティー」とする構想を打ち出した。

2005年より、ASEANN+5にインドを加えた16か国による「東アジアサミット」(EAS)を2年に一回開催することとなった。2011年から米ロも参加。

 

3.鳩山元総理による「東アジア共同体」構想の経緯

 元民主党の鳩山元総理は、20099月の総理就任直前に、ニューヨークタイムズ紙に「日本の新しい道」という投稿記事で、経済・安保のアメリカ主導を批判し、日本は東アジアを軸に考えると主張し、「東アジア共同体」構想を提唱した。欧米から手厳しい批判を浴び、東アジア共同体構想も崩壊した経緯がある。

 その後、鳩山元総理は、東アジア共同体研究所を立ち上げて、フォローしている。

 

4.ASEAN共同体の発足

ASEAN共同体(東南アジア諸国連合10か国)201512月に発足した。「経済」、「政治・安全保障」、「社会・文化」の三つがテーマである。

「経済」のうち「モノ」の移動については、2018年までに域内の関税を原則ゼロにするという。「カネ」、「ヒト」の移動や、他のテーマについては検討中である。

日中韓で同様の組織ができれば、東アジア共同体(ASEAN+3)が実現する。

 

5.アジア太平洋広域経済圏セミナー(20176月)

 ジェトロと米・戦略国際問題研究所(CSIS)共催のセミナーが、ワシントンDCで開かれた。テーマは、「アジア太平洋地域の経済統合と日米の役割」で、日米の産学関係者が130名出席した。2004年以降13回目の開催という。東アジア共同体の構築には、アメリカの対応が重要で、注視が必要である。

 

6.李克強中国首相 東アジア共同体に言及

20185月に来日した李克強中国首相が、「中日平和友好事業の再出航を」を寄稿した。

要約すると、「日中には、自由貿易とルールに基づく多国間貿易を守り、東アジア共同体の構築と地域の一体化のプロセスを推し進め、地域の持続的かつ安定的な経済成長の極を作り出す責任がある。歴史を鑑(かがみ)とし、未来に向かおう」と述べた。

 

7.まとめ(筆者のコメント)

①鳩山元総理による「東アジア共同体」構想は、アイデアは良いのに、戦略も根まわしもなく、心無い言動が悔やまれる。

②中日韓自由貿易協定(FTA)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が、現在、精力的に進められているが、これらは、東アジア共同体構築に先行し、補完する活動と期待できる。

③東アジアの共同体は、モノ、カネの移動(経済連携)を優先目標にすべきで、人の移動の自由化や通貨の統合については、時間をかけて、慎重にした方が良いと思う。


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コメント 2

majyo

私が知っているのは鳩山さんからですが
アメリカにつぶされましたね
理想だけでは済まない日米関係がある事を
思い知らされました。
外交のアベとか言われていますが、実は無い。単なる外遊です。

東アジア構想は私も願っている事です
そしてもう少し知らないといけない事が多いです。

by majyo (2018-07-20 18:33) 

風船かずら

東アジアの国が協同して平和の地域に、ぜひ必要だと思います。
by 風船かずら (2018-07-24 09:10) 

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