アジアの平和 ⑨領土問題をどう解決するか [平和外交]
新冷戦の脅威を踏まえつつ、アジアひいては世界に平和をもたらすために、日本は何をしたらよいか。前回、非核化、安全保障、平和に深くかかわる宗教対立の解決策について考えてみた。今回は、平和の大敵である領土問題について考えてみよう。
1.アジアにおける領土問題
世界の領土紛争地域は40か所以上、数え方によっては120か所以上もあると言われている。アジアのそれは、主なものだけで下記10か所がある。
案件 |
実効支配国 |
領有権主張国 |
領土問題 |
竹島 |
韓国 |
日本 |
李承晩が領有主張し実効支配 |
北方領土 |
ロシア |
日本 |
北方4島の返還 |
尖閣諸島 |
日本 |
中国、台湾 |
調査で石油発見以来、問題化 |
西沙諸島 |
中国(1970年~) |
ベトナム、台湾 |
中国が石油発掘、ベトナム反発 |
南沙諸島 |
中国(1988年~) |
ベトナム、台湾* |
係争中に中国が軍事拠点化 |
アクサイチン |
中国 |
インド |
中印パの国境紛争地 |
カシミール |
インド |
パキスタン |
カシミール国境紛争地 |
ナゴルノ・カラバフ自治区 |
アルメニア |
アゼルバイ ジャン |
民族紛争地。現在はアルメニアの占領下にある |
ゴラン高原 |
イスラエル |
シリア |
イスラエルがシリアから奪った |
パレスチナ |
イスラエル |
パレスチナ |
ヨルダン川西岸で聖地がある |
(*) ブルネイ、フィリッピン、マレーシア
2.領土問題を解決した主な事例
①中国とロシアの国境線紛争で、1969年には武力衝突もしたが、2005年折半で平和的に解決した。
②インド、中国。インド、パキスタンの長年の国境線紛争を2015年、話し合いで平和的に解決した。
③シンガポールとインドネシア国境紛争を、2016年、話し合いで解決した。
④軍事衝突を繰り返してきたナイジェリアとカメルーンの国境紛争は、2015年、国際司法裁判所の裁定を受け入れて平和解決した。国連事務総長が称賛の声明を出した。(他に10数件解決済み)
3.領土問題解決のケースとコスト
前項の解決事例を参考に、解決のケースとコストの関係は下記になると思う。
領土解決の ケース
コスト |
話し合い解決 |
国際司法裁判所提訴 |
戦争 |
||
折半 |
資源の共同開発 |
棚上げ |
|||
|
|||||
小 |
大 |
極大 |
|||
4.領土問題解決のまとめ(筆者コメント)
①領土問題は早い者勝ちの要素があって、帰属先の証明は難しい。国民感情が絡むとさらに解決は困難だが、戦争になってはいけない。
②1972年の日中国交正常化交渉の際、尖閣棚上げ論があったかどうか議論がある。外務省は否定しているが、周恩来や鄧小平が唱えたとされる棚上げ論は正しいと思う。
③地域多国間協力の仕組みである、東アジア共同体の創設に努力しよう。地域の平和の価値に比べれば、目先のちっぽけな領土問題など、雲散霧消し、容易に解決するに違いない。
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