世界共同体⑪ 経済連携⑥ [平和外交]
世界共同体の創設にあたって、アジア連合各国の経済連携が重要である。前回は、日中経済連携戦略について検討した。今回は、経済連携の輪を日本、中国からアジアに広げて、具体的な経済連携の枠組みについてみてみよう。
1.アジア太平洋の経済連携の枠組み
アジア太平洋地域の政治課題と経済連携を模索する動きは下図のように要約できる。上段が政治課題、下段が経済連携を協議する機構である。
各機構の概要は次の通り。
2.東アジア首脳会議(EAS)
ASEAN10か国+日中韓印豪NZの16か国の首脳が参加して、2005年12月に発足。エネルギー、金融、教育、感染症対策、防災などを主要テーマに、2年に一回開催することとなった。2011年から米ロも参加。
3.アジア太平洋経済協力(APEC)
1989年に、ASEANのうち6か国、韓国、日本、NZ、豪、米、カナダの計12か国で発足した経済協力機構。その後、中国、香港、台湾、メキシコ、ロシアなどを加えて21か国・地域となった。人口で40%以上、GDPで60%弱、貿易額で50%弱の巨大な機構である。
4.自由で開かれたアジア太平洋戦略(FOIP)
日本が提唱し、日米豪印が参加して、民主主義と法の支配を遵守し、二つの大洋における海洋秩序を守るという。中国をけん制する意図が込められている。
5.東アジア地域包括的経済連携(RCEP)
ASEAN10か国+日中韓印豪NZの16か国が参加。2011年にASEANが提唱して始まった。
人口約34億人(世界の半分)、GDP約20兆ドル(世界の3割)、貿易総額10兆ドル(世界の3割)を占める、互恵的な広域経済圏が出現する。
交渉分野は、物品貿易、サービス貿易、金融サービスをはじめ、人の移動、投資、知財、電子取引など広範囲にわたっており、2019年交渉妥結を目指している。
太平洋を取り巻く国々で、自由で開かれた貿易を実現する協定である。米が離脱したため、現在、日本、カナダ、豪、NZ、メキシコ、ペルー、チリ、マレーシア、ベトナム、シンガポール、ブルネイの11か国で協定成立を目指している。関税が撤廃されて、日本の輸出が増える一方、農家が打撃を受ける可能性がある。また、中国を蚊帳の外に置こうとする意図が見える。
7.一帯一路(OBOR:OneBelt,OneRoad)
ユーラシア大陸の東と西を結ぶ「陸と海のシルクロード」と呼ばれる地域に、交通インフラ整備(高速鉄道の建設)などの大規模な投資を実施することによって、地域経済全体の底上げを図るというダイナミックな構想である。
周辺国との経済圏を構築し、友好関係を強めることがねらいだが、同時に、過剰投資に悩む中国国内産業の新たな市場開拓という帝国主義的な思惑も込められている。
8.まとめ(筆者コメント)
①RCEP,TPP,OBORは統合して、「アジア太平洋自由貿易連合」とし、平和の象徴にしよう。
②中国は、TPPが目指す自由で開かれた貿易には程遠いが、多国間協議の中で、一歩ずつ変わってくると思う。いや、変えなければならない。
コメント 0