「リベラル保守」の意義② 政治思想の検証 [政治・社会]
冷戦終結以後、左翼の退潮とともに、政治思想は全般に右に寄ってきた。立憲民主党の枝野幸男代表は「私はリベラルであり、保守である。」と述べている。確かに、保守とリベラルは、イデオロギーの対立ではなくなっている。
そこで、下表の3つのカテゴリーについて、その政治思想を比較考量してみよう。「リベラル保守」の意義が明らかになると思う。
1.政治思想の検証
区分 |
(注)リベラル/保守左派 |
保守右派 |
右翼 |
政治 理念 |
伝統尊重 |
伝統固守 |
伝統死守 |
公正な歴史認識 |
歴史修正主義 |
歴史ねつ造 |
|
平和主義(軽武装) |
軍事優先(重武装) |
覇権主義(核武装) |
|
日米同盟維持 |
日米同盟強化 |
対米独立 |
|
国民主権、下からの政治 |
復古的国家主義 |
軍事的大国主義 |
|
国際主義、多様性 |
国際主義、民族主義 |
排外主義、国粋主義 |
|
憲法9条尊重 |
憲法9条改正 |
明治憲法回帰 |
|
親中国 |
嫌中国 |
嫌中・韓 |
|
言論自由 |
言論抑制 |
言論統制 |
|
漸進改良 |
急進改革 |
急進革命 |
|
性格、思考傾向 |
寛容である、我慢強い |
寛容ではない、我慢が効かない |
|
覇権を好まず、お追従しない |
強い権力を好み、縋りつく |
||
見たくないものも見て対策する |
自分の見たいようにものを見る |
||
嫌いなものにも寄り添う、 支え合う社会を目指す |
嫌いなものは遠ざける |
||
代表的政治家 |
枝野幸男、岸田文雄、 大平正芳、加藤紘一 |
麻生太郎、稲田朋美、安倍晋三、 下村博文、高市早苗、 石原慎太郎 頭山満、北一輝 |
(注)リベラルと保守左派の差は少ないが、次の差には留意
リベラルは、伝統や歴史に対し、より未来志向で、自由奔放、
保守左派は、安保法制・集団的自衛権の現実を容認。
2.立憲民主党(リベラル/保守左派)に期待される政治姿勢
① 人権、国民主権、平和主義を尊重し、立憲主義をあくまでも貫く
② 専守防衛を逸脱するような、安保法制を前提とする、9条改悪に反対「リベラル保守」の意義③ 衆議院の勢力分布 [政治・社会]
立憲民主党の枝野幸男代表は、結党第一声で、「私はリベラルであり、保守である。」と述べた。確かに、保守とリベラルは、イデオロギーの対立ではなくなっている。
そこで、「リベラル保守」の意義について、当ブログで何回かに分けて考えてみよう。
-
衆議院の勢力図
10月の衆議院選挙は、民進党が、立憲民主党、希望の党、無所属に分かれた分裂選挙となり、自民党を喜ばせてしまった。
選挙の結果、衆議院の勢力図は下図のとおり、小選挙区制の手品で、与党の議席は2/3を超えたが、比例区の得票率は過半数に満たない結果である。
(1)議席数の分布
議席数は、自民、公明の与党が67%、立憲、共産、社民のレベラル系野党が15%、その他の野党が18%となっている。(下図参照 内円は党派別、外円は与野党別)
(2)比例区得票率の分布
比例区の得票率は、自民公明の与党が46%、立憲、共産、社民のレベラル系野党が29%、その他の野党が25%となっている。(下図参照 内円は党派別、外円は与野党別)
2.衆院選の結果(当選議員数と比例区得票数)
|
政党 |
議員数 |
% |
比例得票数 |
% |
参考 前回2014年の得票数 |
与党 |
自民 |
284 |
61.1 |
18,575,717 |
33.3 |
1766万票、33.1% 微増 |
公明 |
29 |
6.2 |
6,968,712 |
12.5 |
731万票、13.7% 微減 |
|
計 |
313 |
67.3 |
25,544,429 |
45.8 |
2497万票、46.8% 1%減少 |
|
リベラル野党 |
立憲 |
55 |
11.8 |
11,084,890 |
19.9 |
旧民主党 978万票、18.3% |
共産 |
12 |
2.6 |
4,404,081 |
7.9 |
606万票、11.4% 大はば減少 |
|
社民 |
2 |
0.4 |
941,324 |
1.7 |
131万票、2.5% 大はば減少 |
|
計 |
91 |
19.6 |
16,430,295 |
29.5 |
|
|
その他 野党 |
希望 |
50 |
10.8 |
9,678,524 |
17.4 |
新党。分裂したため期待外れ |
維新 |
11 |
2.4 |
3,387,097 |
6.1 |
838万票、15.7% 大はば減少 |
|
諸派 |
22 |
4.7 |
729,207 |
1.3 |
無所属を含む |
|
計 |
83 |
17.9 |
13,794,828 |
24.7 |
|
|
合計 |
|
465 |
100 |
55,769,552 |
100 |
投票率 2017 53.68% 2014 52.66% |
「リベラル保守」の意義④ 立憲民主党の政権戦略 [政治・社会]
今年10月の衆院選で、立憲民主党は比例区で1千百万票(得票率20%)を獲得した。自由民主党が1千8百万票(得票率33%)であったから、大変善戦したと言える。この勢いをさらに伸ばし、立憲民主党の固定票を40%にするための戦略を考えてみよう。
1.安全保障環境悪化の現状
北朝鮮の核・ミサイル脅威に対し、安倍首相は従米路線の圧力一辺倒で、戦争を辞さない構えを示している。惜しげもなく高価な兵器の購入を約束して、トランプ大統領と武器商人を喜ばせた。
自民党支持者はもちろん若者までが、東アジアの安全保障環境の悪化にビビッて、安倍首相の乱暴な言動に拍手を送っている始末である。
2.北朝鮮脅威の緩和策の提示
北朝鮮の核・ミサイル脅威に対し、安倍・トランプ強行路線に代わる政策を提示しよう。外交は政府の専管事項だが、野党も一定の貢献はできるはずである。現に、立憲民主党は、衆議院外交委員会に4名の議員を出している(コラム参照)。
まず、ロシアに仲介を頼んで6か国協議再開に注力しよう。北朝鮮に対しては、中国よりロシアの方が、現在、関係が良好である。二枚腰のプーチン大統領に金正恩の説得を任せ、核の凍結と6か国協議再開の道筋をつけてもらうよう働きかける。
ロシアに対しては、成功報酬として、大胆に、クリミアの併合を期限付きで認める。そのためには、EUやアメリカの説得が必要になる。
立憲民主党が、上記、緩和策の実現に貢献できれば、支持率5%アップは期待できる。
3.5%経済成長戦略の提案
アベノミクスによって、雇用増、株高など経済環境は改善しているが、これに満足していてはいけい。物価2%上昇、GDP実質5%成長を目指して、次のような野党として大胆な経済政策を提案すべきである。
日本のような人口減少社会では、一人当たりの生産性を向上する以外に生きる道はない。国土強靭化、人材開発、技術開発のため、公共投資を先行させ、民間投資を喚起すれば、年5%程度の経済成長は夢ではない。詳細は、2017年9月の当ブログ、「野党再編⑤ 受け皿新党の経済財政政策」参照
立憲民主党が、このような政策を推進できれば、支持率をさらに5%上乗せできると思う。
4.アジア連合構築による安心供与
安倍首相の日米同盟一辺倒で、中国を仮想敵国とみなす外交は、現在、東アジアの緊張を高めている。安全保障は抑止と安心供与が車の両輪である。日本は近隣諸国の懐に飛び込んで、アジアのことはアジアで解決するための、地域連合(共同体)の創設という大きな目標に向かって外交力を結集したい。
アメリカに敵対するのではない。アジアの人々により多くの愛を注ぐことだ。
立憲民主党が、目に見える形で、その道筋をつけることができれば、支持率をさらに10%アップして、合計40%の支持を受けるのは間違いない。
詳細は、2016年12月の当ブログ、「21世紀の外交戦略④ アジア連合のあり方」参照。
コラム 衆議院 外交委員会の構成 2017年11月29日現在
会派 |
自民 |
公明 |
立憲 |
希望 |
共産 |
維新 |
無所属 |
合計 |
委員長 |
1 |
|
|
|
|
|
|
1 |
理事 |
5 |
1 |
1 |
1 |
|
|
|
8 |
委員 |
12 |
1 |
3 |
2 |
1 |
1 |
1 |
21 |
「リベラル保守」の意義⑤ 野党共闘戦略 [政治・社会]
前回の当ブログで、立憲民主党の固定票を40%にするための戦略を述べた。今回は、野党の共闘、再編、統一会派結成について考えてみよう。小選挙区比例代表並立制の現在、野党がバラバラでは、一強多弱の現状は変わらない。
民進党が提案する、民進、立憲、希望の間の統一会派結成について、立憲・枝野代表は否定的な発言をしているが、野合批判は甘受して、あらゆる連携の可能性を探るべきである。
1.野党共闘のシナリオ
(1)シナリオ0 自公連立政権の比例区得票率。自公で45.8%であった。
(2)シナリオ1 立憲、共産、社民、諸派(大半が野党系の無所属)が、野党共闘を成立させた場合、得票率は30.8%となる。共産党を毛嫌いするのは時代遅れである。政策で一致できる所を探して協力すればよい。
(3)シナリオ2 希望の党の大串グループ(注1参照)が、離党して立憲に入党した場合を想定している。得票率は35.8%となり、与党に近づいている。可能性は高い。
(4)シナリオ3 公明党の反乱を誘って、野党の大共闘を実現した場合を想定している。得票率は48.3%で、自民の33.3%を凌駕している。
衆院選でこの体制ができれば、政権交代が起こると思う。公明党の女性支持者にはリベラルが多いので、不可能ではない。
シナリオ(S) |
自民 |
公明 |
立憲 |
共産 |
社民 |
諸派 |
希望 注1 |
維新 |
|||
比例区得票率 |
33.3 |
12.5 |
19.9 |
7.9 |
1.7 |
1.3 |
17.4 |
6.1 |
|||
S0連立の現状 |
45.8 |
19.9 |
7.9 |
1.7 |
1.3 |
5.0 |
12.4 |
6.1 |
|||
S1野党共闘成立 |
45.8 |
30.8 |
5.0 |
12.4 |
6.1 |
||||||
S2希望の再編 |
45.8 |
35.8 |
12.4 |
6.1 |
|||||||
S3公明の反乱 |
33.3 |
48.3 |
12.4 |
6.1 |
2・まとめ
(1)一強多弱の現状を変える大胆な戦略を立てよう。
(2)希望の党の支持率は1%台と不人気である。大串グループを取り込んでしまおう。
(3)公明党の反乱を誘って、自公連立を壊し、野党の大連立を実現しよう。
コラム 内閣支持率と政党支持率の趨勢
NHK世論調査(2017/12/8~10)の内閣支持率は下表のとおりで、10月の選挙一週前と比べると、逆転して支持が多くなっている。北朝鮮情勢や、景気の動向が支持を増やしている模様である。
NHK調査 内閣支持・不支持率 |
支持率 |
不支持率 |
2017年12月8~10日 |
46% |
35% |
2017年10月15日(選挙一週前) |
39% |
42% |
NHK世論調査(2017/12/8~10)の政党支持率は下表のとおりで、衆院選の比例区得票率とは大きな差がある。立憲は19.9%が7.9%となった。支持政党なしの41%や、政治経済情勢の変化の影響が出ていると思われる。単純比較すべきではないが、研究課題ではある。
NHK世論調査 |
自民 |
公明 |
立憲 |
共産 |
社民 |
諸派 |
希望 |
維新 |
なし |
政党支持率 |
38.1 |
4.1 |
7.9 |
3.5 |
0.6 |
0.3 |
1.4 |
1.5 |
41.0 |
「リベラル保守」の意義⑥ 世論調査から見た課題 [政治・社会]
東京大学谷口研究室と朝日新聞社が、今年10月の衆院選挙後に行った、有権者を対象とする共同世論調査から、立憲民主党にとって、いくつかの政策課題が見えてきている。
衆院選挙の投票結果を知った後の調査であるため、先に、当ブログで述べた比例区得票率とは多少異なっている。
1.若者の保守化への対応
有権者の年代別政党支持率は下記グラフの通りである。10~20代の若者の52%が自民、11%が立憲を支持している。若者の保守化と言われる現象である。有効求人倍率が1.5を超える経済状況を見れば当然ともいえる。
立憲は、50代以上の高齢者から25%と、比較的高い支持を得ている。戦争を知る世代の平和主義への思いが、戦争をいとわない(無意識でも)安倍政権への不支持の表明ではないかと思う。
今回の調査で、「政権担当能力がある政党」として、自民党は調査対象の有権者から75%の支持を得ている。2位は立憲民主党の18%であった。立憲民主党の政策課題は、政権担当能力がある政党と認めてもらうための取り組みになる。
課題① アベノミクスの上を行く経済政策の提言(当ブログの「5%経済成長戦略」)
課題② 野党として、アジア外交関与のため、中韓などの要人と交流の場を持つ
2.憲法改正機運への対応
憲法改正の賛否の状況は下記グラフの通りである。憲法改正に賛成(どちらかというと賛成を含む)は40%、中立(どちらでもない)33%、反対(どちらかというと反対を含む)27%であった。自民支持層、立憲支持層の回答はグラフの通りで、真逆になっている。(下のグラフ参照)
憲法改正の方向を項目別にみると、
賛成派の最も改正すべき項目は「戦争放棄と自衛隊」53%、反対・中立派の最も改正すべきでない項目は「戦争放棄と自衛隊」71%、となっている。
日本は武装強化路線か、平和外交路線か、選択を迫られている。
課題③ 戦争の悲惨さ、平和の価値、平和主義をテーマにしたネットのサイト開設
課題➃ 平和外交への貢献(専守防衛で国民を守る仕組み)
3.無党派層の取り込み
[多くの人が「長期的に見ると、自分は△△党寄りだ」とお考えのようです。短期的に他の政党へ投票することはもちろんあり得るとして、長い目で見ると、あなたは「何党寄り」と言えるでしょうか。] という設問への答えが、下の政党支持率の表である。
無党派層(21%)の人に、重ねて聞いた比例区投票先が表の右半分である。政権政党の自民党が圧倒的に優位になっている。支持者獲得のコツは何であろうか。
課題⑤ 野党共闘、再編、統一会派結成の道筋を示し、政権担当能力を訴求
長い目で見た支持政党 (%) 無党派層(21%)の比例区投票先(%)
自民 |
46 |
|
|
|
無党派 |
21 |
------------→ |
自民 |
26 |
立憲 |
13 |
|
立憲 |
25 |
公明 |
5 |
|
公明 |
8 |
希望 |
4 |
|
希望 |
20 |
維新 |
4 |
|
維新 |
7 |
共産 |
3 |
|
共産 |
12 |
民進 |
3 |
|
社民 |
2 |