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原発ゼロ ② 小泉元首相らの原発ゼロ法案

 小泉元首相らが顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(「原自連」)は110日「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表した。概要は次の通り。

 

1.目的

  すべての原子力発電を廃止し、再生可能エネルギーへの全面転換を促進し、国等の責務と推進体制を定め、我が国のエネルギー構造の転換を実現する。

 

2.基本方針

 ①運転中の原発を直ちに停止、 ②停止中の原発は今後稼働させない、 ③停止した原発の廃炉計画を策定、 ➃原発の新増設は認めない、 ⑤核燃料サイクル事業から撤退し、再処理施設は廃止、 ⑥原発事業輸出は中止し、原発全廃の必要性を世界に発信、 ⑦再生可能エネルギーの電力比率を、2030年までに50%以上、2050年までに100%とする。

 

3.国の責務

  すべての原発の廃止と、再生可能エネルギーへの全面転換を実現するため、法制、財政、税制、金融上の措置を講ずる。

 

4.推進体制

  内閣に、首相を長とし、関係国務大臣で構成する、原発ゼロ・再生可能エネルギー推進本部と、有識者で構成する推進会議を設置する。

 

5.まとめ(筆者のコメント)

①「原自連」の即原発廃止提言は歯切れが良い。地震列島の日本にはふさわしい。

②太陽光発電素子の新技術(プロブスカイト太陽電池)が日本から出た。

官民挙げて実用化に取り組もう。

③日本は地形から、水力に最大に優位性がある。サブダムを作って、需要のピークに対応する、

時間差揚水発電をしよう。

④石炭火力は効率がアップしたというが、CO2を出し続ける。まして輸出などもってのほか。

2016年のエネルギー自給率は8.4%で、世界で34位。(ノルウェー700%、豪300%、カナダ170%)

 原子力に頼らずに、再生可能エネの活用と、省エネで、自給率100%は可能。

 

コラム 原発ゼロ賛成反対の主な団体

 

賛否

団体名

主な主張

原発

ゼロ

賛成

立憲民主党

「原発ゼロ基本法」制定。前回の当ブログ参照。

「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」

「原発即停止」。詳細は上記。

会長:吉原毅城南信用金庫顧問。

顧問:小泉純一郎、細川護熙元首相

超党派議員連盟・原発ゼロの会

省エネと、再生可能エネへの大胆な転換。原発立地自治体の再生。東電の賠償・廃炉費用の国民負担反対。老朽炉廃炉費用の見積り公開。

グリーンピース

捕鯨反対で有名だが、米、仏の核実験に反対した。

青森県六ケ所村にある日本原燃の使用済み核燃料再処理工場で、試験運転に反対する抗議行動を行った。

原発

推進

自由民主党

原子力を重用なベースロード電源とする。新規制基準に適合する原発は、自治体の理解を得て、再稼働する。原発依存度を可能な限り低減する。

日本経済団体連合会(経団連)

安全性が確認された原発は、重用なベースロード電源として活用する。2030年度に電源構成の2022%を原子力が担う。事業者は、「原子力安全推進協会」を通じて、安全性向上に取り組む。

日本経済新聞社

「原発ゼロ」は経済、産業、雇用への影響が大きい。地球温暖化防止、原子力技術深化の見地から、原発維持が必要。(筆者:経団連の御用新聞か)

産経新聞

「原発ゼロ」こそが国難だ。エネ自給率4%の国では無理。南海地震で火力発電所はつぶれる。日本海側の原発は不可欠。(筆者:まったくずれている。新聞社をやめた方が良い。)


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原発ゼロ ③ 自民党のエネルギー基本計画 [政治・社会]

 安倍政権は2014年に「エネルギー基本計画」を決定した。30年度の最適な電源構成を構想するもので、概要は下記の通りである。

 

1.自民党の原発基本政策

①原子力を重要なベースロード電源と位置づけ活用する。

(旧民主党政権が掲げた「30年代原発ゼロ」をひっくり返した。)

②新規制基準に適合する原発は、自治体の理解を得て、再稼働する。

30年度の電力供給のうち、原子力発電の比率を2022%とする。

(原発30基程度の稼働を見込む。温暖化対策には原発が不可欠としている)

 

2.自民党のエネルギーミックス

①再生エネの比率目標を、30年度までに、2224%とする

②水素社会実現のため、技術開発や規制改革を進める

③メタンハイドレート等の海洋資源活用戦略を進める

 

3.まとめ(筆者コメント)

①原発の事故リスク対応費用は、1kwh当たり0.5円と見積もっていた。

(事故リスク対応費用の総額5.8兆円を50基の原発総発電量で割って算出)

②ところが、福島第一原発の事故対応費用は、いまや21.5兆円と見込まれている。今後、地震の他に、テロやミサイル攻撃に備える膨大な費用が必要となり、「原発は割安」は嘘。

③経団連等の政治献金にからめとられて、既得権益護持に加担する政策は大問題である。

 (既成電力会社の送電網に、再生エネを接続する際、接続を邪魔する制度の容認がその一例)

④水素、メタンハイドレート等の活用には賛成。筆者は下記コラム記載の先端技術開発に大胆な投資を期待している。

⑤地域で再生エネ開発のプロジェクトを数多く立ち上げ、電力の地産地消を実現しよう。その際、クラウドファンディング手法(民間基金)を活用して、趣旨に賛同する人々から広く投資資金を集めよう。

 

コラム 原発ゼロを支援にする先端技術

 エネルギー自給率100%の実現に役立つ、有望な技術シーズである。どれも世界的な競争に直面しており、大胆な投資が必要である。

 

主な先端技術

概 要

高温超電導

省エネ効果が大きい、超電導ケーブル、超電導舶用モータ、超電導風力発電機の分野で、アメリカ等と線材の開発競争が激しい。技術基準の国債標準化でも、熾烈な競争。

ナノテク

環境・エネルギー分野の革新に役立つ、日本が得意とする技術。基礎研究の成果が実用化に上手く結び付いておらず、中国などの追い上げがきつい。

炭素繊維等

高強度、高弾性、高耐熱繊維で、省エネ分野に幅広く使われている。世界7割のシェアを占める日本の得意分野だが、追い上げ急。

レアメタル

新エネ、省エネ、環境対策分野で重要な素材。資源確保、代替材発見、人材育成などが緊要。

スマートグリッド

情報通信技術を使って、電力の需給を最適化する、次世代送配電網。中国は44兆元(500兆円)の投資を決定。

燃料電池

水素と酸素を反応させて、電気を作る発電装置。発電効率が良く、環境にやさしい。自動車をはじめ、航空エンジンへの適用など、用途も広い。

太陽電池

太陽光発電素子の新技術・プロブスカイト太陽電池が日本から出た。官民挙げて実用化に取り組みたい。

蓄電池

電気自動車用リチウムイオン電池が活況を呈している。

東海村のJ-PARCでは、2030年までに蓄電能力が2倍の「革新電池」の開発を目指している。



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原発ゼロ ④ 「原子力市民委員会」の活動 [政治・社会]

 原子力市民委員会は、原発ゼロ、核のゴミ処分、福島原発事故の被災地・被災者支援等の課題解決を目指す市民の会である。(下記コラム参照)

 

1.原子力市民委員会の、原子力利用に対する基本認識(筆者が要約)

①原子力発電への固執は、国民の不幸、損失、危機のもと

②「原発ゼロ社会」は原発停止だけでなく、負の遺産の始末が必要

③原発は国策であったから、原発ゼロも国策の転換が必要

④原発のコストは過小評価されている。原発はもはや経済合理性を持ちえない。

⑤原発ゼロは今や現実的な選択である。原発を維持する方が困難

⑥福島原発事故の復興は「人間無き復興」になっている。事故責任者を糾弾せよ。

⑦現行の原子力延命政策が電力自由化と再生エネの普及を妨げている。

⑧原子力規制委員会の新規制基準には欠陥がる。防災体制もぜい弱。

⑨核燃サイクルは断念すべき。核のゴミは資源でなく、核廃棄物。長期隔離保管せよ。

⑩原発輸出は経済的にも、倫理的にも不適切である。

 

2.原子力市民委員会の主な活動

2017/12/25「原発ゼロ社会への道2017―脱原子力政策実現のために」提言書を公開。

2018/2/4(土)「廃炉時代を考える意見交換会」を福井で開催予定。

 

3.まとめ(筆者コメント)

①原発ゼロのカギは、世論の力。感情論を排し、市民集会等を通じて情報共有が必要

(「2030年原発ゼロ」をテーマに討論型世論調査をした結果、賛成33%が47%に増えた事例がある。原発容認派は、前後とも、約30%で変わらなかった。)

②世論形成は、当面、原発再稼働の反対運動から取り組むのがおすすめである。

2017/3月の毎日新聞世論調査で、原発再稼働の反対55%、賛成26%)

③地元の国会議員や地方議員に原発ゼロを訴えるのも有効である。

2017/10月の朝日新聞世論調査で、衆院選投票先として、原発への姿勢を重視する54%、重視しない34%であった。)

 

コラム 原発ゼロを目指す、主な市民団体

 

団体名

活動内容

原子力市民委員会

NPO法人高木仁三郎市民科学基金が中心になって、2013年に設立された。脱原発社会の課題を分析し、政策提言を行う。

「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」

詳細は当ブログ「原発ゼロ ② 小泉元首相らの原発ゼロ法案」参照

原発問題住民運動全国連絡センター(原住連)

「原発・核燃からの撤退」、「原発ゼロ」を目指して活動中。

情報誌「げんぱつ」毎月発行。

筆頭代表委員:伊東達也氏。

原発をなくす全国連絡会

「原発のない未来へ」3.4全国集会を計画中(日比谷野外音楽堂)

全国労働組合総連合が中心なって、多くの民間団体が加盟。

環境エネルギー政策研究所

持続可能なエネルギー社会を目指して、研究・提言し、自然エネルギーの普及啓発をしている。自然エネルギー白書2017、自然エネルギー世界白書発行。 所長:飯田哲也氏

脱原発弁護団全国連絡会

原発差し止め裁判に積極的に取り組む。弁護団の情報共有、学習会開催。

福島自然エネルギー基金

2016年設立。福島原発事故の復興、未来創造事業、原発に頼らない自然エネルギー支援事業を行う。

原発ゼロ市民共同かわさき発電所

地産地消・地域分散型の自然エネルギー発電所を建設、運営。映画「日本と再生」光と風のギガワット作戦(河合弘之監督)の上映会も実施。

さようなら原発熱海の会

原発ゼロ都市宣言を求めて、7830人の署名を添えて熱海市に陳情書を提出した。

原発ゼロを目指す県民の会

九州電力川内原発の運転延長を認めない市民団体。

 


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原発ゼロ ⑤ 原発からの投資撤退 [政治・社会]

 事故リスクの高い原発や、温暖化の原因になる石炭火力などへの投資をやめる「ダイベストメント(投資撤退)」が広がっている。朝日新聞のbe掲載(217日)の記事を参考に考えてみよう。

 

1.投資撤退(ダイベストメント)の目的

 投資家が、環境破壊に無頓着な企業に対し、株・債券などの金融資産を引き上げて事業をストップさせるのが目的で、間接的な兵糧攻め狙っている。

 

2.投資撤退の主なターゲット企業

 原発・化石燃料への貸出トップ5

順位

企業名

貸出額

みずほ銀行

3兆7864億円

三井住友銀行

1兆9767億円

三菱東京UFJ銀行

1兆7979億円

三井住友信託銀行

  4076億円

三菱UFI信託銀行

  3953億円

 

3.投資撤退の主な推進団体

 化石燃料から投資撤退を決めた主な団体は下記。世界では、76ヶ国、832もの企業や団体がダイベストメントを宣言し、運用資産は、6兆ドル(650兆円)に達している。

区 分

主な国、自治体、団体

国・都市

シドニー、ベルリン、アイルランド、ケープタウン、ニューヨーク

年金

ノルウエー政府年金基金、カリフォルニア州公務員年金基金

保険

アクサ(フランス)、アリアンツ(ドイツ)、ロイズ(英国)

大学

ハーバード大学(米国)、オックスフォード大学(英国)

宗教

世界教会協議会(本部・スイス)、英国国協会、ウムアラマ・カトリック教会(ブラジル)

 

4.環境NGO 350.org japanの活動(日本)

 350.org japanは、地球温暖化問題に取り組む国際環境NGO、「350.ORG」の日本支部で、レッツ・ダイベスト・キャンペーンを実施している。(https://letsdivest.jp/ 活動の成果は下記で、世界のレベルには遠く及ばない。

  1. ダイベストメント参加人数  134人

  2. ダイベストメント参加団体   10団体

  3. ダイベストメント推定金額  5億1918万円

5.地球にやさしい日本の銀行

 地方銀行、ネット銀行、信用金庫、労働金庫のうち、45行が、原発・化石燃料への貸出などはせず、地球にやさしい銀行として推薦されている。

例えば、城南信用金庫は2011年に、脱原発を宣言し、自然エネルギー普及のための融資に力を注いできた。

 

6.まとめ(筆者コメント)

①原発事故に見舞われたとはいえ、石炭など化石燃料にどっぷりと依存して、CO2排出削減をあきらめてしまっている。日本はパリ協定にしっかり向き合おう。

②レッツ・ダイベスト・キャンペーンのような活動に、国民一人ひとりが可能な限り参加しよう。筆者は、長期保有のみずほ銀行株を売却した。

5項記載の地球にやさしい銀行に口座を開き、2項記載のターゲット銀行から預金を移そう。


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