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21世紀、日本の針路 ⑬世界政府とその理念 [平和外交]

 アジア、EU、米州などの地域連合の上に、これらを管理するための、世界政府機能の創設を提案する。これは、国連の改革というより、世界政府機能を新しく創設し、国連組織のうち、使えるものは組み込んで利用するという構想である。世界政府の真の目的と、目指すものは何かを考えてみよう。

 

1.世界政府の目指すもの(下表)

NO

目指すもの

内容

自由貿易の推進

保護貿易主義が蔓延する今、自由貿易は世界平和の要である。WTOを改革し、グローバリゼーションの行き過ぎは制御しよう。

地域連合の管理

米州、アジア、EUなどの地域連合が機能するよう、支援と管理を万全に。

人権擁護と安保

難民や移民などへの人権侵害に対し、元を断つ施策が必須。

軍備増強による安全保障より、紛争予防や、安心供与・信頼醸成による軍縮を。

核兵器廃絶

核抑止力有用論の克服、核先制不使用を宣言する保有国の増加、核兵器による威圧を禁止、非核兵器地帯の面積増加、核兵器保有税の新設、核廃絶市民運動の展開(不買運動含む)

恒久平和の保障

各地域連合から少数精鋭を集め、地球防衛軍を編成して、紛争・戦争予防に当たる。世界憲法の遵守で、恒久平和を実現。

 

2.世界政府の組織

 世界憲法を制定し、これを実現する世界政府の組織は、概略、下図の通りである。

 

世界政府の組織R1.jpg

 

 

3.まとめ(筆者コメント)

 

①超大国の横暴や、民族紛争の激化で地球は危機に瀕している。この危機を救うには、人類の勇気と英知を集めて、世界政府を樹立するしかない。

 

②核抑止力有用論は本当だろうか。核兵器は相互に防御不能であり、安上がりで、戦争をできなくしたというが、本当だろうか。テロ集団への移転や、不慮の事故対応、更新・廃棄費用などを考えると、決して安くはないと思う。

 代案がある。安心供与・信頼醸成に基づいた世界政府の樹立が答えである。

 

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21世紀、日本の針路 ⑭世界政府創設の段取り [平和外交]

 前回の当ブログで述べた、世界政府の理念を実現するための、世界政府創設はどのような段取りになるか考えてみよう。

 

1.世界政府創設の準備組織

 意外かもしれないが、いま世界で一番問題の難民予防を入口のテーマにしよう。難民流出は世界の困難の多くの割合を占めている。

日本が主導して、国連内に難民予防検討の仕組みを作り、難民流出の原因分析や対策立案の過程を通して、世界政府創設の準備組織を立ち上げよう。

 

2.世界憲法の起草

 世界憲法は、国連憲章をなぞるだけでは不十分である。世界政府に必要な機能を新しく想定し、それをもとに草案を作ろう。

コラム1の国連憲章の問題点や、コラム2の世界憲法予備草案などを参考にして、画期的な世界憲法を作りたい。

 

3.世界政府の機能のデザイン

世界政府に必要な諸機能を新しくデザインし、質と量を定義しよう。世界政府、世界行政府、世界政府議会などが対象である。(前回ブログ記載の「世界政府の組織図」参照)国連組織のうち、使えるものは組み込んで利用するという発想が必要である。

 

4.まとめ(筆者のコメント)

 

①英・アクトン卿の格言:「あらゆる権力は腐敗する。絶対権力は絶対に腐敗する。世界帝国(一極覇権国家)による安定した平和は危険。世界政府による不安定な平和はまだまし。」

 

②難民の流出は、アフガニスタン、南スーダン、シリア、ミャンマー、ソマリアなどからが多く、流入先において、社会の分断と紛争引き起こしている。流出を予防する活動が切望される。

 

コラム1 国連憲章の問題点

国連憲章は、前文と111条からなる。目的・原則、加盟国の地位、機関、総会、安保理、紛争の平和的解決、経済的・社会的国際協力などを規定している。

国連は、加盟国から国連軍に兵力提供を受けるための「特別協定」が、米ソ対立で草案の作成に失敗し、いまだに締結されていない。そのため、常備軍の編成の失敗で、国連軍の実態がなく、紛争解決をPKOに頼っているのが実情である。

 加盟国が急増したにもかかわらず、国連は、地球規模の諸問題に適切に対応できていない。拒否権を手放さない安保理常任理事会の改革や、経済・社会理事会の強化など、多くの問題を抱えている。

また、国連憲章には、いまだに敵国条項なるものがあり、日本やドイツがその対象になっている。直ちに削除しなければならない。

 

コラム2 世界憲法予備草案

 「世界連邦運動」の理念を表明したものに、世界憲法予備草案がある。19483月に世界憲法審議委員会によって発表された世界連邦の憲法草案である。

草案は、前文と全47条からなり、戦争防止のための権能と、正義と人権の保障を表明した。また、基本義務及び権利に関する宣言では、下記のような画期的考え方を含んでいた。

①「貧困の束縛からの解放、隷属的・搾取的労働からの解放」、

②「人種的・民族的な征服からの個人・集団の保護」

③「土地・水・空気・エネルギーを人類共通の財産と位置付ける」

 この草案の考え方には、一部批判もあるが、世界憲法の起草の際に、参考になる。


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21世紀、日本の針路 ⑮アタリの新世界秩序 [平和外交]

 ヨーロッパの知性と称される、ジャック・アタリ氏の近刊本「新世界秩序」を読んだ。副題が、30年後の世界を支配するのは誰か? 日本はどうすべきか? となっている。

 「新世界秩序」は、国連を改革して世界共同体を創設するのがテーマである。当ブログのシリーズで述べた世界政府の創設と重なり、大変参考になるので、シリーズの最後に取り上げる。

 

1.ジャック・アタリ氏の世界共同体

 世界共同体創設の論旨を、下表にまとめてみた。

 

 

名称

機能

備考

S

世界共同体

世界統治、世界法典の遵守

 

A

世界議会

世界共同体の意思決定

三院制

A1

世界市民議会

世界法の評決。首相指名(首相が大臣指名)。予算審議 

議員数1000人、議員任期5

A2

国家代議院

(現国連総会)

現国連総会に近い。領土紛争を管理。法典の起草に参与

各国、人口の大小にかかわらず、一律2人選出

A3

長期企画院

法典の原案提出。世界共同体の長期的(20年)安定、独立性、能力向上。将来世代の代表、地球環境や生物の保護

議員定数は300人。任期10年。

有識者。

B

世界統治機関

世界共同体の行政全般の執行。

 

B1

 首相

世界統治行政の責任者。公務員を採用し、予算案を編成、決定後、執行。

世界市民議会で選任、任期5年。首相が大臣を選任

B2

世界統治

評議会

(現安保理)

現安全保障理事会に近い。米、EU、露、中、印が拒否権保持。日本の他3国に将来拒否権付与。

他に10か国の非常任理事国を置く

すべての大陸の代表で構成。

G20と融合させる。

国連総会に報告義務あり。

国連総会に異議申し立権限付与

B3

7人委員会

世界の利益の代表者。法典遵守監視

三院で各2名選出、互選1名。任期7年、再任不可。議長持ち回り

B4

 世界警察

経済犯罪撲滅、民主主義擁護グローバル・リスク除去。

長官は、世界統治機関が指名、議会が承認。

B5

 防衛軍

世界の紛争の予防と解決

隊員は、長期企画院監督下の選抜試験を経て採用。

C

司法制度

世界法典(憲法含む)の遵守

法典は、世界議会が票決する

C1

 最高法廷

世界司法体系の頂点に立って、これを統括する。各国の裁判所は、世界法典との整合性をチェックされる。

裁判官は、三院によって指名。

D

民主政治制度

世界政党の結成、政策綱領の開発。

必要な予算をつける

世界情報機関を設置し、世論形成、文化交流などを促進する

E

金融システム

世界中央銀行を設けて、世界通貨を発行し、複数の世界投資銀行を通じて、金融の国際的均衡を図る

融資業務と預金運用業務を分離させる。

 

4.まとめ(筆者のコメント)

 

①世界統治評議会で、拒否権の行使が可能だが、これでは、大国の横暴が温存されることになる。議決権にウエイトをつけるなど、採択方法の工夫により、拒否権をなくすべきである。

 

②敵を探してバランス・オブ・パワーで凌ごうとする強権政治が、いま氾濫している。ともに平和を作ってゆく国際協調の道を、真っ先に探そう。

 

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21世紀、日本の針路⑯ 本シリーズのまとめ(上) [平和外交]

 「21世紀、日本の針路」シリーズの終わりに当たり、ポイントを二回に分けて述べよう。

 

1.歴史修正主義の清算

安倍首相は、過去に、「侵略の定義は定まっていない」、「植民地で良いこともした」などの発言があった。地球俯瞰外交を自慢しても、衣の下に鎧を隠すような態度では、東アジアでは、外交をさせてもらえない。

安倍首相にとって、歴史清算の象徴的な行動は、南京慰霊訪問である。南京を訪問して頭を下げるだけで、中国はもちろん、アジアの人々の態度がガラッと変わると思う。

 

2.近隣外交の改善

 米中貿易戦争の影響もあって、最近は、日中雪解けムードの気配が感じられるようになった。この機に乗じて、下記施策を実行し、一気に、東アジア共同体構築のキックオフに持ち込もう。

●中国の「一帯一路」構想に参加表明

AIIBアジアインフラ投資銀行)加入の表明

●アジア相互信頼醸成措置会議(CICA)に、正式参加表明

●東アジア地域連合(共同体)のキックオフ宣言

 ここまで信頼醸成ができてくれば、日本の憲法九条2項(戦力不保持、交戦権否認)を削除する憲法改正が可能になろう。九条1項(戦争放棄)さえ堅持すれば、国民からも、アジア各国からも、九条2項削除の賛同は得られると思う。

 

3.日米同盟の見直し

日本は、過去72年間、何回かあった日米同盟見直しのチャンスを逃してきた。安倍政権は、日米同盟に縋りついているが、同盟が完全に機能する保証はない。

この辺で、戦略を練り、勇気を振り絞って、日米同盟見直しの働きかけをすべきである。とりあえず、下記事項から取り組むのが良いと思う。

●対米、自由貿易協定/経済連携協定の維持

●日米地位協定の見直しの提起

●日米同盟の見直しの働きかけ

●米国の国連改革主導を要請

●世界政府における、国際問題解決リーダーへの就任要請

アメリカに敵対するのではない。日本の、東アジアの平和構築に向けた行動に対し、アメリカに支援し、見守ってもらうよう要請するのである。アメリカの、心ある要人への根回しが必須である。

日米同盟の見直しが、緒に就けば、近隣諸国が、日本を見る目ががらりと変り、日本が生まれ変わる契機になると思う。「案ずるより産むがやすし」である。

 

4.まとめ(筆者のコメント)

 

①東京裁判は、裁くべき根拠法がなかったというが、恨み節をうなっていても仕方がない。未来志向で再出発を図ったのは正解。

 

②中国を仮想敵とせず、共同体に本気で取り組めば、歴史認識や靖国問題などは、霧消すると思う。

 

③謝罪談話は、村山、河野、小泉、安倍など何回も繰り返されている。日本は、アメリカに従属し、アジアで、自ら「よそ者」に身をやつしているせいだ。別の道がある。

 

④敵を探してバランス・オブ・パワーで凌ごうとする強権政治が、いま氾濫している。ともに平和を作ってゆく国際協調の道を、真っ先に探そう。

 

⑤日米同盟は敵を作り出している。軍事同盟強化は、仮想敵の軍備を強化させ、敵対関係を増強する悪循環に陥るもので、賢明な選択とは言えない。

 

⑥経済成長期にも、今も、米・軍産複合体の支配は続いているが、そろそろ年貢の納め時である。


⑦破天荒なトランプ大統領の言動を見ていると、アジア連合や、国連改革にとって、チャンス到来に見える。彼の任期中に23歩前進したいものだ。


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