アジアの平和 ⑪非核兵器地帯への道程 [平和外交]
新冷戦の脅威を踏まえつつ、アジアひいては世界に平和をもたらすために、日本は何をしたらよいか。前回、核抑止力神話の克服について考えてみた。今回は、アジア非核兵器地帯構想について検討してみよう。下図は構想の概念図である。
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アジア非核兵器地帯協議会 |
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中国、
アセ アン |
北東アジア非核兵器地帯協議会 |
インド
パキスタン |
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北朝鮮 |
韓国 |
日本 |
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核ミサイルの 撤去 |
在韓米軍の 核撤去 |
非核三原則 堅持 |
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核兵器禁止条約加盟、 核先制不使用宣言 |
1.北東アジア非核兵器地帯構想(当ブログ「アジアの平和⑤」参照)
北東アジア非核兵器地帯協議会は、図の中央に掲載したとおり、三国が協力して自国の非核化措置を協議する仕組みである。2月に予定される米朝協議の成否に関わらず、一刻も早く協議会を発足させるべきである。
北朝鮮の非核化は米にお任せではいけない。北朝鮮にとって米に強制された非核化より、日韓との合意による非核化達成には大きな価値がある。米国は追認するはずで、日本の外交力が試される時である。
2.中国を非核兵器地帯にする戦略(当ブログ「アジアの平和⑥」参照)
前項の北東アジア非核兵器地帯の協議の土俵に中国を乗せよう。米ロが参加しない段階で、中国と合意形成は難しいが、協議開始に意味がある。
アジアから核を排除する協定ができれば、国際社会や国連が放ってはおかない。核大国・米ロも安閑としてはおられまい。
3.インド、パキスタンの非核化(当ブログ「アジアの平和⑦」参照)
インドは、1974年と1998年に核実験を実施し、6番目の核保有国になった。パキスタンは、インドに対抗して、1998年に核実験を実施し、7番目の核保有国となった。
両国の核保有は両国に限定した問題で、宗教対立や領土問題で和解ができれば、核保有の意味はなくなる。日本が斡旋して和解の協議の場を持てば、非核化はできると思う。
4.アセアンの参加(当ブログ「アジアの平和⑤」参照)
アセアン(東南アジア諸国連合)10か国は、すでに、1997年に非核兵器地帯条約を締結済みで、非核兵器地帯の先行事例としてよい教材になる。
5.非核兵器地帯構想のまとめ(筆者コメント)
①北朝鮮に向き合う際、日本が米国のただの代理人では相手にされない。アジアの隣人として真摯に寄り添う姿勢を示そう。
②真摯と言えば、新聞の川柳に「寄り添うの嘘と誠を思いけり」があった。沖縄に言葉で「寄り添う」と言う安倍首相と、行動で寄り添う天皇様のこと。違いは明らか。
③いま、中国崩壊論や習近平失脚論が姦しい。日本は「泥舟」に乗るなという。こんな中国敵視論者の品性は下劣である。日本は、アジアの平和のため、中国に友人として向き合い、時に諫言し、戦略的互恵関係を築こう。
アジアの平和 ⑫核廃絶の道程 [平和外交]
新冷戦の脅威を踏まえつつ、アジアひいては世界に平和をもたらすために、日本は何をしたらよいか。前回、アジア非核兵器地帯構想について述べた。今回は、核廃絶の道筋ついて検討してみよう。下表は核廃絶の道程をまとめた表である。
条約名 |
中距離核戦力全廃条約 |
核拡散防止条約(NPT) |
核兵器禁止条約 |
経緯 |
1987年、米ロ2か国 |
1968年、191か国締約 |
2017年、122か国採択 |
協議国 |
国連常任理事国+日独 |
国連加盟国 |
国連加盟国 |
協議事項 |
●協議構成国拡大 ●米離脱の翻意を促す ●米の核戦略見直し(NPR)の翻意を促す ●新条約で中距離核戦力全廃を協議する |
●核軍縮交渉義務付け ●保有国に先制不使用宣言を義務付け ●非核兵器地帯の拡大 ●不平等条約汚名返上 ●核実験禁止の徹底 |
●開発、製造、備蓄、移譲、使用、威嚇の禁止 ●保有の申告義務付け ●核保有国に参加促す ●核の傘依存国に参加を促す |
目標 |
中距離核戦力全廃 |
核不拡散、核軍縮 |
核兵器廃絶 |
1.中距離核戦力全廃条約(INF)
米ロ2か国の条約で、1987年に成立し核軍縮に大きな役割を果たしてきた。条約の対象は、核弾頭とミサイルで、射程500キロ~550キロである。
最近米国が、ロシアの条約違反と中国の戦力保持を理由に、離脱を宣言した。これから、中距離核戦力の軍拡競争が激しくなるのは必至である。すでに米国は、核戦略見直し(NPR)と称して、核弾頭を小型化して使いやすくする計画に取り組んでいる。
米国は、離脱や改良を考える前に、中国など関係国を広げて、全廃の継続を協議するべきである。協議国は、国連常任理事国+日独が良いと思う。
2.核拡散防止条約(NPT)
核拡散防止条約は、すでに核を持つ5つの国連常任理事国を核保有国と認めて、誠実な核軍縮を求めるとともに、他の締約国には、核兵器を持たないよう義務づけた条約。条約に加盟していないインド、パキスタンが核実験をし、脱退した北朝鮮が地下核実験をするなど、NPTには大きなほころびがある。
締約国は、核先制不使用と非核兵器地帯拡大を主要テーマにして、再協議すべきである。
3.核兵器禁止条約
核兵器禁止条約は2017年に、国連加盟122か国の賛成で採択された。現在、批准19か国、署名67か国である。
核保有国や、核の傘に依存する日本や大半のNATO加盟国は、核軍縮策としては現実的でないとして、反対し、交渉に参加していない。
国連の場で、核保有国や、核の傘に依存する国を交えて、再協議すべきである。前1項、2項の協議の前進が、この3項の成就につながると思う。
4.核兵器廃絶に向けた筆者の提案(当ブログ「核兵器禁止条約」参照
①国連に、「核安全保障機構」(仮称)を創設し、核保有国を機構に取り込んで、核の一元管理を図るよう提案する。核の傘の上に、大きな核の傘を被せることで、地球規模の核抑止、戦争抑止の体制ができると思う。国連が、核兵器による安全保障の推進者、管理人、執行者となって、核兵器の査察、監視から廃絶の実行を期待する。現在、国連の力は弱いが、取り組み次第でもっと強化できるはずである。
②核兵器は必要悪でなく絶対悪。核では世界を救えない。核兵器は安全保障の道具でなく、人類を破滅させる悪魔の兵器である。テロに核兵器がわたるおそれもあり、早急な廃絶が必要。
③核兵器は、もはや人道上使えない兵器である。金食い虫の核兵器を後生大事に保有している理由はない。トランプ大統領は、悪魔のような「こわしや」をやめ、「創造者」たれ。
世界共同体① 世界共同体の創設 [平和外交]
新冷戦の脅威を踏まえつつ、アジアひいては世界に平和をもたらすために、日本は何をしたらよいか。
前回まで、アジアの平和について検討してきたが、締めくくりに、世界統治機構の望ましい仕組みを考えてみよう。日本は平和国家のブランドを活かして推進役を果たしたい。
下表は世界共同体の概念図である。詳細は後続の記事で述べる。
世界政府 (国連改編) |
世界総会―世界行政府―世界行政府委員長(大統領)―各地域連合 スタッフ理事会:平和創造、経済社会、人権、軍事、その他 |
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↓ |
↓ |
↓ |
地域連合 |
米州連合 |
アジア連合 |
欧州連合 |
構成国 |
アメリカ、カナダ、南米 |
日、中、韓、北朝鮮、 東南アジア、南アジア、オセアニア、 ロシア、中央アジア |
EU、中東、 アフリカ |
核となる 経済連携 |
北米自由貿易協定(NAFTA) |
東アジア地域包括的経済連携(RCEP) |
ヨーロッパ自由貿易連合(EFTA) |
地域連合軍 |
米州連合軍 |
アジア連合軍 |
欧州連合軍 (NATO改組) |
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↓ |
↓ |
↓ |
地球防衛軍 |
国連軍を改組し、 アメリカ軍を中核として、各地域連合軍から精鋭が参加 |
1.世界政府
国連を改組して世界政府を作る。世界政府には行政府、防衛、警察の機能は必須である。世界行政府委員長が大統領である。現在の安全保障理事会は、平和創造理事会と改名し、世界平和の元締めとする。アメリカ第一をとなえる米国を、いかにその気にさせるかが課題である。
2.地域連合
地域連合として、米州連合、アジア連合、欧州連合の三つを作り、世界総会の傘下に置く。構成国は表のとおりとし、ロシアはアジアに、アフリカは欧州に含める。
3.経済連携
経済連携については、現在各地域の主要な貿易協定をベースに改編し、世界貿易機関(WTOを改編)の傘下に置く。
4.地球防衛軍と地域連合軍
軍事に関しては、現在の国連軍を改編して地球防衛軍と改名し、世界の紛争を鎮める役割を担う。
防衛を目的とする警察のような軍隊だから、少数精鋭で、少ない軍事費で済み、部族やISによる紛争を未然に防止して、世界平和に貢献する。
一方、各地域に地域連合軍を置き、地域の防衛を担うほか、地球防衛軍に一定数の精鋭を派遣する。こちらも、地域防衛を目的とする警察のような軍隊だから、少数精鋭で済む。
5.コメント(筆者コメント)
①国連加盟国は200前後あるが、世界政府の構成国となる際には、国民国家として主権は最大限尊重されなければならない。
②トランプ米大統領の言動を見ていると、地域連合創設や、国連改革にとって、チャンス到来である。「米国第一」を逆手に取って、彼の任期中に2,3歩前進したいものだ。
③EUやアセアンは先行事例として参考になる。ただし、官僚機構の腐敗や横暴には要注意。
追悼:
majyoさん ありがとう。
立派な生き方をされたあなたを忘れません。
majyoさんから、私のブログに
たくさんのコメントをいただきました。
ほめていただいた写真を贈ります。
今後も、アジアの平和のために
声を上げてゆきます。
ほめていただいた オクラの花
世界共同体② 世界政府の在り方 [平和外交]
新冷戦の脅威を踏まえつつ、アジアひいては世界に平和をもたらすために、日本は何をしたらよいか。前回、世界統治機構の望ましい仕組みの概念図を示した。
各論の第一は、世界統治機構の頂点に立つ「世界政府」の在り方である。
1.国連は大改革が必要
1945年51か国で発足した国際連合(国連)は、現在193か国が加盟する国際機関となっている。
国連の安全保障理事会は常任理事国(戦勝国)の5か国、非常任理事国(任期2年)の10か国で構成され、日本は過去に11回、非常任理事国を務めた。
議題は9か国以上(60%以上)賛成で採択されるが、常任理事国が拒否権を持っていて、一国でも反対すると否決されてしまう。冷戦後、拒否権の発動は激減したが、常任理事国が「打ち出の小づち」を手放す気配はない。要するに国連は機能停止に陥っている。第二次大戦後70年以上も経過して、戦勝国による戦後体制が続いているのは異常である。
2.国連改革の経緯
1963年に非常任理事国が5から10ケ国に増やされたのが最初で最後、国連改革は何も進展していない。非常任理事国の数を15か国に増やす案か検討されているようだが、20年たっても成果はない。
3.国連改革・世界政府創設の提案
国連に、世界政府機能を付加して、恒久的な世界平和を実現する組織機構の創設を提案する。国連行政府は世界政府、国連行政委員長は世界政府の大統領である。現在の安全保障理事会は平和創造理事会と改名し、地球防衛軍ともに、世界平和を担う機関とする。(前回ブログの概念図、参照)
4.世界政府創設のための戦略
アジア、EU、米州などの地域連合の上に、これらを管理するための、世界政府機能を創設するが、真の目的と段取りを考えてみよう。
(1)世界政府が目指すもの
自由貿易の推進、地域連合(共同体)の統括、地球市民の人権擁護と安全保障、核兵器廃絶、恒久平和の保障である。米ロ中などの大国の横暴と火遊びを終わらせよう。
(2)世界政府創設の準備
難民流出問題を手掛かりにし、日本が主導して、国連内に難民流出予防検討の仕組みを作り、難民流出の原因分析や対策立案の過程を通して、世界政府創設の準備組織を立ち上げよう。
(3)世界憲法の起草
世界憲法は、国連憲章をなぞるだけでは不十分である。世界政府に必要な機能を新しく想定し、それをもとに草案を作ろう。お手本はたくさんある。
(4)世界政府の機能のデザイン
世界政府に必要な諸機能を新しくデザインし、質と量を定義しよう。世界政府、世界行政府、世界政府議会などが対象である。国連組織のうち、使えるものは組み込んで利用するという発想が必要である。
一国主義に向かうアメリカには、世界政府の中核を担ってもらって世界平和に貢献してもらおう。
5.まとめ(筆者コメント)
①超大国の横暴や、民族紛争の激化で地球は危機に瀕している。この危機を救うには、人類の勇気と英知を集めて、世界政府を樹立するしかない。
②難民流出後の対策より、流出予防が大事。世界政府の適切な対処が望まれる。
③グローバリズムの行き過ぎで、世界は様々な障害に見舞われている。1%の富裕層の資産が、貧しい38億人の資産と同額だという。多国籍企業の税逃れを防ぎ、世界的な所得再配分機能を取り戻すには、世界政府の適切な統治機構が必要である。