日本再生⑧ 日本社会・経済の将来像 [平和外交]
前回までの考察を踏まえて、日本社会・経済の問題ごとに対策と将来像を考えて見よう。
1.日本社会・経済の将来像
問題 |
現状 |
対策 |
目標(将来像) |
不安心理 |
経済衰退、年金不安 政府の借金一千兆円 |
発想の転換。政府の借金=国民の貯蓄。 認識を改めよう |
「国民が安心して自分らしく生きられる社会」へ |
経済成長 |
日本20年間ゼロ成長 中国8倍、米2倍 |
30年間の失政を反省、積極財政で5%成長、2%物価上昇経済へ |
20年後、GDPを2倍に。 積極投資で日本の供給力(国力)強化。 |
社会保障 |
2016年度の社会保障給付費は116.9兆円(うち公費負担は47.7兆円)(注1) |
社会保障費の財源は経済成長によるパイの増大で。低所得者にベイシックインカムを |
「100年安心福祉国家」のブランドを確立し、 国民を豊かにする日本へ |
巨額借金 |
PB黒字化目標未達。 現在、負債対GDP比は237% |
PB黒字化は国民の富を収奪すること。負債対GDP比に目標を移行。 |
負債対GDP比、30年後150%程度に。心配無用。 巨額借金≠次世代負担。 |
公共投資 |
緊縮財政で、予算を削減してきた。 経済衰退の元凶 |
災害対策、国土強靭化、インフラ整備を積極的にする |
巨大化する災害から人命を守る。企業の設備投資を誘引する |
技術投資 |
技術投資の削減で、技術後進国に。 |
基礎、先端技術投資拡大。大学研究費補助増 |
技術立国の復活。 ノーベル賞受賞者増加 |
人材投資 |
人材開発・育成の投資が全く不十分 |
官民ともに、大胆な人材投資を |
人材こそ日本の資源。 生産力、供給力拡大可 |
少子化 |
貧困化により、結婚できない、子どもを持たない若者が増加 |
賃上げをためらう企業にノルマを課す。 最低賃金を1500円に |
手厚い子育て支援とともに、若者の将来不安を払拭し、出生率増へ |
高齢化 |
高齢化率27.7%(2017年) |
健康寿命を延ばし、希望すれば働ける環境に |
高齢者は厄介者ではなく、福祉需要のお客様。 |
人口減少 |
2030年の人口は1.06億人と推定。2千万人減少。 |
少子化対策や、経済成長戦略が成功すれば、減少幅は抑えられる。 |
人口減少≠経済衰退。 人口減少は逆に人を育て、人を活かす好機。 |
移民停止 |
4月の改正入管法施行で、5年間に34.5万人の移民受け入 |
働き盛りで定職のない人や高齢者に働く場を用意。 |
人手不足は、投資による一人当たりの生産性向上で解決すべきもの。 |
デフレとインフレ |
緊縮派は、デフレの最中にインフレの心配をしすぎている。 |
デフレ期には、積極財政出動、減税。インフレ期には財政圧縮、増税。 |
失政で日本だけが長期ゼロ成長であった。正しい政策で平和福祉大国へ |
(注1 社会保障給付費116.9兆円の内訳:年金54.4、医療38.4、その他の福祉24.1.
2.まとめ(筆者の意見)
①子供が何人ほしいかのアンケートで、0人8%、1人14%、2人55%・・という回答があった。実質賃金低下で、子どもを持ちたくても持てない実態の改善が必要。東京一極集中も少子化の一因である。
②現行の年金賦課方式で、2040年には高齢者一人を現役1.5人で支えるという説がある。これは日本経済衰退論に基づく誤った説である。3%成長を前提に、公費負担力強化や人口増加策で改善可。
日本再生⑨ 安全保障とアジア連合 [平和外交]
前回まで、日本社会・経済のあるべき姿について述べてきた。ここからは、日本の政治・外交の将来像を考えて見よう。戦後74年、対米従属を続け、いわゆる「永続敗戦」状態の日本を、自主独立の国に変えるには、強力な政治・外交力が必要である。
1.アジアの安全保障環境の現状
安倍政権は中国を仮想敵国とみなした抑止政策に熱心である。日米同盟強化一辺倒の外交で、アジアの安全保障の緊張を逆に高めている。
一方、中国は南シナ海に軍事施設を作り、ミサイルを配備するなど、海洋進出を強化している。
中国は、日米同盟を仮想敵と定め、自国を防衛するため、最前線を前に構築したつもりであろう。東アジアは軍拡競争の場になりつつあると言わざるを得ない。
2.地域連合創設による安心供与の外交
安全保障は抑止と安心供与が車の両輪である。人は、向こう三軒両隣と仲良くして、居心地の良い地域環境を作ることが生活の知恵というものである。遠隔地の知人に縋りつかないと安心できないような生活設計は間違っている。
日本は近隣諸国の懐に飛び込んで、地域のことは地域で解決するための、地域連合(共同体)の創設という大きな目標に向かって外交力を結集すべきである。
3.アジア連合の構成国
アジア連合の構成国は、日、中、韓、北朝鮮、東南アジア、南アジア、ロシア、中央アジア、オセアニアとするべきである。ロシアは中国に向き合う際の、緩衝、バランス・オブ・パワーとして役立つと思う。日本は、中ロという二大荒馬を御する気概を持ちたいものだ。
南アジアに含まれるインドは、将来中国に並ぶ大国になり、アジアの牽引役になると期待される。
4.アジア連合が目指すもの
日本は、対米従属から脱却し、アジアに正面から向き合う新機軸の外交を進めたい。その第一歩は、アジア連合の推進である。人権などの価値観で異なる国があっても、取り込んでいくべきで、排除していては何も始まらない。
アジア連合の真の目的と、目指すものは何かを下表で確認してみよう。
目的 |
内容 |
経済成長 |
貿易の自由化を通じて、地域の競争力を向上し、豊かさを実現する。21世紀はアジアの時代である。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の締結を主導して、アジア連合の基礎を築こう。 |
安全保障 |
隣国同士が敵対視せず、相互に国益を尊重し、戦略的互恵関係を結べば、戦争のない地域が実現できる。平和を担保するため、アジア連合軍を創設して、透明性のある協働の実力組織を作ろう。 |
人権尊重 |
人間は、自己本位で残虐な面を持っている。アジアに人権尊重を根付かせるために、専門の機関を創ろう。チベットやウイグルの人権問題の緩和に役立つ。信教の自由もテーマになる。 |
環境・防災 |
地球温暖化もあって、環境・防災の協働は喫緊の課題である。 |
5.まとめ(筆者コメント)
①地理的に近い国々は紛争の種を多く抱えているだけに、協同して互恵関係を作る意味は大きい。地域連合(共同体)の成否は、過去の「恨み」の誠実な処理と、「未来志向」の取り組み方にかかっている。
②トランプ米大統領の就任は、世界の政治経済システムの変革にとってチャンスである。日本は、心ある国々の指導者と手を組んで、国連改革や地域連合の構築を推進したい。
日本再生⑩ 日中連携戦略 [平和外交]
1.アジア連合に向けた日中連携戦略の考え方
(1)向こう三軒両隣の精神を取り戻そう
「遠い親戚より近くの他人」は真理。近いゆえに紛争の種が多く、友好には、何倍も努力が必要だが、努力の甲斐はある。民族の欠点をあげつらっても、得るものはない。
中国にも強権的な人ばかりではなく、多様な、優れた人材が多い。味方を敵に変えるのは愚の骨頂である。ヘイトスピーチはやめて、違いを認め、尊重し合うための対話をすべきである。
(2)嫌中という小児病を克服しよう
学者や言論人にも、嫌中派は多い。対日敵対工作があったという多くの報道は、プロパガンダである。たとえ工作があったとしてもそれには原因がある。冷静に原因を取り除く対応が必要である。
下に見ていた中国が、強大になり、蔑視と羨望の感情に揺れる気持ちはわかるが、克服する大人の対応が望まれる。人を変えるには、まず、自分が変わることだ。
(3)日中経済連携は戦争を防ぐ
安全保障にとっては、抑止と安心供与が車の両輪である。抑止力(軍備強化)偏重は金食い虫で、非効率である。経済連携は安心供与の優れた手段で、互いに儲けながら戦争を防ぐことができる。
戦争ばかりしていた隣国同士の独仏が1952年の欧州石炭鉄鋼共同体加入を契機に友好関係を築いたのが好例である。利益を分かち合う心さえあれば、ウィンウィンの関係、すなわち戦略的互恵関係を構築できると思う。
2.アジア連合のための対中国のアプローチ
アジア連合の交渉において、難物は中国である。中国と交渉開始の合意ができれば、8割がた、スタートアップは完了である。日本は、中国を仮想敵とせず、交渉の本気度を態度で伝えるべきである。
いま、中国崩壊論や崩壊待望論がにぎやかである。しかし、「社会主義現代化強国」を目指すという中国は、帝国主義的ではあるが、世界を相手に取引をし、需要を創造する力がある。
財政均衡論に縛られた、下手な民主主義国家よりも、野性的、戦略的で、米中覇権戦争もうまくやり過ごすに違いない。
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が年内妥結を目指して交渉中である。参加国がアジア連合対象国とほぼ同じであり、中国も前向きである。日本は、早期妥結に向け指導力を発揮してもらいたい。
3.アジア連合に向けた日中連携の段取り
(1)安倍首相は南京慰霊訪問しよう
南京虐殺30万人説は信じないが、慰霊訪問すれば、安倍首相と日本への見方ががらりと変わる。
(2)中国の「一帯一路」構想に参加を表明する
日米で進める「自由で開かれたインド太平洋」に「一帯一路」を統合する、大きい絵を描こう。
(3)AIIB加入とADBとの連携強化を表明する
AIIBは中国主導のアジアインフラ投資銀行、ADBは日米主導のアジア開発銀行
(4)東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への関与を強める
(5)アジア地域連合(共同体)のキックオフを中国に向かって宣言する
4.まとめ(筆者コメント)
①中国崩壊論が良く聞かれる。中国崩壊待望論というべきかもしれないが、品性が透けて見える。ここは、向こう三軒両隣の精神で、おせっかいを焼くべきではないか。虎穴に入って、大きな虎児を調教するくらいの気概を持とう。
②新冷戦の勃発で、中国は日本に秋波を送っている。今がアジアを一つにするチャンスである。間違っても、米日対中露が敵対する、一触即発の大冷戦の構図を作ってはいけない。地球が壊れる。
日本再生⑪ 日米同盟の見直し
前回は、アジアの大国である中国を、多国間連携であるアジア連合にどのように引き込むかを検討した。今回は日米同盟の見直しついて考えてみよう。
1.米中など帝国主義的覇権国の世界支配を止めよう
トランプ大統領のツイッター外交はひどい。指先一本で敵を作り、派手な立ち回りを演じて選挙民の歓心を買い、分断を利用して、武器を売りつけて暴利をむさぼる政治は願い下げにしたい。
いまこそ、世界の叡智を一堂に集めて、熟議による統治機構・世界政府の創設が望まれる(下図、「世界共同体の概念図」の一部参照)。
ここでは、「二重多数決」(コラム参照)のような公正な意思決定手法を採用し、拒否権のような大国の特権を排除して、地球上に真の民主主義、人権尊重、平和主義を実現しよう。
世界政府 (国連改編) |
世界総会―世界行政府―世界行政府委員長(大統領)―各地域連合 スタッフ理事会:平和創造、経済社会、人権、軍事、その他 |
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↓ |
↓ |
↓ |
地域連合 |
米州連合 |
アジア連合 |
欧州連合 |
構成国 |
アメリカ、カナダ、南米 |
日、中、韓、北朝鮮、 東南アジア、南アジア、 オセアニア、 ロシア、中央アジア |
EU、中東、 アフリカ |
2.日米同盟の見直しを表明しよう
日本は、過去70年間、何回かあった日米同盟見直しのチャンスを逃してきた。安倍政権は、日米同盟に縋りついているが、同盟が完全に機能する保証はない。
この辺で、戦略を練り、勇気を振り絞って、日米同盟見直しの働きかけをすべきである。近隣諸国の、日本を見る目ががらりと変わる。日本が生まれ代わって「自主独立」を果たす契機になると思う。
ただし、アメリカと敵対するのではない。困難に直面する米中関係の仲立ちをすると宣言し、アジアにより強くコミットする日本を認めさせるのである。
3.アメリカの説得は不可能ではない
日本が、アメリカを排除するのではなく、その支援を得ながら、アジアの平和的発展に、本気でコミットする決意を披露すれば、説得はできると思う。
アジアのことは日本と中国に任せてもらって、アメリカは、地域連合を束ねる世界政府のような組織の中枢を担ってもらうのがよい。
構想について、アメリカの心ある要人への根回しは必須である。日米同盟に関わる、米の要人は20名程度という。国際情勢は激変している。固定観念を排し、遠慮はやめて、タフな交渉をしよう。
4.まとめ(筆者コメント)
①人は、向こう三軒両隣と仲良くして、居心地の良い地域環境を作ることが生活の知恵というものである。遠隔地の知人(米)に縋りつかないと安心できないような生活設計は間違っている。
②現在、日韓関係は最悪だが、中国と未来志向の関係を築くことができれば、韓国はしぶしぶついてくると思う。日米対、中露朝鮮という最悪の新冷戦構造は、絶対に避けよう。
コラム 「二重多数決」:EUで採用されている意思決定方式
加盟国の人口に応じて票数を割り当てる。採決は、下記①②の両方が成立した場合に可決とする。
①賛成票数55%以上 ②賛成国の人口が、EU全人口の65%以上
この方式は、中小国の不利を救済するとともに、大国の横暴を防ぐ仕組みである。ただし、大国の中小国への利益誘導、恫喝、官僚の腐敗を防ぐ仕組みなどの工夫が必要。
日本再生⑫ アジア連合軍の役割と軍縮 [平和外交]
前回まで、アメリカを説得し、中国をアジア連合にどのように引き込むかを検討した。今回はアジアの平和を担保するための、アジア連合軍の役割と軍縮について考えてみよう。
1.アジア連合軍の役割
アジア連合傘下の各国から、精鋭部隊を集めてアジア連合軍と命名し、地域の防衛を担うほか、地球防衛軍に一定数の精鋭を派遣する。アジア地域の防衛を目的とする警察のような軍隊だから、少数精鋭で済む。
隣国同士が敵対視せず、相互に国益を尊重し、戦略的互恵関係を結べば、戦争のない地域が実現できると思う。
アジア連合軍の位置づけは、下図、世界共同体の概念図(一部)参照
地域連合軍 |
米州連合軍 |
アジア連合軍 |
欧州連合軍 (NATO改組) |
|
↑ |
↑ |
↑ |
地球防衛軍 |
国連軍を改組し、 アメリカ軍を中核として、各地域連合軍から精鋭が参加 |
2.自衛軍(国民国家の軍隊)
世界共同体を構成する最小単位は国民国家である。国民国家には、自国防衛のための最小限度の軍隊が必要である。日本の自衛隊はそのまま、日本の自衛軍に移行することができると思う。
3.アジアの軍縮
各国の自衛軍とアジア連合軍は、地域の平和を担保し、紛争を予防する実力組織である。意思決定の透明性を高め、指揮命令系統を法制化することで、大幅な軍備縮小の環境が整うと思う。
「軍事力評価機関・Global Firepower」発表の、2018年の主要国の軍事費は下表の通りである。
国名 |
軍事費(兆円) |
軍事費対GDP比率% |
軍事費の 増加倍率 |
アメリカ |
64.7 |
3.15 |
2.0 |
中国 |
15.1 |
1.91 |
22.5 |
日本 |
4.4 |
0.93 |
1.1 |
アジアに多国間協調主義の、安心供与の仕組みができれば、各国とも、自衛軍と、連合軍派遣に関わる軍事費を合わせて、GDPの1%以内で賄うことも夢ではないと思われる。
4.日韓関係の改善
戦時労働者(徴用工)問題や慰安婦問題が蒸し返されて、日韓関係は、今、最悪の状況で、東アジアの安全保障が危機に瀕している。両国の政権は、未来志向を唱えながら、過去の歴史問題に心も足も取られて、抜け出せずにいるようだ。
未来に向かって、協働の夢を語り合い、相互理解を深めることが、唯一の解決策である。そのための段取りとしては、まず日本と中国がそれをやって見せることである。韓国はしぶしぶついてくると確信している。
5.まとめ(筆者コメント)
①南極、北極、宇宙などへの、中国の開発独裁的動きが気がかりである。14億人を養うための健全な事業なのか、2049年(建国100周年)を目指した覇権的措置なのか注視する必要がある。
②中国の軍事費は、すでに、15兆円に達しており、これからも増える勢いである。軍拡競争を緩和するため、日本はアジアの軍縮を主導する外交をやり、世界の軍縮につなげてもらいたい。
③周囲に仮想敵を探して、バランスオブパワーで凌ごうとする策略は、高コストであり、国民を幸せにはできない。国民国家の役割放棄である。