日本再生⑬ 新憲法制定の環境整備 [平和外交]
前回、アジアの平和を担保するための、アジア連合軍の役割と軍縮について考えてみた。今回は、日本国憲法を新しく作り直すことと、そのための環境整備について考えてみよう。
1.日本国憲法9条は北極星
日本国憲法は1946年にアメリカ占領軍によって制定され、9条により、戦争を放棄し、軍隊を持たないこととなった。その後、朝鮮戦争や米ソ冷戦による、安全保障環境の変化に応じて、自衛隊を持ったが、自衛権の範囲内で合憲と解釈されてきた。
日本の平和憲法は、制定経緯はどうであれ、世界初の理想の憲法として、戦争の悲惨をいやというほど経験した多くの日本人に受け入れられている。
いわば、北極星のように日本人の道しるべとして、高いところに輝く「究極の理想」の憲法である。自信をもって世界に広めていきたいものだ。
2.解釈改憲が横行する現状は危険
憲法は国民主権の下で、政治権力者を縛り、暴走を防ぐ防波堤である。安保法改正で憲法を捻じ曲げておいて、「憲法を解釈する責任者は私だ」とうそぶく安倍首相は間違っている。
さらに、安倍首相は、「個人の自由を担保するのは国家である」というが、政権の危険なかじ取りで、国民の生命財産が危険にさらされるのは困る。現憲法を活かす、平和外交に徹してもらいたい。
3.安倍政権の前のめりの改憲論は不純
安倍首相は、9条に自衛隊を明記する憲法改正にこだわっている。この改正で、これまでできないとされてきた集団的自衛権を堂々と行使し、米軍のお先棒を担ぐつもりであろう。
近隣諸国から痛くもない腹を探られ、緊張を高め、戦争の種をまくことになる。自衛隊を明記しても任務や権限は変わらないというが、変わらないなら明記の必要はない
平和外交による安心供与政策をテンからあきらめて、力による抑止政策にうつつを抜かしている。国民を権力に逆らわない羊に育て、いつか来た道に踏み入ろうと、手を尽くしているのではないか。
4.こうすれば、改憲(新憲法制定)の環境が整う
安全保障は抑止と安心供与が車の両輪である。人は、向こう三軒両隣と仲良くして、居心地の良い地域環境を作ることが生活の知恵というものである。遠隔地の知人に縋りつかないと安心できないような生活設計は間違っている。
日本は近隣諸国と図って、地域のことは地域で解決するための、地域連合(共同体)の創設という大きな目標に向かって外交力を結集すべきである。
この構想が緒について、信頼醸成ができてくれば、日本の憲法九条2項(戦力不保持、交戦権否認)を削除する憲法改正の条件が整う。九条1項(戦争放棄)さえ堅持すれば、国民から九条2項削除の賛同は得られるはず。九条2項を削除しても、北極星としての日本国憲法の評価は変わらないと思う。
中国をはじめアジア各国から、地域の安全保障協力のため、武装した自衛隊の派遣要請が来るようになると信じている。
5.まとめ(筆者コメント)
①改憲に固執する安倍首相の真の狙いは、戦後レジームから脱却し、美しい日本を取り戻すことではないか。「日本会議」の主張と瓜二つで、何かきな臭いものを感じる。
②「日本会議」の憲法改正の執念はすごい。洗脳隊を地方議会に派遣して、地方議員を改憲派に作り替えている。
③岡倉天心が「アジアは一つ」と説き、福沢諭吉が「脱亜入欧」と唱えた。今は、「親亜親欧」の時代ではないだろうか。
日本再生⑭ 人種平等と人権尊重 [平和外交]
前回、日本国の新憲法制定と、そのための環境整備について検討した。今回は、人種平等と人権尊重について考えてみよう。
1.人種平等の現実と日本の取り組み
日本は、日清・日露戦争に勝って世界5大強国の仲間入りをしたが、西欧の有色人種に対する人種的偏見に違和感を持ち続けた。現に、1919年パリ講和会議において、条約に人種平等を挿入する提案をしたが取り合ってもらえなかった。また、1924年には、アメリカの排日移民法による人種差別に怒りを禁じえなかった。
日本は、欧米への劣等感とアジアへの優越感のはざまで、「脱亜入欧」から「脱欧入亜」に転換した。この近代日本の精神構造が、「大東亜戦争の遠因」となり、結局は戦争に負けたが、結果的にアジア植民地開放と人種差別の軽減に役立ったとされている。(筆者コメント参照)
2.人権課題と人権問題の現状
|
人権課題 |
人権問題の現状(数字は内閣府アンケート調査の複数回答%) |
1 |
女性の 人権擁護 |
職場における差別待遇42%、夫から妻への家庭内暴力33%、 固定的な役割分担31%、売春、買春、援助交際27% |
2 |
いじめを見て見ぬふり68%、いじめを受けた62%、親の虐待48%、児童買春など37% |
|
3 |
高齢者の人権擁護 |
悪徳商法の被害54%、高齢者を邪魔者扱い45%、就職差別42% 施設での虐待42%、家庭内の虐待35% |
4 |
障害者の人権擁護 |
就職差別53%、障害者理解不足50%、障害者への差別的言動42%,じろじろ見る・避ける38% |
5 |
同和問題 |
結婚反対43%、身元調査をする30%、就職・職場で不利30% |
6 |
アイヌ |
伝統の保存継承29%、差別的言動13% |
7 |
外国人 |
風俗・習慣の違いでやむを得ない34%、外国人差別32% |
8 |
HIV・ハンセン |
自立が困難41%、結婚反対31%、差別的言動31% |
9 |
刑後出所者 |
再就職差別、住所確保困難 |
10 |
犯罪被害者 |
プライバシー困難62%、精神的ショック56%、 |
11 |
ネット |
出会い系サイトの規制54%、誹謗中傷表現53%、実名暴露41% |
12 |
ホームレス |
通行人の暴力49%、経済的自立困難46%、じろじろ見る・避ける36% |
13 |
性的指向 |
理解不足49%、差別的言動31%、じろじろ見る・避ける27% |
14 |
性同一性障害 |
好奇の眼、差別的言動、就職・職場で不利 |
15 |
拉致被害者 |
北朝鮮外交の不全、被害者への関心・認識の不足 |
16 |
人身取引 |
人身取引の撲滅・防止の徹底、監視活動の強化 |
3.人権問題の解決策
人権擁護には、人権意識の向上、適正な監視、警察活動が欠かせず、財源が必要である。政府はプライマリーバランスの黒字化という目標にとらわれて、まともな財政出動をやっていない。
20年以上にもわたる誤った、無意味な緊縮財政はやめて、支援を待つ人々に救済の手を差し伸べるべきである。政府は国民を幸せにする義務を怠っている。
4.まとめ(筆者コメント)
①「大東亜戦争」の意味を一部認めるが、手放しで自慢するつもりはない。出口も決めない無謀な戦争で、代償があまりに大きすぎた。別の道があったと思う。
②「人権課題と人権問題の現状」の表を見ると、問題山積である。困難を抱えている人々には、人的及び財政的な支援が必須。それは需要となってGDPを押し上げる。財政赤字の心配は杞憂。
日本再生⑮ 表現の自由① [平和外交]
前回、人種平等と人権尊重について検討した。今回は、民主主義、個人主義、自由主義を支え、社会の安全弁となるべき「表現の自由」について考えてみよう。
1.「表現の自由」の構造
日本国憲法には、基本的人権(第11条)と、表現の自由(第21条)が規定されている。これは、日本人が、戦争に負けて、苦難の中から、ようやく手にした貴重な権利である。
表現の自由は、大変広い概念で、報道の自由、情報公開請求権、言論出版、集会結社の自由などを含んでいる。
日本人一人ひとりにとって重要な「国民の知る権利」は、表現の自由に由来し、報道の自由などによって充足されると思う。権力は必ず腐敗するので、監視が必要である。
2.「表現の自由」にも限度がある。
「表現の自由」の行使は、それが、公共の福祉に反し、他者の自由を奪う場合のみ制限することができる。法的には、「実質的害悪」が生じ、明白かつ差し迫った危険がある場合のみ「表現の自由」を制限できると思う。
3.「表現の不自由展・その後」に見る、「表現の自由」の論点(NHKクロゲンを参考にした)
①展示物に政治的メッセージ性(主義・主張)はあるか
反対 |
・反日だ、心が踏みにじられた ・行政は政治的お墨付を与えるな ・市の後援は、主義・主張への賛同ととられる |
賛成 |
・少女像は平和の象徴であって、慰安婦像ではない(作家)。 ・展示物は一つのメッセージではない。不快な人も、見たい人もいる |
②行政が公金(今回は10億円)を使って、主催、共催してよいか
反対 |
・公金は使うべきではない ・行政は政治的中立を守るべき
|
賛成 |
・行政には表現の自由の受け皿としての機能がある。放棄してはだめ ・政治的お墨付を与えていない |
③電凸の可否(3日目には1.4万件もの抗議があった。抗議のネット投稿も多数)
容認 |
・売国行為に抗議するのは当然 ・行政や協賛企業に反省を求める
|
反対 |
・「脅迫で中止」の前例を作った ・善意の協賛企業にも抗議が殺到 ・言葉のつぶては人を傷つける |
4.まとめ(筆者コメント)
①自分の「表現の自由」は他者のそれと一体。他者のそれを削るのはダメ。戦前のあの「闇の思想統制」に戻るのは困る。
②慰安婦問題でも、真実はゼロから100の間にある。ネトウヨはゼロ(潔白)を信じたいのであろうが、それはムリ。「駄々っ子」はやめよう。
③行政は、表現者を守るのが仕事。公共の福祉を害さない限り、市民の多様性と寛容性を引き出すよう図るのが、民主主義国家の行政の在り方ではないか。
④筆者は、新聞や放送の代金は、権力の監視料、委託料と考えている。御用新聞を買うつもりはない。
日本再生⑯ 表現の自由② [平和外交]
前回、民主主義、個人主義、自由主義を支え、社会の安全弁となるべき「表現の自由」について検討した。今回は、「言論・表現の自由」の裁判事例について考えてみよう。
1.「言論・表現の自由」の主な判例
過去、「言論・表現の自由」がどのように守られた来たか、主な判例をカテゴリー別に分類し、簡単な説明と結果を表にしてみた。
〇は「表現の自由」が守られた、✕は制限を受け守られなかった、△は引き分けを現す。
カテゴリー |
言論・表現の自由への介入事例 |
権力介入 |
✕NHK番組改変問題:戦時性暴力番組に政治家圧力で改変。スポンサー敗訴 ✕板橋高校卒業式事件:教師が卒業式の国歌斉唱を阻止。有罪確定 〇加須市長選挙無効事件:同和対策をめぐる言論干渉。上告棄却、勝訴 ✕横浜事件:戦時、「改造」の論者60人逮捕4人死亡。特高30人免訴 |
不当 検問・検閲 |
✕家永教科書裁判:教科書検定が検閲に当たり憲法違反。家永全面敗訴 ✕札幌税関検査事件:風俗を害する表現物の検閲の当否。最高裁は否定 △政見放送削除事件:不適切な政見放送原稿をNHKが訂正。原告敗訴 |
報道の自由 |
✕TBSテープ押収事件:警視庁による暴力団のビデオ押収。TBS抗告棄却 〇サンケイ新聞事件:自民の意見広告に共産党がアクセス権主張。敗訴 ✕博多駅フィルム事件:空母寄港阻止デモのフィルム提出拒否。抗告棄却 |
名誉棄損 |
✕石の泳ぐ魚:柳美里の小説のモデルが名誉侵害で提訴。柳の敗訴 △オリコン・うがや裁判:「ジャニーズに甘い」の記事で訴訟。和解 〇産経支局長訴追(韓国地検):セウオル号沈没、朴槿恵密会報道 無罪 〇講談社フライデー事件:幸福の科学、批判記事への抗議。違法と認定 〇署名狂やら殺人前科事件:議員候補の経歴詐称告発記事。上告棄却 ✕北方ジャーナル事件:市長候補者が暴露記事差し止め上訴。勝訴 |
人権侵害 |
✕殉愛(百田尚樹):ノンフィクションの当否。家族の訴えに罰金刑 ✕田中真紀子長女記事出版差し止め:離婚記事はプライバシー侵害 ✕ノンフィクション「逆転」事件:前科暴露はプライバシー侵害 〇八尾市議除名事件:同和の横暴を指摘した市議除名。裁判で復帰 |
住居侵入 |
✕葛飾政党ビラ配布事件:マンションポストにビラ配布。共産党員有罪 ✕立川反戦ビラ配布事件:自衛隊官舎に侵入、罰金刑。最高裁控訴棄却 |
わいせつ |
✕悪徳の栄え事件:「悪徳の栄え」の翻訳出版がわいせつ物頒布罪で有罪 ✕「サンデー娯楽」事件:わいせつ記事にわいせつ性認定。上告棄却 ✕松分館裁判:成人向け漫画のわいせつ性。逮捕は違法、罰金刑確定 ✕ビニール本事件:ポルノ写真誌のわいせつ性。有罪。上告棄却 ✕ポルノカラー写真誌事件:わいせつ性を肯定。被告人の上告棄却 ✕四畳半襖の下張り:野坂昭如が永井荷風の戯作を掲載。罰金刑 |
芸術性 |
✕千円札裁判:赤瀬川源平の芸術作品。表現の自由の限界。控訴棄却 |
2.まとめ(筆者コメント)
①森友学園へ国有地売却の公文書改竄があった。答弁も公文書も虚偽だとしたら、「国民の知る権利」も、「表現の自由」もあったものではない。議会制民主主義を揺るがす行為だ。
②2016年施行の「ヘイトスピーチ対策法」は、「表現の自由」を逸脱した差別扇動行為を禁じているが、実効性に疑問符が付いている。違反に対し罰則を設けるなど、対策の強化が必要。
③ドイツは、フェイクやヘイトの投稿削除をネットメディアに義務付け、違反に対し高額の罰金を課すという。日本再生のため、見習うべきだ。