日本再生(21) まとめ(軍事と憲法) [平和外交]
前回、アメリカを説得し、中国をアジア連合にどのように引き込むかを検討した。今回はアジアの平和を担保するための、アジア連合軍の役割と日本国憲法についてまとめてみよう。
1.アジア連合軍の役割
アジア連合傘下の各国から、精鋭部隊を集めてアジア連合軍と命名し、アジア地域の防衛を担うほか、地球防衛軍に一定数の精鋭を派遣する。防衛を目的とする警察のような軍隊だから、少数精鋭で済む。
隣国同士が敵対視せず、相互に国益を尊重し、戦略的互恵関係を結べば、戦争のない地域が実現できると思う。
2.自衛軍(国民国家の軍隊)
世界共同体を構成する最小単位は国民国家である。国民国家には、自国防衛のための最小限度の軍隊が必要である。日本の自衛隊はそのまま、日本の自衛軍に移行することができると思う。
3.日本国憲法9条は北極星
日本国憲法は1946年にアメリカ占領軍によって制定され、9条により、戦争を放棄し、軍隊を持たないこととなった。その後、朝鮮戦争や米ソ冷戦による、安全保障環境の変化に応じて、自衛隊を持ったが、自衛権の範囲内で合憲と解釈されてきた。
日本の平和憲法は、制定経緯はどうであれ、世界初の理想の憲法として、戦争の悲惨さをいやというほど経験した多くの日本人に受け入れられている。
いわば、北極星のように日本人の道しるべとして、高いところに輝く「究極の理想」の憲法である。自信をもって世界に広めていきたいものだ。
4.解釈改憲が横行する現状は危険
憲法は国民主権の下で、政治権力者を縛り、暴走を防ぐ防波堤である。安保法改正で憲法を捻じ曲げておいて、「憲法を解釈する責任者は私だ」とうそぶく安倍首相は間違っている。
さらに、安倍首相は、「個人の自由を担保するのは国家である」というが、政権の危険なかじ取りで、国民の生命財産が危険にさらされるのは困る。現憲法を活かす、平和外交に徹してもらいたい。
5.安倍政権の前のめりの改憲論は不純
安倍首相は、9条に自衛隊を明記する憲法改正にこだわっている。この改正で、これまでできないとされてきた集団的自衛権を堂々と行使し、米軍のお先棒を担ぐつもりであろう。
近隣諸国から痛くもない腹を探られ、緊張を高め、戦争の種をまくことになる。自衛隊を明記しても任務や権限は変わらないというが、変わらないなら明記の必要はない
平和外交による安心供与政策をテンからあきらめて、力による抑止政策にうつつを抜かしている。国民を権力に逆らわない羊に育て、いつか来た道に踏み入ろうと、手を尽くしているのではないか。
6.こうすれば、改憲(新憲法制定)の環境が整う
地域連合(共同体)の創設という大きな構想が緒について、周辺国と信頼醸成ができてくれば、日本の憲法九条2項(戦力不保持、交戦権否認)を削除する憲法改正の条件が整う。九条1項(戦争放棄)さえ堅持すれば、国民から九条2項削除の賛同は得られるはず。九条2項を削除しても、北極星としての日本国憲法の評価は変わらないと思う。
中国をはじめアジア各国から、地域の安全保障協力のため、日本の自衛軍創設の承認と派遣要請が来るようになるはず。
① 9条に自衛隊を明記する安倍政権の改憲案はまやかしである。敵を作って支配したい安倍首相のもとでは、反対である。
② 国連の機能不全がはがゆい。トランプやプーチンのスタンドプレーを見て見ぬふりをしている。国連を大改造して世界共同体を創設し、公正と正義が執り行われる地球規模の統治機構を作りたい。
③ EUは失敗ではない。ユーロ発行権を使って、共益事業を実施し、加盟国を豊かにできるはずだ。
地球環境① 日本の環境問題 [環境問題]
1.環境問題を取り上げる理由
国連の気候変動サミットで、スエーデンの16歳の環境活動家グレタ・トゥンベリさんが、温暖化対策に及び腰の先進国首脳に対して、怒りをあらわにする演説を行った。
一方、トランプ大統領や日本の保守派論客は、案の定、「洗脳された子供の発言」などと貶める発言をしている。任期中、痛みを伴う政策は後回しにするつもりのようだ。
台風の凶暴化、高潮、山林火災の多発など、気候変動対策は待ったなしである。当ブログでは、ローカルやグローバルの環境問題を、読者と一緒に考えてみたい。
水素爆発を起こし白煙を上げる福島第一原子力発電所3号機(中央)、左端の1号機は屋根が吹き飛んでいる。
2.日本の環境問題
日本は高度成長期を中心に、様々な公害に悩まされてきた。表の上から四つは、四大公害と呼ばれ、終息に長い年月を要した。日本は、公害先進国として、蓄積したノウハウを積極的に途上国に移転し、地球環境問題の解決に向かって国際貢献を果たしたい。
リスク |
汚染物質 |
発生源、場所 |
ピーク時 |
水俣病型公害 |
メチル水銀 |
チッソ、熊本県水俣湾。(魚介類から) |
1953年 |
水俣病型公害 |
メチル水銀 |
昭和電工、新潟県阿賀野川。 |
1965年 |
イタイイタイ病 |
カドミウム |
三井金属神岡鉱山の排水、富山県神通川 |
1956年 |
交通公害 |
硫黄酸化物 |
自動車排ガス、四日市ぜんそくが代表 |
1960年代 |
POPs型公害 |
ダイオキシン |
PCBや、塩化ビニルなどの燃焼時に発生するPOPs(注1)による公害。 北九州市・カネミ油症事件が代表 |
1968年 |
アスベスト |
発がん物質 |
ケイ酸塩を主成分とする繊維状の鉱物。 肺がんや中皮腫に罹患 |
1970年 |
産廃不法投棄 |
廃油、廃プラ |
豊島における産業廃棄物不法投棄 |
1980年 |
廃棄物公害 |
ダイオキシン |
日の出町廃棄物処分場の浸出水より |
1996年 |
メルトダウン |
放射線 |
福島第一原子炉メルトダウン |
2011年~ |
(注1)POPs:難分解性(残留性)有機汚染物質。日本では1999年に「ダイオキシン類対策特別措置法」を制定。2001年にストックホルム条約が締結された。
3.まとめ(筆者コメント)
①福島第一原子炉メルトダウンによる損害は21兆円を超えるという。15mを超える津波の情報を得ながら、対策を怠った罪は重く、経営幹部の無罪判決は不当である。
②非常電源を地階から2階に上げる措置を取れば水没を免れて、数百万円の費用で済んだはず。次善の策に想到しなかった数万人の東電社員は何をしていたのだろうか。
③トリチウムを体内に取り込むと、崩壊時にDNAを破壊し奇形児誕生のリスクが、非常に小さいがある。トリチウム汚染水は水と区別ができず、除去が難しい。貯蔵量は137万トンの限界に近付いた。
昨年、ようやく、分離・回収する技術が発見されたそうなので、国費を投入してでも、実用化に取り組むべきである。
地球環境② 世界の環境問題 [環境問題]
1.世界の環境問題
写真のような、真青な水の惑星・地球は、人類にとってかけがえのないものだ。たかだか数十年の人々の営みによって急激に、地球に魔の手が忍び寄っている。
プラスチックごみが良い例で、餌と間違って食べた魚が死に至るという。本当に恐ろしいことだ。
2.世界の主要な環境問題
地球環境にとって、グローバルリスクと思われる項目を一覧表にしてみた。後続の当ブログで、順次、問題と対策を考えてみよう。
リスク |
説 明 |
地球温暖化 |
二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの増加により、地球の平均気温が上昇すること。このままだと、2100年頃、年平均気温は1.4°C~5.8°C上昇するという。 |
気候変動 |
気候・降水量などが、30年間の平均値から徐々に乖離することで、異常気象の多発が懸念される。 |
水資源不足 |
地球上で循環している水の量は14億K㎥とされ、大部分は海水で、淡水は2.3%に過ぎない。しかも淡水のうち、人間が使える水の総量は1%にも満たない。 |
食料安全保障 |
国民に必要な食料の安定供給を確保し、生命と健康を守ること。日本の食料自給率は40%を割り、世界の飢餓人口は8億人を超えている。 |
地下資源枯渇 |
石炭、石油など化石燃料の資源は枯渇の期限が迫っている。地球にやさしい代替資源の開発が急務である。 |
海洋汚染 |
海洋に投棄、排出された物質による海水の汚染。DDT等を含む農業用水、水銀、カドミウム等の重金属、PCB等の石油化学製品、油、放射線廃棄物などが原因物質になっている。 |
熱帯林減少 |
熱帯地方に発達した森林が、商業伐採や農地・牧草地への転換などにより急速に減少している。面積は19億㌶で、世界中の森林面積43億㌶の半分近くを占めている。 |
オゾン層破壊 |
大気中に放出されたフロンが、地上10~50kmの成層圏に滞留するオゾン層を破壊する現象。フロンは太陽紫外線で分解され、放出された塩素分子によって、オゾン分子が破壊される。 |
人口爆発 |
世界の人口は2055年に100億人を突破するという調査がある。日本は少子化だが、世界の問題は人口減少より人口爆発だ。 |
感染症拡大 |
地球温暖化に伴って、日本でもマラリアやデング熱の流行が懸念される。 |
3.まとめ(筆者コメント)
①トランプ大統領が、温暖化対策を国際的に取り決めた「パリ協定」から離脱を宣言した。専門家が科学的に検証した事実を信じないという。選挙の足かせとなる政策は先延ばしする魂胆であろう。米国第一主義を唱えるだけで、世界の指導者としては落第どころか、悪魔である。
②人口爆発の対策は、教育レベルの向上と避妊具の無償配布である。日本は逆に少子化に悩んでいる。対策は、若者世代の可処分所得向上である。政府は、30年間の誤った緊縮政策の転換が必須。
地球環境③ 地球温暖化と気候変動 [環境問題]
1.地球温暖化・気候変動の因果関係
下図の通り、温室効果ガスの増加→大気、海水の温度上昇→温室効果ガスの増加という悪循環の結果、気温は、最近100年間に0.74度C上昇、2100年には1.6度C上昇すると予想されている。日本は率先して対策に取り組まなければならない。
2.主な温室効果ガス
温室効果ガスの種類別構成比は、二酸化炭素76.0%、メタン15.8%、一酸化二窒素6.2%、フロンその他2.0%となっている。
①二酸化炭素(CO2)は炭素を含む物質が燃えたときに発生する。年間264億㌧排出され、うち114億㌧は植物や海が吸収してくれるが、残りは大気中に残ってしまう。
世界の二酸化炭素排出量(2016年)は323億㌧で、うち中国28%、米国15%、日本は3.5%。
日本における火力発電の、燃料別二酸化炭素排出量は、KWh当たり、LNG火力476g、石油火力695g、石炭火力864g。ちなみに石炭火力の世界平均は941gとなっている。
②メタン(CH3)は、湿原、田んぼ、天然ガスなどから自然に発生し、二酸化炭素の21倍の温室効果があるという。牛や羊などの家畜のゲップもメタンを含み、温暖化に一役買っている。
③一酸化二窒素(N2O)は亜酸化窒素とも言い、窒素酸化物の一種である。人を陶酔させる作用があり笑気ガスとも呼ばれる。温室効果は二酸化炭素の300倍もあり危険度は高いが幸いに量は少ない。
紫外線によって分解されて一酸化窒素になり、フロンと同様、オゾン層を破壊する作用がある。
④フロン(CFC)は、炭素、水素、フッ素、塩素、臭素などの化合物で、冷媒や溶剤として使われる。オゾン層破壊と温室効果があることから規制され、代替フロンに切り替わりつつある。
3.気候変動の悲惨な結果
大気温、海水温上昇により、感染症、熱中症、害虫の増加、洪水や高波の頻発、希少動物減少やサンゴ白化などの災害が発生しており、今後はさらに悪化すると予想される。
海面は、最近100年間に17cm上昇、2100年には84cm上昇が予想され危機感がたかまっている。
4.まとめ(筆者コメント)
①トランプ大統領が米国は「パリ協定」から離脱すると宣言した。地球温暖化に対する科学的な知見を無視し、温暖化対策費を選挙に勝てる政策にまわすつもりであろう。断固反対しよう。
②日本にも、国連の持続可能開発目標(SDGs)を否定し、カリフォルニア山火事は自然現象と言い張る論者がいる。藤井厳喜、武田邦彦、・・・。
地球環境④ 水資源管理 [環境問題]
1.世界の水資源の現況
地球は「水の星」と言われ、14兆㎥もの水が存在している。ほとんどは海水で97.5%、淡水は2.5%に過ぎない。淡水の70%は北極、南極の氷の状態なので、使える水は全体の0.01%である。
国連主導の「持続可能な開発目標」17項目の6番目が「安全な水とトイレを世界中に」で、2030年までに、すべての人々の水と衛生の利用可能性と、持続可能な管理を確保するとしている。
2.日本の水資源の現況
日本の年間の降水量は約6,400億m3(1981年から2010年までの30年間の平均値)ですが、その内、約2,300億m3(36%) は蒸発散してしまう。
残りの約4,100億m3 は理論上人間が最大限利用可能な量であり、これを水資源賦存量という。
降水量が少ない年では、水資源賦存量は減少し、10年に1回程度発生する渇水年では約2,800億m3 となっている。
年間降水量 約6,400億㎥ |
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蒸発散 2,300億㎥ |
利用可能量 4,100億㎥ |
3.日本の水使用量
実際に使用している水量は、2011年の取水量ベースで年間約809億m3 であり、平均的な水資源賦存量の約20%に相当する。この比率を水資源使用率という。
使用されない3,000 億m3 以上の水は洪水などで海へ流出したり、地下水として貯えられている。
利用可能量 4,100億㎥ |
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使用量809億㎥ |
残りは海や地下水へ |
4.水の用途別使用量
水の用途別の使用状況(2011年)は、農業用水が約544億m3 で全体の約67%、工業用水が約113億m3で全体の約14%、生活用水が約152億m3 で約19%となっている。
日本の水資源使用率を地域別に見ると、大都市が集中する関東、近畿で高い値となっている。
5.仮想水使用量(食料等の輸入品が、生産地で使用した水を、輸入したと見做した量)
食料等の輸入品を日本で作ったと仮定した場合の水使用量を仮想水という。
日本の仮想水使用量は年間640億㎥である。水使用量809億㎥に迫る量である。
6.改正水道法(水道民営化)の問題点
2018年12月、水道事業を民営化しやすくする「改正水道法」が強行採決で可決された。民営化すれば利益を優先するあまり、水質は低下し、住民サービスは二の次になる。多国籍国際資本に、おいしいところだけ持って行かれる結果に終わりそうである。
7.まとめ(筆者コメント)
①今上天皇は「水問題」をご研究のテーマにされていて、最近、「水運史から世界の水へ」の著書を出版された。また、3年ごと開催の「世界水フォーラム」で講演をされている。心強いことと思う。
②温暖化がこのまま続くと、亜熱帯地域の砂漠化、赤道と高緯度地域の多雨が進行し、人が住みにくい地球になると思われる。一人一人が、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出抑制に取り組もう。
③日本の年間降水量1718mmは世界平均880㎜の2倍だが、人口密度が高く、一人当たりに換算すると決して潤沢ではない。雨水を上手に貯留する工夫が大事である。
④水道民営化について、最近15年間に37か国235都市で公営に戻し、違約金や損害賠償を請求されるという失敗事例が多数発生している。日本は同じ轍を踏まないよう、見直しをしよう。