原発ゼロ ⑤ 原発からの投資撤退 [政治・社会]
事故リスクの高い原発や、温暖化の原因になる石炭火力などへの投資をやめる「ダイベストメント(投資撤退)」が広がっている。朝日新聞のbe掲載(2月17日)の記事を参考に考えてみよう。
1.投資撤退(ダイベストメント)の目的
投資家が、環境破壊に無頓着な企業に対し、株・債券などの金融資産を引き上げて事業をストップさせるのが目的で、間接的な兵糧攻め狙っている。
2.投資撤退の主なターゲット企業
原発・化石燃料への貸出トップ5
順位 |
企業名 |
貸出額 |
1 |
みずほ銀行 |
3兆7864億円 |
2 |
三井住友銀行 |
1兆9767億円 |
3 |
三菱東京UFJ銀行 |
1兆7979億円 |
4 |
三井住友信託銀行 |
4076億円 |
5 |
三菱UFI信託銀行 |
3953億円 |
3.投資撤退の主な推進団体
化石燃料から投資撤退を決めた主な団体は下記。世界では、76ヶ国、832もの企業や団体がダイベストメントを宣言し、運用資産は、6兆ドル(650兆円)に達している。
区 分 |
主な国、自治体、団体 |
国・都市 |
シドニー、ベルリン、アイルランド、ケープタウン、ニューヨーク |
年金 |
ノルウエー政府年金基金、カリフォルニア州公務員年金基金 |
保険 |
アクサ(フランス)、アリアンツ(ドイツ)、ロイズ(英国) |
大学 |
ハーバード大学(米国)、オックスフォード大学(英国) |
宗教 |
世界教会協議会(本部・スイス)、英国国協会、ウムアラマ・カトリック教会(ブラジル) |
4.環境NGO 350.org japanの活動(日本)
350.org japanは、地球温暖化問題に取り組む国際環境NGO、「350.ORG」の日本支部で、レッツ・ダイベスト・キャンペーンを実施している。(https://letsdivest.jp/) 活動の成果は下記で、世界のレベルには遠く及ばない。
-
ダイベストメント参加人数 134人
-
ダイベストメント参加団体 10団体
-
ダイベストメント推定金額 5億1918万円
5.地球にやさしい日本の銀行
地方銀行、ネット銀行、信用金庫、労働金庫のうち、45行が、原発・化石燃料への貸出などはせず、地球にやさしい銀行として推薦されている。
例えば、城南信用金庫は2011年に、脱原発を宣言し、自然エネルギー普及のための融資に力を注いできた。
6.まとめ(筆者コメント)
①原発事故に見舞われたとはいえ、石炭など化石燃料にどっぷりと依存して、CO2排出削減をあきらめてしまっている。日本はパリ協定にしっかり向き合おう。
②レッツ・ダイベスト・キャンペーンのような活動に、国民一人ひとりが可能な限り参加しよう。筆者は、長期保有のみずほ銀行株を売却した。
③5項記載の地球にやさしい銀行に口座を開き、2項記載のターゲット銀行から預金を移そう。原発ゼロ ⑥ 立民党のタウンミーティング [政治・社会]
立憲民主党は、「原発ゼロ基本法」の立案にあたって、国民の声を聴くため、タウンミーティングを各地で開催している。本年1月から2月にかけて、18回開催し、100件を超える貴重な意見を聴取したという。
2月16日に、神奈川県で開催したタウンミーティングの要旨を、簡潔に述べる。
1.基調講演 「原自連」会長 吉原毅城南信用金庫顧問
「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(「原自連」)が立案した、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の概要を紹介した。要約は下記。
運転中の原発を直ちに停止、中止中の原発は今後稼働させない。原発事業輸出は中止し、原発全廃の必要性を世界に発信。再生可能エネルギーの電力比率を、2030年までに50%以上、2050年までに100%とする。
2.基調講演 小田原商工会議所会頭 鈴木俤介氏
地方創生の一環として、エネルギーの地産地消を進めるため、2012年3月に、地元中小企業が連合して、「小田原箱根エネルギーコンソーシアム」を設立した。その際、1口10万円の市民ファンドを募って、初期投資に充当した。エネルギーの地産地消により、電力料金として外部に流出する金の一部を、地域で回すことができた。
講師は、鈴廣蒲鉾店の経営者であり、次の通り自社のエネルギー改革の一端を紹介された。太陽熱給湯器を導入し、工場や厨房の給湯に活用している。太陽光発電もしているが、太陽熱の方が効率良いことが分かった。両者合わせて東電への支払いの6割を削減している。日本は熱源の多い国である。工夫次第で、中近東から買う年20数兆円のオイル代は節約できる。
3.タウンミーティングの質疑応答
立民党エネルギー調査会から、逢坂誠二会長、阿部知子副会長、山崎誠事務局長ほか、10名近く出席した。主な質疑応答は下記。
聴衆からの質問 |
調査会&講師の回答 |
日米原子力協定上、廃炉に米の了解が必要ではないか |
廃炉は日本の主権であって、条文上、米の了解を要する規定はない |
共産党は原自連の案に賛成という。野党共闘に支障はないか |
原氏連は3月9日、立民党は3月11日、国会提出予定。野党の了解を得る |
再生可能エネルギーのシェアを4割にする目標の、障害は何か |
ネックは政府の姿勢。ゼロの決断が大事。 長すぎる環境アセス期間の短縮。 省エネの施策も重要。 |
箱根の地熱発電
|
箱根は温度が低く、湯量も少ない。 小規模熱交換は可能。 |
原子力規制委員会が大障害。安全哲学を蔑ろにする委員には試験を科そう |
役人の片道切符の規制が必要。透明性の確保。原子業界の金の力を規制したい |
連合はゼロに反対だが、組合員は賛成 |
支部長に訴えることで、漸進は可能 |
進むも地獄引くも地獄は本当。核脱却の覚悟はあるか |
今だけ自分だけはダメ。中央集権型社会から脱却し、地域分散自立型社会へ |
意見:リニアは4倍の電気を使い、原発使用を見込んでいる。3.11の被害者の立場を織り込め。太陽光等の乱開発を危惧、再エネは自然破壊エネだ(札幌での発言にショックを受けた)。再エネ関連会社の倒産多発を危惧。電力も銀行も変えた、消費者の力でゼロ実現しよう。 |
4.まとめ(筆者コメント)
①国民の声を聴いた振りの、おざなりの公聴会は過去にあったが、今回の立憲民主党の会には、本気度が感じられた。
②小田原箱根エネルギーコンソーシアムの試みは、地方創生と、エネルギーの地産地消について、全国のモデルになると思う。今後の横展開の動きを注視したい。
憲法改正の論点 ① 肝心かなめは「立憲主義」 [政治・社会]
いま、憲法改正論議が盛んである。憲法改正の賛否の論点を何回かに分けて考えてみよう。
1.立憲主義の意義
憲法改正を考える際の、肝心かなめは「立憲主義」である。日本国憲法第99条に、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負ふ」と規定している。一般国民ではなく、国家権力者に憲法順守義務を課していて、これが立憲主義の根拠になっている。
2012年、自民党作成の「日本国憲法改正草案」をはじめ、最近の自民党の改憲論議には、立憲主義の無理解と無視が目立ち、大変心配である。
2.立憲主義の構造
前項の立憲主義は下図のように整理することができる。矢印の向きが大事である。
3.まとめ(筆者コメント)
①自民党の多くの論者は、立憲主義を理解していない。為政者が国民を支配する道具として、憲法を考えているみたいだ。
②憲法は、国民と国家の契約書で、国家が順守義務を負っているのだ。
憲法改正の論点 ② 憲法が目指す価値 [政治・社会]
日本国憲法において、国家権力が守るべき価値は、国民主権、基本的人権尊重、平和主義で、「日本国憲法の三大原則」と呼ばれている。
1.国民主権
日本国憲法は、前文で「主権は国民に存する」、1条で「象徴天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と規定し、国民主権を宣言している。国民主権は、基本的人権尊重と合わせて民主主義のかなめである。
2012年、自民党作成の「日本国憲法改正草案」では、国民の権利に比べて義務の記述が少ないとして、義務の規定を大幅に増やそうとしている。
一例をあげると、①すべて国民は、この憲法を尊重しなければならない。(102条)、②日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない(3条2)、③自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、公益及び公の秩序に反してはならない(12条)。
人権を認めてほしければ、まず義務を果たせと、上から国民に迫る政治家の姿勢には違和感を覚える。憲法は権力から国民の権利を守る法なので、本来、義務を規定する必要はない。これでは国民は、主人(主権者)から下僕になり下がってしまうのではないか。
2.基本的人権尊重(個人の尊重)
日本国憲法13条に、「すべての国民は、個人として尊重される」と規定されている。「個人の尊重」が最高の価値で、政府はそれを守る義務を負うわけである。
ところが、2012年、自民党作成の「日本国憲法改正草案」では、「個人」が「人」に置き変わっている。「人」となると、国家権力に支配され、奉仕する群衆のイメージで、人権尊重には遠くなる。
改憲派は、憲法は国家の基本法だから、文化、伝統、道徳、倫理などを、国の形として、憲法に書くべきだ。そうしないと「行き過ぎた個人主義」が日本を駄目にするという。しかし、愛国心や家族観は権力によって押し付けられるものではなく、自発的に湧き出すよう計らうものだ。
安倍首相は、「個人の自由を担保するのは国家である」というが、政権の危険なかじ取りで、国民の生命財産が危険にさらされるのは困る。平和外交に徹してもらいたい。
3.平和主義
憲法9条は、戦争放棄、戦力不保持、交戦権放棄をうたっていて、平和主義憲法の象徴である。生まれはGHQの占領政策の一環であるが、戦争の悲惨さを嫌というほど味あわされた日本人に受け入れられてきた。
時の多数党政権が、戦争も辞さない乱暴な国家運営をしないよう、9条が歯止めになると期待されている。安倍首相は、憲法を改正しても、「必要な自衛の措置しか我々はとらない。侵略は二度としない」と述べ、平和主義は貫かれていると主張している。本当だろうか。
筆者は、安倍首相が何と言訳しようと、集団的自衛権行使の行き着く先は、日米同盟の強化、軍備拡張競争の激化、世界で戦争ができる「好戦的な国」になると思う。
日本国憲法は、世界初の理想の憲法である。理想の旗は安易におろさず、逆に、世界に広める努力をしよう。安全保障環境がより厳しくなった現在、抑止偏重のこわもての外交でなく、交流を通じた安心供与の平和外交を進めよう。最近、韓国が北朝鮮との対話で、米朝会談をお膳立てした。韓国の太陽(対話)が、安倍首相の北風(圧力)に勝った。
4.まとめ(筆者コメント)
①戦争の惨禍を経験して、ようやく手にした国民主権は、決して手放してはならない。愛国や道徳もよいが、学校で戦前戦後の現代史をしっかりと教えるべきだ。事実ほど強いものはない。
②自民党の憲法改正草案のように、人権尊重の対象である「個人」を「人」と言い換えると、個性や多様性を軽視する思想につながってしまう。
③小田実が「お助け国家日本」がよいと提案した。日本は覇権的な大国になるより、小さくてもカワイイ国、人にやさしい国、世界中から愛される平和大国になりたい。
憲法改正の論点 ③ 九条改憲の賛成・反対論 [政治・社会]
賛否の論点 |
九条改憲賛成 |
九条改憲反対 |
安全保障環境の変化 |
自分の国は自分で守るため、自衛隊を国防軍に格上げし、軍事をタブーにしない普通の国になろう。 |
専守防衛のため、必要最小限の防衛力は持つが、平和外交によって、安全保障環境の方を変える努力をしよう。抑止(軍拡)より安心供与(対話)が大事。南北対話が、米朝会談をお膳立てした好例がある。 |
日米同盟と集団的自衛権 |
内向きに転換している米に対し、九条改憲で、集団的自衛権を合法化し、同盟強化を図るべき。 |
違憲の集団的自衛権が合法となり、安保法制を追認することになる。米に従属する軍隊になれば、米の世界戦略に、いいように使われてしまう。9条は、防波堤。 |
理想の平和憲法 |
無手勝流では国民の生命財産を守れない。現状の環境変化に即応して、改憲しよう。 |
世界初で、北極星のような理想の憲法だから、世界に広めたい。理想の旗は安易におろさず、現状の方を変える努力をしよう。脅威の扇動に乗ってはならない。 |
自衛隊明記の「アベ改憲」 |
自衛隊明記の改憲は、国民に受け入れられやすい。自衛隊を明記してもその任務や権限は変わらない。たとえ国民投票で否決されても、自衛隊の合憲性は変わらない |
力を誇示し、敵を作って支配したい安倍首相のもとでは、反対。戦争の種をまくことになる。自衛隊明記で終わることはない。 明記で任務や権限が変わらないなら、明記の必要はない。否決されても合憲ならなおさらである。 |
自衛隊の 士気 |
多くの憲法学者が違憲という自衛隊の隊員に頑張れとはいえない。九条に自衛隊明記で、隊員の士気向上。 |
自衛権は国際的に認められており、自衛隊はすでに合憲で、国民に愛されている。 自衛隊明記で、入隊希望者減少、徴兵制復活などの恐れがある。 |
押付け 憲法論 |
日本の憲法は、米から押付けられたものだ。自主憲法を持つまで、日本は主権国家ではない。 |
押し付けられても、よいものはよい。逆に米が後悔しているくらいだ。九条は、幣原喜重郎の発案という説もある。それに、憲法より、日米安保条約の方が、日本の主権を害していると思う。 |
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9条に自衛隊明記の自民党改憲案は、まやかしである。明記で自衛隊の任務や権限が変わらない、否決されても合憲なら、改憲は不要である。
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改憲により、違憲の集団的自衛権が合法となり、安保法制を追認することになる。従米軍事路線から、戦略的平和外交への転換を期待する。
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日本国憲法は、 世界初の理想の憲法だから、「生かす憲法」に徹しよう。そして、世界に広める努力をしよう。
憲法改正の論点 ⑤ 憲法前文をどう生かすか [政治・社会]
いま、憲法改正論議が盛んである。憲法改正の賛否の論点を何回かに分けて考えてみよう。
1.憲法前文の解釈
憲法前文を、現実の政治に生かすため、その解釈を試み、表にまとめてみた。
憲法前文の理念 |
憲法前文の文言(要約) |
1 国民主権 |
主権が国民に存することを宣言しこの憲法を確定する。国政は国民の信託によるもので、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者が行使し、その福利は国民が享受。 |
① 議会制民主主義 |
正当に選挙された国会における代表者を通じて行動 |
② 自由と人権 |
全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保 |
③ 法治主義 |
国民主権に反する、一切の、憲法、法令を排除する |
2 恒久平和 |
日本国民は、恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持 |
① 国際協調主義 |
専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようとする国際社会に、名誉ある地位を占める |
② 積極的平和主義 |
全世界の国民が、恐怖と欠乏から免れ、平和に生存する権利を有することを確認 |
③ 政治道徳順守 |
いづれの国家も、自国に専念して、他国を無視してはならないのであって、この政治道徳の法則は各国の責務 |
④ 戦争をさせない |
政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きぬよう決意 |
2.憲法前文を生かす
憲法前文の理念を、どのように現実の政治生かすべきか考え、表にまとめてみた。
憲法前文の理念 |
憲法前文の生かし方 |
1 国民主権 |
2018年3月の当ブログ「憲法が目指す価値1項」参照 |
① 議会制民主主義 |
首相に権力が過度に集中し、忖度が蔓延し、民主主義の劣化が激しい。小選挙区制を中選挙区制に戻すなどの対策要 |
② 自由と人権 |
2018年3月の当ブログ「憲法が目指す価値2項」参照 |
③ 法治主義 |
2018年3月の当ブログ「肝心かなめは立憲主義」参照 |
2 恒久平和 |
2018年3月の当ブログ「憲法が目指す価値3項」参照 |
① 国際協調主義 |
日本は軍国主義や大国主義を捨て、諸外国と友好的協力関係を築き、自慢の平和憲法を、世界に広めるべき。 |
② 積極的平和主義 |
安倍首相は、アメリカのお先棒を担いで、自由と民主主義を守る戦争に参加するのが、積極的平和主義だという。 真の意味は、国際協調主義に基づいて、貧困や差別のない真の平和を作る努力をすることである。 |
③ 政治道徳順守 |
カントは、紛争が国家間で起こった場合、暴力ではなく、法による紛争解決の徹底が平和につながると説き、これを道徳と政治の一致と述べた。日本は、覇権国家を目指してはならない。2016年9月の当ブログ参照 |
④ 戦争をさせない |
戦争に正義も不正義もない。権力の一極集中の排除や、文民統制の徹底が大事。 |
3.まとめ(筆者コメント)
①前文で、政治の果実である福利は、国民が享受すると宣言しているが、権力者とそのお友達が得た便益を、隠蔽するのに汲々としているさまを見ると、中国を笑ってはいられない。
②安倍首相は、北朝鮮問題で「対話より圧力」と言い続けたが、韓国が北朝鮮との対話で、米朝会談をお膳立てした。韓国の対話が、安倍首相の圧力に勝った。日本の外交的孤立が心配。
自民党改憲4項目の論点 ② 緊急事態条項 [政治・社会]
自民党は、憲法改正のテーマを、自衛隊明記、緊急事態条項、教育無償化、合区解消の4つに絞り、2020年までに改憲を実現するという。緊急事態条項の論点を整理し、是非を考えてみよう。
1.緊急事態条項の賛否両論
大災害が発生した時、緊急事態にどう対応すべきか。自民党は、議院の任期延長と内閣への権限集中の二つの案件について、憲法改正に取り組もうとしている。
緊急事態条項の改憲について、賛成、反対論をまとめると下表のとおりである。
対象 |
自民党・緊急事態条項の改憲案 |
改憲不要論 |
|
大災害 テロ 内乱 外国からの武力攻撃 |
任期延長 |
緊急時に、衆院又は参院が解散中で、選挙が適正にできないときは、出席議員の三分の二以上の多数で、その任期を延長できる。 |
長期間選挙ができない事態は想定しにくい。非改選の参議院議員は必ず残るので、立法に大きな支障はない。 よって、改憲は必要ない。 |
権限集中 |
国家緊急権の行使のため、内閣の判断で、国会の手続きを経ず、法律と同じ効力を持つ政令を出すことができる。(内閣に権限を集中し、必要なら私権も制限する) |
災害対策基本法(注1)の「災害緊急事態の措置」の項で、政令を出して必要な処置をとると規定しており、改憲は必要ない。 |
注1:災害対策基本法は、伊勢湾台風を契機として1961年に制定された、災害対策関係法律の一般法である。1995年の阪神・淡路大震災の後、その教訓を踏まえて大幅に改正された。
2.自民党・緊急事態条項の憲法改正条文案(3月20日に自民党総務会に提示)
任期延長:64条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又(また)は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
権限集中:73条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
②内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
3.まとめ(筆者コメント)
①安倍政権には、災害対応を名目にした、「憲法改正ありき」の思いが透けて見える。
②内閣への権限集中は、私権制限と表裏一体。安易な改憲は、禍根を残す恐れがある。
③過激なテロが世界を脅かしているが、日本は、海外で実力行使をしない自衛隊を維持すれば、緊急事態を招くことはない。
自民党改憲4項目の論点 ③ 幼児教育の無償化 [政治・社会]
自民党は、憲法改正のテーマを、自衛隊明記、緊急事態条項、教育無償化、合区解消の4つに絞り、2020年までに改憲を実現するという。幼児教育無償化の論点を整理し、是非を考えてみよう。
1.自民党・幼児教育無償化の憲法改正案とその問題点
自民党は19年10月の消費税増税を見越して、その増収分の一部(1.7兆円)を教育無償化の政策に充当する計画である。高等教育無償化については、次回の当ブログで述べる。
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自民党・教育無償化の政策案 |
自民党政策の問題点 |
0-2歳児の保育 |
住民非課税世帯(年収260万円以下)は無償化。 待機児童対策として、2020年度末までに、32万人分の保育の受け皿整備。保育士は月3千円相当の賃上げ |
待機児童が解消されないまま無償化すれば、子どもを預けられない世帯に不公平をもたらす。 保育施設整備、保育要員確保による待機児童解消が先。無償化で、就園率が高くなり、保育の質低下が心配 |
3-5歳児の保育 |
認可保育所、幼稚園、認定こども園は所得を問わす無償化。(注1) 19/4先行、20/4全面実施 |
現状の料金は、生活保護世帯0円、非課税世帯6千円、年収1130万円以上が10万1千円となっており、無償化は、高所得世帯の恩恵が大。 格差拡大が激化 |
(注1)3-5歳児の保育の内、認可外施設は対象を検討する。5歳児は19/4より補助。
2.自民党・教育無償化の憲法改正、条文案
26条 現行:等しく教育を受ける権利
② 現行:義務教育を受けさせる親の義務と、無償化
③ 追加条文案:国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓(ひら)く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。
89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及はない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。(2月28日に自民党了承)
3.まとめ(幼児教育無償化について、筆者コメント)
①保育の無償化で、潜在待機児童の増加は必至。無償化を急ぐより、保育施設整備による待機児童解消が先決。
②保育の質は、保育要員の量と質に負うところが大きい。保育要員確保のためには、抜本的な待遇改善が必要。保育士に月3千円相当の賃上げではダメ。
③自民党政権になって、格差が拡大する政策が目立つ。経済の過度のグローバル化を見直すべきだ。
自民党改憲4項目の論点 ④ 高等教育の無償化 [政治・社会]
自民党は、憲法改正のテーマを、自衛隊明記、緊急事態条項、教育無償化、合区解消の4つに絞り、2020年までに改憲を実現するという。高等教育無償化の論点を整理し、是非を考えてみよう。
1.自民党・高等教育無償化の憲法改正案とその問題点
自民党は19年10月の消費税増税を見越して、その増収分の一部(1.7兆円)を教育無償化の政策に充当する計画である。高等教育無償化の政策案と問題点は下記。
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自民党・教育無償化の政策案 |
自民党政策の問題点と対策 |
私立高校 |
年収590万円未満世帯を対象に私立高校の平均授業料(年間約39万円)を支援して実質無償化(注1) |
2014年から、「高等学校等就学支援金制度」が始まった。(注2) 自民党案では、私立校への入学者が増えて、国公立校の統廃合が進む? |
大学など高等教育 |
住民税非課税世帯は、国立大は入学金・授業料免除。 私立大は上限儲け授業料免除。 非課税世帯に近い低所得世帯も準じた支援。 返済不要の給付型奨学金を拡充。 以上20/4実施 |
現在、日本学生支援機構(旧育英会)が、132万人に対し1兆円以上の奨学金を貸与。 返済滞納が33万人、保証人も含めた奨学金自己破産が年1万件と厳しい。 教育機会均等のため、下記施策の組み合わせが望まれる。①給付型奨学金、②所得比例返済制度、③機関保障制度(一定の保証金納付で代位弁済する制度)。 無償化が唯一の解決策ではない。 |
(注1)教育無償化総額2兆円とは別枠の財源を確保
(注2)2014年から、公立校は9,600円の授業料を無償化。私立校は、世帯の年収に応じて14,850円、19,800円、24,750円のいずれか支援。ただし年収910万円以上の高所得世帯は、公立、私立とも支援金ゼロ。
2.まとめ(筆者コメント)
①私立高校の実質無償化は悪くないが、国公立校の生徒減少対策が必要。
②教育の機会均等を求める声がある一方、教育格差に対し、「当然」、「やむを得ない」を足すと6割超とする調査がある。貧富の格差の意識が固定化したのか、寛容や思いやりの心が失われたのか、一億総中流の時代が懐かしい。
③コラム記載の報告書を見ても、世界の格差拡大は天井知らず。格差拡大の原因である過度なグローバリズムの見直しを切望する。
コラム オックスファム報告書 (2018年1月のダボス会議に報告)
①「資産ではなく、労働に報酬を」
2017年に世界で新たに生み出された富の82%を世界の最も豊かな1%が手にした。一方、世界の貧しい半分の37億人が手にした富は1%未満。
また、2017年に世界で最も豊かな8人が、世界の貧しい36億人に匹敵する資産を所有する。「世界の格差拡大は天井知らず」である。
納めるべき税金を回避、支払うべき賃金を値切る、カネの力で政治を動かし、経済ルールを都合よく書き換える、こういう大企業や大富豪が格差の拡大を加速させる。
②オックスファムの提言
・株式配当や、経営者報酬を制限し、労働者の賃金を「最低限の生活水準を維持する賃金」(今の3倍)とすること。
・富裕層に相応の税金を払わせる施策を導入すること
・男女の賃金格差をなくし、女性労働者の権利を保護する施策を導入すること
自民党改憲4項目の論点 ⑤ 合区解消 [政治・社会]
自民党は、憲法改正のテーマを、自衛隊明記、緊急事態条項、教育無償化、合区解消の4つに絞り、2020年までに改憲を実現するという。合区解消の論点を整理し、是非を考えてみよう。
1.参議院選挙区の現状
参議院の定数は、選挙区146、比例代表96となっており、3年ごと半数が改選される。
参議院選挙の一票の格差を是正するため、2015年に公職選挙法が改正され、鳥取県と島根県、および徳島県と高知県がそれぞれ一つの選挙区となり、参院議員定数が4議席減少した。同時に実施された、東京都など他の選挙区の増減を合わせると、10増10減となった。
2013年の参院選において、最高裁で違憲状態とされた4.77倍が、この改正の結果、2016年の参院選では、一票の格差が2.97倍に縮まった。
2.衆議院選挙区の現状
衆議院の定数は、区割り改定法により、小選挙区289(0増6減)、比例代表176(0増4減)、合計465(0増10減)となっている。
衆議院選挙の一票の格差を是正するため、2015年の公職選挙法改正で、市区町村を二つの選挙区に分割する改正があった。289選挙区にうち、97選挙区で分割されることになった。
3.自民党・選挙区変更案とその問題点
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自民党・選挙区変更案 |
自民党案の問題点 |
参院 合区 解消 |
最高裁の違憲判決を受けて、合区したが、過疎地の声が国政に届きにくくなったとして、「各県一人以上選出」(合区解消)を憲法に載せる。 地域の一体感醸成に役立つ |
合区の選挙区は自民党が強い選挙区であり、合区解消により、自民党議員が増える確率が高い。 参議院議員のいない県でも、衆院議員は最低でも二人いる。姑息な手段で、党利党略を許すのは問題。 最高裁の違憲判断を封じるための改憲だ。 |
衆院 区割り分割 解消 |
衆院選の区割りに際し、市町村を分割しない規定を改憲案に盛り込んだ |
衆院の一票の格差是正より、議員の地盤看板を優先したもので、格差を2倍以内に収めることが困難になる。 これも最高裁の違憲判断を封じる改憲だ。 |
4.まとめ(筆者コメント)
①自民党の合区解消改憲は、憲法14条の「一票の価値の平等」を蔑ろにする改悪案で、地盤看板を守り抜きたい既得権益層の横車である。
②43条に「両議員は全国民を代表する」と規定している。特定地域の利益代表と位置付けると、憲法の基本原理に反する。参議院は、役割、議席数、選出方法、を大幅に変えて、良識の府にすべきである。
③他の改憲項目と違って、世論調査で賛成が反対を上回っていが、改悪の案に変わりはない。
コラム 自民党・(合区解消)憲法改正、条文案
47条 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも一人を選挙すべきものとすることができる。
前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
92条 地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。(2月16日に了承)自民党改憲4項目の論点 ⑥ 国民投票法の問題点 [政治・社会]
自民党は、憲法改正のテーマを、自衛隊明記、緊急事態条項、教育無償化、合区解消の4つに絞り、2020年までに改憲を実現するという。国民投票法の問題点と、改正必要事項を考えてみよう。
1.憲法改正国民投票法の現状
正式名称は「日本国憲法の改正手続きに関する法律」で、2007年5月に成立、2014/年6月に一部改正された。憲法改正は、国会議員の三分の二の賛成で発議し、国民投票において有効投票数の過半数で改憲できることになっている。
2.憲法改正国民投票法の問題点と改正必要事項
項目 |
現行、憲法改正国民投票法の問題点 |
改正が望ましい事項 |
個別 一括 投票 |
改憲項目が複数の場合、法は個別と一括の投票を認めている。自民党は、国民受けする項目を餌にして、一括投票を目論むに違いない |
国民から見て、複数の改憲項目のそれぞれには軽重がある。憲法改正国民投票はすべて、項目ごとに、賛否を問うべきである |
最低 投票率 |
法は有効投票数の過半数としていて、最低投票率の規定がない。有権者のうち、わずかな賛成票で採択されては、正当性を問われ、事後、国民の間に分断を生む恐れがある |
最低投票率70%を成立要件と規定すれば、過半数は35%である。 賛成35%は、許容できる最低限度ではないか |
周知 期間 |
発議から投票までの周知期間は、法では2~6か月と規定しているが、2か月では短すぎるのではないか |
最低を3か月とし、3~6か月に改訂すべき |
テレビCM 規制 |
現行法は、テレビCMの総量、回数の規定がない。発議から投票の15日前までは、放送は無制限である。 自民党は、豊富な政党交付金や経団連の寄付を財源に、電通をフルに使って、CM攻勢を企むに違いない。 14日前から投票日までは、勧誘すなわち、賛否を呼びかける放送を禁じていが、賛成しますという意見表明は禁じていない。有名タレントを起用して、賛成意見の表明をさせるに違いない |
国民投票の際に、英仏伊は有料CM放送を禁じている。 日本も、公平公正に憲法改正を実現し、瓢箪から駒など出さないよう、下記法改正が望まれる。 ①有料CM放送禁止 ②改憲内容周知のため国の費用で、NHKと民放各社に無料放送枠を設け、賛成論と反対論を募集して、期間中、公平に放送する |
投票日 |
投票率を高めるため、衆院選、または参院選と国民投票を同日に行う意見がある |
公職選挙法と国民投票法は仕組みが全く違うので、同日選は避けた方が良い |
4.まとめ(筆者コメント)
①憲法改正は、国会議員の熟議と、国民の十分な納得の上で、公平公正な手続きを経て決められなければならない。
②札束に物を言わせたり、催眠術を使ったりすると、事後に、国民の間に修復できない分断を生む恐れがある。
③国民投票の費用は600億円を超えると言われている。「力」による安全保障から、現行憲法を生かす政治に転換し、改憲を回避する政策を期待する。
自民党改憲4項目の論点 ⑦ 護憲団体紹介 [政治・社会]
自民党は、憲法改正のテーマを、自衛隊明記、緊急事態条項、教育無償化、合区解消の4つに絞り、2020年までに改憲を実現するという。安倍改憲に対抗し、日本の平和憲法を、一貫して守る活動をしてきた、主な護憲団体を紹介しよう。
1.主な護憲団体の紹介
NO |
団体名 |
主な活動内容 |
1 |
2004年、有識者9人の発起で始まった、憲法改悪反対運動の老舗。支部は全国に7,500以上ある。 ブックレット:「安倍9条改憲は戦争への道」発刊、集会:「安倍9条改憲NO!3000万人署名」など活動は活発。署名は4月末で1350万人。 |
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2 |
安保法制の違憲性を争う裁判・「安保法制違憲訴訟」推進中。「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」運動実施中。国会前連続行動実施中。 |
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3 |
「集団的自衛権の行使」は海外で戦争すること。閣議決定で「戦争する国」になるな!与党協議で勝手に決めるな! |
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4 |
2014年設立。改憲を止めよう!政治を変えよう! 国会前連続行動への大結集を呼びかけ。 |
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5 |
安全保障関連法案を、抜き打ち強行採決した安倍政権は許せない。アピール賛同の学者研究者14,348人、賛同市民32,459人。 |
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6 |
賛同者2250余名 講座:「戦争に近づくな」丹羽宇一郎、「立憲政治とは何か」杉田敦、「安全保障のジレンマと立憲デモクラシー」石田淳、他多数開催 |
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7 |
1965年羽仁説子ら著名人33人の呼びかけで設立。憲法しんぶん毎月発行。憲法パンフレット:憲法9条を変えて、「戦争する自衛隊」にしていいのですか。 |
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8 |
2014年設立。「戦争をしない憲法9条」を保持している日本国民をノーベル賞候補に推薦する運動展開中。 |
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9 |
所長:伊東真弁護士。4月に法学館憲法研究所報発行(第18号)。憲法関連書籍論文多数。中高生の憲法教室も運営。 |
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10 |
九条・憲法、日米安保と普天間、原発事故などについて、映像と講演の内容を公開している。例:「自衛隊を憲法に書き加えるとどうなるか」講師:石川健治(憲法学者) |
2.まとめ(筆者コメント)
①高等学校で、2022年度から、「現代社会」に代わって「公共」が必修科目になる。「基本的人権の保障」、「平和主義」、「権力分立」などの「憲法の目指す価値」が学習指導要領から消える。そして、憲法教育自体が、イデオロギー的教育とみなされて、なくなる運命にある。
自ら考え、判断し、行動できる個人を育成するのが、教育基本法のあるべき姿である。「主権者教育」、「平和教育」、「人権教育」の分野で、教師の偏向教育の心配をするのは考えすぎである。
いま、教育や安全保障分野で、憲法を悪用する解釈改憲がはびこって、危険な国に向かっている。
②「梅雨空に『九条守れ』の女性でも」という俳句を、「公民館だより」に掲載しなかった訴訟について、二審も「人格的利益を侵害」したとして違法判決を出した。
安倍内閣へ忖度し、内閣府の監視の目を恐れて、自治体の腰が引けている。猛省すべきだ。
③法学館憲法研究所の、「今週の一言」には2004年以来毎週一本、合計約700本の憲法にまつわる論考が掲載されている。
憲法擁護団体と個人の、反戦平和運動の内容がわかる、貴重なデータベースである。
憲法を改正する前に、新機軸の近隣外交を [政治・社会]
1.改憲派、護憲派の論点
改憲派、護憲派の論点を整理してみた。護憲派の議論の方が合理的に思われる。
課題 |
改憲派の論点 |
護憲派の論点 |
安全保障 |
中国が尖閣や沖縄に触手を伸ばし、北朝鮮が核ミサイルで挑発している。戦力不保持、交戦権放棄の憲法を後生大事にしていて、攻められたらどうする? |
安全保障は、軍備強化による抑止政策より、安心供与の外交が大事。厳しい安全保障環境は所与ではなく、緩和が可能である。敵を作らず、交流と交渉により信頼関係を築けば、攻めてくることはない。 ただし、万一のため自衛力は必要。 |
嫌中国 |
中国は共産党独裁政権で、日本と価値観も政体も異なり、永遠に理解しあえない国である。 膨大な軍事費を使って、アジア太平洋の覇権を狙っていて、日本にとって脅威である。 日本はいつか、中国の属国にされていまう。 |
「遠い親戚より近くの他人」は真理。近いゆえに紛争の種が多く、友好には、何倍も努力が必要だが、努力のし甲斐はある。 下に見ていた中国が、強大になり、蔑視と羨望の感情に揺れる気持ちはわかるが、克服する大人の対応が望まれる。人を変えるには、まず、自分が変わることだ。 |
憲法九条 |
日本国憲法九条は、占領軍が、強い日本復活を防ぐために設けた瓶のフタである。(米要人の発言) 朝鮮戦争のとき共産勢力の進出に対抗するため、日本に再軍備を要請し自衛隊を作った際、九条を廃止すべきだった。 |
占領軍に押し付けられたことは確かだが、再軍備を一度は断った際、自前の憲法になり、戦争の悲惨さを嫌というほど味わった日本人に受け入れられた。 押付けでもよいものはよい。 米国が後悔しているそうだが、自衛隊海外派兵の歯止めになっている。 |
戦後教育 |
戦後、左傾化した日教組が、教育にゆがみを生んだ。団塊の世代を中心に洗脳された人々が、戦争世代と一緒になって、護憲にこだわり国益を損なっている。 冷戦終結後は、偏向教育が幾分緩み、健全に、保守化した若者が育っている。 |
戦争を体験し、骨の髄まで嫌う世代が減少し、戦争の話を聞いて育った、団塊世代も70歳を超えてきた。今、平和の尊さも価値も忘却されようとしている。 売り手市場で、若者が右傾化する気持ちはわかるが、現状維持にどっぷり浸かる若者はいただけない。世界平和を創造する気概を持ってほしい。 |
象徴天皇 |
日本は、「万世一系の天皇が統治する尊い国」。千年以上も男系男子の皇統が途絶えなかった、世界で唯一の国である。明治憲法の天皇親政も視野に入れたい。 |
天皇家は、国民から愛され、慕われているご一家である。 象徴天皇制の下では、国威発揚の象徴ではなく、平和日本の象徴であるべきで、天皇の政治利用は厳禁。 |
2.新機軸の近隣外交のポイント
①アジア外交の再生:対米従属外交から、アジア重視の外交に転換しよう。強大な中国と向き合うのに、他のアジア太平洋諸国との連携が欠かせない。切り札は、安倍首相の南京慰霊訪問だ。
②経済に強い日本:アジア外交で主導権を発揮するには「強い経済力」が助けになる。積極的な設備投資、技術投資、公共投資を断行し、生産性を向上して、経済に強い活力ある日本を取り戻そう。
③若者の右傾化阻止:中国脅威論に毒された若者が、排他的で、内向きの右翼思想に取り込まれている。安全保障環境悪化の原因を放置して、若者を動揺させ、それを右翼政治に利用するのはやめよう。外を向くのが若者だ。
自虐、反日日本人批判に反論する [政治・社会]
戦後の歴史認識において、自国の歴史の負の部分を強調、正の部分を過少評して、自国を貶めるのが自虐史観とされている。反日日本人という言い方もある。
自虐史観と言われて非難される日本人は本当に日本を憎み、貶めようとしているのだろうか。私は違うと思う。自虐、反日日本人批判の論点を整理してみよう。
読者の皆様にお願いがあります。本テーマは奥が深く、筆者には手に負えないところがあります。引き続き研究しますが、皆様からもコメントをお寄せください。
1.自虐、反日日本人批判とその反論
テーマ |
自虐、反日日本人批判 |
自虐、反日日本人批判への反論 |
満州事変 |
満州は日清、日露の戦勝で勝ち取った権益で、「アジアは一つ」の理念の実現を願った。中国の抵抗にあったが、列強の植民地支配を終わらせる正義の戦いであった。 |
理念はよいが、中国や朝鮮の連携に失敗し、民族主義を鮮明にした。同盟国・英国の忠告を聞かず、ついに、一線を越えて錦州爆撃を敢行、民間人も多数殺害し、中国の怒りを買った。正義の戦いとは言えない。 |
東京裁判 |
東京裁判史観の人々は、東京裁判の判決文に書かれた日本悪玉論を妄信し、日本を侵略国家と決めつけ、日本を貶める活動をしている。 アメリカが反日プロパガンダを実行し、日本人を洗脳した事実を知るべきだ |
アメリカ、特にルーズベルトが日本を戦争に追い込む謀略はあったと思う。また、占領中、WGIPやプレスコード(注)を駆使して、占領統治をしたのは事実であろう。 しかし、日本は、戦争責任に真摯に向き合い、将来の外交に生かすべきだ。反省の声を挙げるのは反日ではない。 |
対中外交 |
中国は共産党独裁政権で、日本と価値観も政体も異なり、永遠に理解しあえない国である。 南京虐殺30万人と称して反日攻勢を強めている。 南シナ海の領有を主張して、軍事施設を建設し、軍艦による尖閣への領海侵犯を繰り返し、沖縄独立工作に手を染めている。 日本の親中派、媚中派は、そんな中国を擁護している。 平和ボケのお花畑思考はやめるべきだ。 |
民族の欠点をあげつらっても、得るものはない。中国にも多様な、優れた人材が多い。ヘイトスピーチはやめて、違いを認め、尊重し合うための対話をし、相手を「識る」ことが大事だ。 「嫌中本」を読んで留飲を下げるのは、一種の小児病で、「アジアを開放した」など歴史を美化し、名誉の回復に固執してる。 自虐史観と非難する側の人は、あったことも無かったことにしたいという 「恥知らず史観」と言われても仕方がない。 |
靖国神社 |
靖国は、国に殉じた英霊を祀る神社である。首相が、英霊に尊崇の念を現すために参拝するのを、中国や韓国が反対するのは理不尽である。 これも、反日日本人や反日メディアが、騒ぎ立てるせいである。 |
靖国は、1978年にA級戦犯の東条英機元首相ら14人を合祀した。 安倍首相は、2013年に靖国神社に参拝して世界中から総スカンを食った。参拝は日本の伝統文化で内政問題だというが世界には通用しない。 靖国とは別の、誰でも心おきなく参拝できる追悼施設を作るべきだ。 |
(注) WGIP(戦争罪悪感・情報計画)、プレスコード(新聞遵則)
2.まとめ(筆者のコメント)
① 脱自虐史観派の増加
日本に謝罪ばかりを求める中韓を見て、脱自虐史観派は増えているようだ。脱自虐史観が独り歩きを始めると、中国の日米離間戦略にはまり、国際社会からも日本は孤立する恐れがある。
② 歴史認識問題の克服:歴史の共同研究
南京大虐殺や従軍慰安婦問題などが、時々くすぶりだして近隣外交を台無しにすることが多い。日中韓の有識者間で、東アジアの歴史を共同研究すべきである。一致できない箇所は両論併記でよい。研究成果は各国の教科書に載せて、正しい歴史認識を持った未来志向のアジア人を育てたい。
③ 自虐史観の止揚
自虐、反日の言論は日本の力を削ぐという議論がある。解決のため中韓の懐に飛び込み、相手をもっと「識る」ことから始めよう。中国の属国にされる心配は無用だ。
地球環境⑫ オゾン層破壊 [政治・社会]
1.オゾン層破壊とその問題点
大気中に放出されたフロン等が、地上10~50kmの成層圏に滞留するオゾン層を破壊する現象。フロンは太陽紫外線で分解され、放出された塩素分子によって、オゾン分子が破壊される。
その結果、有害な紫外線を吸収するオゾン層にオゾンホールが生じ、有害な紫外線が地表に到達して、生き物の健康や生態系のバランスに悪影響が出る恐れがある。
(下図参照・国立環境研究所作成)
2.オゾン層破壊原因物質
オゾン層破壊原因物質は、フロン、ハロン、トリクロロエタン、四塩化炭素、臭化メチルなどである。
そのうち、代表的なフロンは、冷蔵庫やエアコンを冷やす冷媒、電子部品などの洗浄剤、ヘアスプレーなどに使われてきた。
3.オゾンホールの現状
NASAの衛星観測によると、南半球では、8~11月頃(南極の冬から春)に、南極大陸の面積を超えるオゾンホールが毎年観測されている。
北極圏は、南半球より、もともとオゾン濃度が高いこともあって、オゾン層破壊は軽微とされている。
4.オゾン層破壊の防止策
1980年代に国連が中心になって、「オゾン層保護のためのウイーン条約」、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択された。
先進国は1996年以降、発展途上国は2010年までにフロンの使用を停止するという約束が交わされたが、オゾン層はまだ回復してはいない。
5まとめ(筆者コメント)
①地球の年齢46億年に比べると、人類が地球環境を壊し始めたのは、ごくごく最近のこと。すぐにも急ブレーキをかけないと、間に合わなくなる恐れがある。
②日本では、オゾンの脱臭力を利用した機器が出回っている。塩素型の使い捨て脱臭剤が不要になり、コストダウンにもなっている。オゾンを増やす意味もあり有効と思う。
ふる里賛歌 [政治・社会]
筆者のふる里は、正面に刎石山、両側に碓井川と霧積川が流れています。真ん中を走る中山道の両側に家が並んでいました。旅籠風の家もあって、昔は宿場町だったようです。
刎石山の麓から中山道の旧道が始まっていて、今でも軽井沢まで狭い山道が続いています。
ふる里の山は刎石山
旧い中山道の山道をたどると
今は春
摘んだこごみを抱えた
あなたの目に緑が映っていたね
ふる里の川は碓井川
農道の先の坂道を下ると
今は夏
ガラスを張った水面で
あなたと一緒にカジカを突いたね
ふる里の川は霧積川
その先の坂道を上ると
今は秋
楓の木の下であなたに
紅葉の葉を拾ってあげたね
ふる里の山は浅間山
雪に覆われたやまはだ
今は冬
空っ風に吹かれてあなたの
ほっぺは真っ赤だったね
ジョウビタキ 撮影:鳥好閑人さん
菅政権は大丈夫か [政治・社会]
菅義偉政権が誕生した。政策は、安倍政権の政策を引き継ぐという。しかし、発言を聞いていると、安倍政権の悪いところをさらに悪化させるのではないかと危惧している。
そこで、何回かに分けて、心配の中身を述べてみよう。
1.経済財政政策の失敗の惨状
経済成長をさせて、国民を豊かにするのが政府の仕事である。ところが、平成元年から30年間、消費税を段階的に10%まで引き上げて、国民を貧しくし、経済格差の拡大を招いてきた。
世界で唯一、経済成長ゼロの国になった(図1)。今や、日本の名目GDPは中国の37%(最新2018年)、一人当たりGDPで韓国にも抜かれてしまった。これは少子高齢化が原因ではない。政府の政策の過誤であり、不作為である。
結果は明白。国際金融資本の代理人に操られて、新自由主義路線を推進した結果、儲かるのは高額配当を得る株主と、内部留保をため込む大企業のみで、長時間労働に苦しむ労働者の実質賃金は低下するばかりである(図2)。
菅内閣は、この事実を認め、国民に謝罪するところから出発すべきである。
2.原因は、緊縮財政政策(後述)
3.正しい財政金融政策(後述)
メジロ 撮影:鳥好閑人さん
低迷の原因は、緊縮財政政策 [政治・社会]
菅義偉政権が誕生した。政策は、安倍政権の政策を引き継ぐという。しかし、発言を聞いていると、安倍政権の悪いところをさらに悪化させるのではないかと危惧している。
そこで、何回かに分けて、心配の中身を述べてみよう。
1.経済財政政策の失敗の惨状(前述)
2.低迷の原因は、緊縮財政政策
日本は1000兆円超、一人当たり800万円超の借金を抱えており、財政破たんの可能性があると、まことしやかに語られている。これは国民の納税意識を高め、消費税増税を受け入れさせるための、財務省のプロパガンダであり、ウソである。財務省の本音は、徴税権と歳出権を行使することで、大きな顔をして天下りしたいだけである。
「国の借金」は、国でも国民でもなく、政府の負債であり、国民は債権者である。政府の借金増=国民の所得増=国民の資産増である。将来世代への借金の先送りでもなんでもなく、心配はいらない。
下図は、OECD加盟33か国における、年平均財政支出伸び率と、年平均GDP成長率の相関図である。財政支出伸び率とGDP成長率はほぼ比例しており、相関関係は非常に高い。日本の「財政支出伸び率ゼロ・ゼロ成長」が大変に痛々しい。「国家の店じまい」をしているのに等しい。
ゼロ成長の原因は、少子高齢化などではない。図からわかるように、デフレ下にもかかわらず、プライマリーバランス黒字化にこだわった緊縮財政政策の誤りである。
カワセミ 撮影:鳥好閑人さん
正しい財政金融政策 [政治・社会]
菅義偉政権が誕生した。政策は、安倍政権の政策を引き継ぐという。しかし、発言を聞いていると、安倍政権の悪いところをさらに悪化させるのではないかと危惧している。
そこで、何回かに分けて、心配の中身を述べてみよう。
1.経済財政政策の失敗の惨状(既述)
2.低迷の原因は、緊縮財政政策(既述)
3.正しい財政金融政策
①MMT理論(現代貨幣理論)
昨年、米民主党議員・オカシオコルテス氏がMMT理論への支持を表明し、全米で論争が巻き起こった。ポイントは、「自国通貨建て国債を発行できる政府は破綻しない」、だから日本は、財政累積赤字を気にせず、積極的に財政出動してよいということである。
MMTが出る前から反・緊縮、積極財政を唱える論者は日本にもいた。MMTは彼らには勇気を与えたが、財務省と御用学者には大変な試練を与えている。何十年も信じて採用したPB黒字化目標と緊縮財政政策が、全くの誤りで、30年間のゼロ成長の責任を問われているのだから。
まずは、誤った「貨幣プール論」から脱却して、「貨幣の信用創造論」に転換しよう。現代は、「金」の手持ち分だけ貨幣が発行できる金本位制ではなく、キーボードマネーの時代だから。
②デフレ下の消費税増税は最悪
立憲民主党の小川淳也議員が、先日、「消費税は社会保障の財源として必要」と発言した。与党議員の大半が主張するこの論法を、野党議員までが同調したのである。
最近、枝野幸男党首が、「時限的消費税ゼロ」を言いだして注目されている。遅きに失した感があるが、本気?なら、野党が与党と明確に差別化する旗を持つことになると思う。
財政政策の目的は、デフレを克服し、インフレを調整することで、経済を健全化することである。財政の健全化は目的ではなく、経済の健全化(経済成長)の結果としてついてくるものである。
だから、デフレ下で消費税を増税し、財政の健全化を志向するのは悪である。過度のインフレ時に消費の過熱を防ぐための消費税導入なら容認できる。
③経済成長なくして財政再建なし
前々回、図1で示したように、日本経済は30年間ゼロ行進を続けてきた。改めて正しい財政金融政策は何かを考えてみよう。
政府は家計と違って貨幣発行権を持っている。政府は、民間が元気でないときは、国債を発行して財政支出をし、需要を創出することで、民間活力を引き出すべきである。支出先は長期的視点に立った、生産性向上に役立つ公共投資、技術開発投資、人材開発投資が望ましい。
「消費税は社会保障の財源として必要」と考えているうちは、経済成長は望めず、「財政再建」も「全世代型社会保障」できない。
「税」の役割をもう一度見直し、日本を発展途上国に引きずり落とす政治経済運営はやめてもらいたい。
オオマシコ 撮影:鳥好閑人さん