保守右派の論点検証⑤ 家制度の復活 [平和外交]
保守右派の論点検証⑤ 家制度の復活
家制度とは1898年(明治31年)に民法に規定された家族制度のことで、戸主に家督相続させ、家族の扶養義務と家族の婚姻、入籍などの同意権を与えていた制度である。江戸時代の武士階級の家父長制的な家族制度をなぞっている。この家族制度は当時、中央集権国家の構成単位となり、富国強兵へとつながった。
戦後、婚姻の自由、夫婦の平等などを定めた憲法24条に反するとして、新民法では、家制度は廃止されたが、家制度の復活を目指す勢力は数多い。
保守右派の家制度復活への思いが、時代の変化に合っているか検証してみよう。
論点1.家族は互いに助け合って国家を形成する
自民党憲法改正草案では、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」という条文を新設する。
この家族条項を設けたのは、祖先から連綿と続く縦の家族制度を復活することで、日本らしさや伝統を維持し、美しい日本を取り戻したいからと言う。
検証:戦前の家制度は女性差別の温床であった。嫁姑の確執に泣いた女性は数が知れない。高度経済成長から都市への人口移動があり、核家族化が進んだ現在、家制度が復活する余地はない。
社会に格差が広がっているのに、その解決を家族だけに押し付けるのは間違っているのではないか。家族の助け合いを憲法に入れようとする人たちは自分たちが思う「正しい価値観」で国民を縛ろうとしている。
社会保障を安上がりに済まそうとする陰謀はやめて、家族が助け合えるように国は条件を整える方に力を注いでほしい。
論点2.夫婦別姓は家族の解体につながる
夫婦同姓を定めた民法570条が憲法に違反するかどうかが争われた裁判で、最高裁大法廷は合憲と判断した。保守右派の人々は、夫婦別姓は家族の解体につながると考えている。
検証:現在、男性の姓を名乗る家族が97%と言われているが、夫婦別姓を選べる制度を求める人たちで、家族の解体を望んでいる人はいない。
夫婦別姓は男女平等を形にしたもので、男女の不公平感の緩和が期待される。世界経済フォーラムの最近の発表によると、日本の男女格差は144カ国中、111位に悪化したそうである。
夫婦別姓は女性の社会進出を促進するメリットもあるが、子供の姓の選択が悩ましい問題でもある。
コラム 地球を観察した時、そこに生息する動植物の多様性は驚異的である。人間だけ一色に染めて、多様な生き方を否定することはできない。多様性こそ、かけがえのない価値であると思う。日の丸はシンプルで、大好きだが、赤一色に釈然としない時もある。
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