日本再生のシナリオ [日本再生]
1.国の借金1000兆円で、いずれ破たんするはウソ。
財務省の矢野康治事務次官が衆院選を前にして文藝春秋に、「バラマキ合戦のような政策を続けていると、国家財政は破綻する」と投稿した。
コロナ禍の財政出動をバラマキと決めつけ、絶対に起こらない財政破綻を喧伝するのは、役人として絶対にやってはいけないことだ。すぐに彼を更迭するべきだ。
最近25年間、日本経済は低迷を続け、世界で唯一経済成長ゼロの国になってしまった。原因は、政府がデフレ脱出のすべを知らないからである。
政府が財政支出を渋る理由は、財務省の誤った財政均衡論にはまっているからである。財務官僚は、御用学者やジャーナリストに飴玉を与えて緊縮財政論の大合唱をさせている。
国の借金(財政赤字)が1000兆円もあり、いずれ財政が破たんすると脅かし、国民の99%の洗脳に成功した。なぜこんなことになってしまったのか。
次項の「日本の現状」に掲げた三つの図を見れば、25年間にわたる政府の緊縮財政政策がいかに日本を壊してきたか、そして、これからどうしたらよいか一目瞭然である。
最近25年間、日本経済は低迷を続け、世界で唯一経済成長ゼロの国になってしまった。原因は、政府がデフレ脱出のすべを知らないからである。
デフレ期には、政府が率先して財政支出をし、需要を創出して、民間活力を誘発すれば日本経済は元気になる。
25年前、中国は日本の五分の一だった国民総生産(GDP)を、今では2.9倍に伸ばしている。アメリカは日本の1.6倍から、25年後は4.2倍になった
世界の多くの国で、財政支出の伸び率と経済成長率は、ほぼ比例する事実が確認されている。
IMFの資料から三橋貴明氏が作成した左図のとおり、2019年対2001年比で、各国の政府支出とGDP の伸び率はほぼ比例している。
中国は10倍を超えているので、省略した。
日本が、図の原点近くにいるのが痛々しい。
③日本の実質賃金は長期間減少している
日本の実質賃金は、1997年の橋本緊縮財政から20年以上長期間減少している。
25年間ゼロ成長の帰結ではあるが、分配にも問題がある。
資本金10億円以上の企業の、同期間の数値を見ると、株主配当金6倍、企業利益3倍、売上1倍、設備投資0.98倍、従業員給与0.96倍となっている。国民は株主資本主義の犠牲者だ。
3.日本の問題点 前項の日本の現状からみた日本の問題点は下記である。
①国力の衰退=国際的発言力、外交力低下
②貧富の格差拡大=社会の分断、二極分化、国民の幸福度低下、テロや自殺の多発
③人口減少=人口減少はゼロ成長の原因ではなく、結果である
➃安全保障危機=日本はアメリカの属国だが、中国の属国になる可能性もある
4.処方箋1:誤った貨幣観の是正、財政破綻論のウソを検証
①国債は貨幣
国債発行は、政府の貨幣発行であって、国の借金でも次世代へのツケでもない。企業や家計の借金と違って、返す必要はなく借り換えればよい。
➁貨幣は信用創造
国債の原資は、民間の貯蓄ではない。金本位制の時代と違って、現在は、民間貯蓄などのプールから借りるのではなく、無から信用創造している。だから企業や家計と違って、国債発行の限度はない(万年筆マネー、キーボード・マネーという)。貨幣プール論は誤り。
③財政赤字は民間の黒字
政府の財政赤字=民間の黒字。政府の赤字(1,100兆円)を削減すると、民間の黒字(1,900兆円)が同額減少し、国民が貧乏になる。
➃MMT・現代貨幣理論 (理論となっているがイデオロギーではなく事実の表明)
自国通貨建ての国債(貨幣)を発行できる政府は、過度のインフレになるまで、財政赤字を気にせず、国債を発行して財政拡大できる。通貨を発行できる政府は財政破綻しない。
5.処方箋2:積極財政への転換
①デフレは総需要の不足。
デフレ期には政府が率先して財政拡大と減税により需要を創出せよ。国民の所得が増え、企業が投資を始め、国家の体力(生産力)がつく。デフレ期に、消費税増税や構造改革などのインフレ政策をやってはダメだ。
日本が元気になれば、「老後資金不足2000万円問題」などは胡散霧消する。また、若者が将来もらえる年金額の心配をしなくても済む。
②インフレは総需要の過剰または供給不足。
インフレ期は政府が緊縮財政や増税により需要を抑制せよ。過度な物価上昇や金利上昇を防げる。名目経済成長率5%、インフレ率2%くらいの高圧経済が長く続く日本を取り戻そう。
③PB黒字化を政策目標にするのは重大な誤り
財政再建は、経済成長の余禄で可能になるもの。「基礎的財政収支(PB)黒字化」目標は、経済成長を阻害し財政収入を縮減して、永遠に達成できない目標になる。経済成長なくして財政再建はない。また、積極財政で国力が増強すれば、円安の是正につながる。
政府は、骨太の方針からPB黒字化目標を削除し、政策の失敗を認めて国民に謝罪せよ。
6.処方箋3: 経済成長戦略の再構築
①予算は単年度主義から長期投資計画へ
国土強靭化など、10年程度の長期投資計画を作成せよ。政府が店じまいし、国にしかできない役割を怠ってはならない。政府が長期の投資先と規模を公表すれば、民間の投資が活発になる。
➁教育費は人への投資であって、単なる費用ではない。0~18才までの教育費全額と、大学生の学費の半額は、教育国債で賄うべきだ。投資をケチり、財源論で足を引っ張るのは罪悪だ。
③実質賃金を高めて少子化を止める
少子高齢化が経済衰退の原因ではない。正しい財政、金融政策で非正規雇用を減らし、若者の実質賃金が上昇すれば、婚姻数が増加し、少子化は止まる。まずは、国家、地方公務員の正規職員を大幅に増やそう。
④地球環境問題
日本が経済成長をする国になり、GDPが増えれば地球環境破壊のCO2も増えてしまうという議論もあるが、増えた所得の一部を、環境保護の技術開発や途上国の支援に充当すればよい。
7.経済産業審議会の「経済産業政策の新機軸」発表は日本の希望
(経産省から反緊縮、反構造改革ののろしが上がった)
目的:中長期の社会・経済の課題解決(ミッション志向)
理論的根拠:
①政府による市場の創造、
②政府もリスクを負う企業家国家になる、
③民間投資を呼び込む政府資金を出す(ワイズスペンディング)
昭和の伝統的産業政策は、中規模、中期であった
平成の構造改革アプローチは、小規模、単発、短期であった
これからは、令和の「経済産業政策の新機軸」は大規模、長期、計画的にする
①低インフレ、低金利下では 財政が重要、
②マイルドなインフレによる高圧経済、
③税は、財源としてではなく、ミッション志向で 格差是正を
参考コラム 斎藤幸平著・人新世の「資本論」について
人新世の「資本論」要約
現在の「資本主義」経済システムは、利益のみを追求する資本の論理によって、地球環境を破壊し、貧しい労働者を大量に生み出し、一握りの富裕層に富を集中するシステムになっている。
そこで、人間誰もが必要とする水道、電力、住宅、医療機関、教育施設などを共有財産にして、人々の手で管理し、無償・安価に提供する「コモン」化が必要だと考えている。
コモン化によって経済をスローダウンさせ、地球にやさしい、潤沢な脱成長経済を実現したい。
筆者の意見
1.脱経済成長を言うなら、国連主導の国際的な取り組みでなければならない。一国だけ先行して脱成長では支障が出る。
2.地球環境を言うなら、コモン化でなくても、経済成長の成果の一部を環境保全に回せば済む話である。
3.日本は四半世紀にわたって、図らずも世界で唯一、脱経済成長を実現したが、これは政府が貨幣観と財政政策を間違えた結果であって、PB黒字化目標を廃止し、積極財政に転換すれば簡単に経済成長路線に戻れる。