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脱グローバリズム① 売国と廃国を許すな [脱グローバリズム]

1.グローバリズムの構造

 

経済のグローバル化は、「モノ」「サービス」「ヒト」「カネ」が国境を越えて自由に移動する自由貿易を指向する。政府による産業保護、経済活動の規制が非効率の源泉であるとして、構造改革、規制緩和を推進し、「小さい政府」が最良と称している。

規制緩和は産業保護をはぎ取って、過当競争を生み、国内産業を疲弊させ、勝者と敗者の経済格差を拡大させる。最後の勝者は国際金融資本だけという事態を招く。現に、アメリカなどの帝国主義国家が、軍産複合体や多国籍企業を操って、世界の富を吸い上げる戦略を実行している。売国の由縁である。

「小さい政府」は緊縮財政と親和性が高く、緊縮財政はデフレを招き、所得の中間層を減少させ、貧困層の大量発生につながっている。経済の均衡を目指すべき政府が、財政の均衡にとらわれて、デフレ期に必要な財政支出を渋り、政府の店じまいをして、廃国に向かっている。

 

グローバリズムのトリニティ(三位一体)と言われる構造をまとめると図のようになる。

 

三要素

各要素がもたらすもの

自由貿易

人、もの、カネ、サービスの自由化。新自由主義の無反省の信仰

規制緩和

構造改革、産業保護廃止、市場開放、TPPFTA締結、競争激化、売国

緊縮財政(注)

小さい政府、政府の店じまい(廃国)、格差拡大、国民の貧困化

(注)特に、デフレ時の緊縮財政政策は、経済が長期低迷し最悪の結果になる

 

2.グローバリズムの長短

下記の通り、グローバリズムにはメリットがあるが、それ以上にデメリットが容認できないほど大きくなっている。

メリット

自由貿易、国際分業による生産コスト低下、生産性の向上、

技術や文化の発展

デメリット

産業の空洞化、企業の海外移転、

雇用の喪失(日本は生産年齢人口減で、幸い人手不足)、

所得格差拡大、国民の分断、文化の衝突(地方衰退、伝統の消滅)

 

3.日本の新自由主義と構造改革の経緯

新自由主義は、競争志向の市場原理主義に基づいた、グローバルな資本主義経済体制で、小さな政府を指向する。米のレーガン大統領が採用したレーガノミックスが始まりで、日本では中曽根康弘、小泉純一郎が追随した。

 小泉純一郎元首相が「構造改革」の名のもとに、「小さな政府」、「官から民へ」、「中央から地方へ」などのキャッチフレーズを唱え、既得権の排除や規制緩和により、道路公団や郵政の民営化を断行し、経済再生を目指したが、結果は惨憺たるものになっている。

 「構造改革」の弊害として、国民生活の格差拡大、行き過ぎた市場・競争原理による拝金主義の台頭、社会保障での弱者切り捨てなどが起きた。今、「構造改革」への批判が高まり、見直しの動きが出ている。

 

4.まとめ(筆者の意見)

 

①グローバル化がピークを過ぎて、欧米ではポスト・グローバル化の動きが顕著になっているが、日本は逆行している。愚かなことだ。

 

②アベノミクスも、結局は、国民はそっちのけで、新自由主義の罠にはめられて、米国金融資本の支配に屈している。

 

コラム グローバル化歴史

 1914年をピークとする第一次グローバル化の後、現在は、1980年代に始まった第二次グローバル化が2008年のリーマンショックをピークに転換期を迎えている。(図参照) 

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脱グローバリズム② 脱・グローバリズムの動き [脱グローバリズム]

1.グローバリズムの弊害の極致

 前回の当ブログで述べたように、現在は、1980年代に始まった第二次グローバル化が、2008年のリーマンショックをピークに転換期を迎えている。

 図は、1997年を100とした、日本企業の売上高等の指数の推移(2017年まで)である。

①配当金は5.73倍に急騰。国際金融資本の圧力を受けて、従業員の給与を削って捻出した利益を優先的に株主配当にまわすという、グローバル化の帰結。

②経常利益は3.06倍。日本の将来はそっちのけで、設備投資はせず、目先の利益を増やして配当へ。

③役員給与1.3倍。アメリカの経営者ほどではないが、役員給与は手前勝手に増やしている。

④、売上高1.03倍、売上高は横ばい。世界で唯一経済成長をしない国。

⑤従業員給与0.93倍、設備投資0.64倍。人件費をケチり、生産性向上の投資はバッサリ。

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2.脱・グローバリズムの動き

 貿易は必要ではあるが、移民の増加などのグローバル化の行き過ぎで、国民の間に分断が生じ、「米国第一」のトランプ大統領出現、英国EU離脱、フランスの黄色いベスト運動などの反・グローバリズムの動きが起きている。

日本では、「令和ピボット」のような運動が始まった。経世済民の精神を放棄し、緊縮財政と「小さな政府」に固執し、日本を長期低迷に導いた現政権に対し、「反・緊縮」、「反・グローバリズム」、「反・構造改革」へと政策の転換(ピボット)を促す国民運動である。

図は、「令和政策ピボット」が作成したもので、縦軸にグローバル化と反・グローバル化、横軸に左(革新)と右(保守)を配置したマトリックスで、各政党の立ち位置をプロットした。多くの既成政党は、与党も野党もグローバル化を信奉し、規制改革、構造改革、緊縮財政政策を採用して、日本の衰退に加担している。

れいわ新選組だけが、グローバル化の行き過ぎを自覚し、反・緊縮など国民の方を向いた政策を掲げている。(なぜか日本共産党も)

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3.日本を売り渡す、構造改革に反対し、日本を取り戻そう

 行き過ぎたグローバリズムは、国民の命を守るべき「国民国家」の働きを損なってしまうものである。現に、移民法、種子法、水道法、IR推進法、漁業法など、安倍政権は、ろくな審議もせずに法改正を行った。米国などからの圧力に屈したとはいえ、国際金融資本に日本を売り払ったに等しい。

法改正の内容をもう一度見直して、過当競争を回避し、適正な賃金を払い、国民を大切にする日本を取り戻そう。

 

4.まとめ(筆者の意見)

 

①「現代貨幣理論(MMT)はデフレに苦しむ日本にとって良い解毒剤になる」と説明を受けた安倍首相は、「ふぐ料理は良い調理師でないと危険」と返したという。MMTの良さを理解していないようだ。

 

②最近の国会を見ていると、国民を代表するはずの立法府(議会)が行政府のしもべとなっている。悲惨なことだ。



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脱グローバリズム③ グローバリズムの連関図 [脱グローバリズム]

 グローバリズムが蔓延する世界の動きを述べてきたが、ここで、グローバリズムの因果関係を連関図のかたちで再確認しておこう。(下図「グローバリズムの連関図」参照

 

1.1980年代の社会経済状況

 1980年代は、米国は双子の赤字(財政赤字と貿易赤字)を抱え、英国はスタッグフレーション(インフレと不況の同居)に悩み、日本はバブルと円高圧力から、構造改革を求める声があふれていた。

 1985年のプラザ合意で、円ドルレートが1ドル360円から240円になり、一気に円高が進んだ。

 

2.グローバリズムのトリニティ

 新自由主義・市場原理主義に導かれて、自由貿易、規制緩和、緊縮財政という、グローバリズムのトリニティ(三位一体)が進行し、グローバリズムのデメリットが容認できないほど大きくなってきた。

 

3.グローバル資本主義、株主資本主義の弊害

 通貨危機やリーマンショックが発生し、デフレは深刻になった。過当競争から人々の経済格差が拡大した。短期利益を追求する株主資本主義が行き着くところまで行って、「今だけ金だけ自分だけ」という世の中になってしまった。世直しの動きが出るのは必然である。

 

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4.まとめ(筆者の意見)

 

①人はなぜ「改革という言葉」に騙されるのか。改革でコストを減らし、儲けを外国の業者に差し出すのが良いはずがない。コストは、本来、国内の「国民の所得」になるはずのものである。

 

②聖域なき構造改革とは何か。行政改革、公務員制度改革、規制改革などなど、改革の氾濫である。中身は、人員削減、予算削減、公共サービスの民営化などで、緊縮政策と新自由主義政策ばかり。 

 

③公務員たたきが激しい。地方公務員も含めて過剰で無駄だという。本当だろうか?公務員比率中国45%、米国27%、ドイツ21%、日本11%。災害時には国民の命を守る存在を邪見にすべきではない。

 

④大企業のトップが、政府の諮問会議の委員になって、規制緩和を叫び民営化を果たして、自社の利益を増やすのは紛れもなくレントシ―カ―(利益誘導)である。

 

⑤安倍首相はかつて「国境にこだわる時代は終わった」と発言された。グローバリズム信奉者の発言であり、すぐに考え方を改める必要がある。



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脱グローバリズム④ 脱・グローバリズムの連関図 [脱グローバリズム]

 前回は、グローバリズムが世界に蔓延する道筋を述べた。ここで、脱・グローバリズムの動きと処方箋について連関図のかたちで再確認しておこう。(下図「脱・グローバリズムの連関図」参照


1.グローバル資本主義、株主資本主義の弊害


 通貨危機やリーマンショックが発生し、デフレは深刻になった。過当競争から人々の経済格差が拡大した。短期利益を追求する株主資本主義が行き着くところまで行って、「今だけ金だけ自分だけ」という世の中になってしまった。世直しの動きが出るのは必然である。


2.脱・グローバリズムの動き


 貿易は必要ではあるが、移民の増加などのグローバル化の行き過ぎで、国民の間に分断が生じ、「米国第一」のトランプ大統領出現、英国EU離脱、フランスの黄色いベスト運動などの反・グローバリズムの動きが起きている。日本では、「令和ピボット」のような運動が始まった。


3.日本を売り渡す、構造改革に反対し、日本を取り戻そう


 行き過ぎたグローバリズムは、国民の命を守るべき「国民国家」の働きを損なってしまうものである。現に、移民法、種子法、水道法、IR推進法、漁業法など、安倍政権は、ろくな審議もせずに法改正を行った。米国などからの圧力に屈したとはいえ、国際金融資本に日本を売り払ったに等しい。


法改正の内容をもう一度見直して、過当競争を回避し、適正な賃金を払い、国民を大切にする健全な国民国家を取り戻そう。


4.多国間連携の再構築


 健全な国民国家が取り戻せたら、その先は新しい「多国間連携」である。米国のような覇権国家が、「米国第一」を唱えながら、恣意的、利己的に世界を仕切るのはいただけない。地域連合と世界政府が正しく機能する、新しい統治機構を構想する時期が来ている。(当ブログ「世界政府」参照)


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5.まとめ(筆者の意見)


①多国籍巨大企業が、国家の上にのしかかってきて、国家が、国民よりも「市場の力」に主権を奪われるのは納得できない。


②エリート層の劣化で、統治能力が危機に瀕している。節度ある、健全な民主主義を取り戻そう。


③日本は昔、貿易立国と言われていたが、現在、輸出、輸入ともGDP17%程度で、貿易依存度は決して高くはない。もっと内需を活性化し、経済成長をする余地がある。


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脱グローバリズム⑤ 水道民営化に反対しよう [脱グローバリズム]

 前回まで、脱・グローバリズムの動きとその対応策について考えてみた。総論を終えて、個別の施策を取り上げてみよう。堤未果著「日本が売られる」を参考にした。

 

1.世界的な水道民営化の経緯

 水道民営化は、1980年代、「新自由主義の父」と呼ばれたシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授から始まった。教授の愛弟子であったサッチャー元首相がイギリスに水道民営化を導入した。

 1990年代には、世界銀行やIMF(国際通貨基金)などの国際金融機関が、水道民営化を債務国への融資条件にしたことから、先進国と途上国の両方に拡大し、本格化していった。

2005年頃をピークに減少に転じたが、かなしいかな、周回遅れで追随したのが日本である。

 

2.水道民営化のスローガン

「民間企業のノウハウを活かし、効率の良い運営と安価な水道料金」という、聞こえの良いスローガンが掲げられた。

 

3.水道民営化の問題点

 ①民間企業の競争による効率向上と言っても、それは入札時のみ。あとは一地域一社独占の運営で、巨額な経営者報酬や株主配当のための利益優先の経営が続く。

 ②公営から企業運営になった途端に、水は「値札の付いた商品」になり、料金の値上げが始まった。代表的な事例として、イギリスは25年間で水道料金が3倍になった。

 

4.水道民営化の失敗事例

 ①水道料金高騰や、サービス・水質低下などの理由で、2000年以降、世界37か国235都市が、一度民営化した水道事業を再公営化に戻した。

 ②再公営化の際、莫大な違約金を請求され、納税者につけが回された。

 

5.周回遅れの日本の水道民営化

 日本は、周回遅れで欧米に追随し、下表のように水道民営化を推進した。国際金融資本の恫喝に屈したとはいえ、誠に拙劣な選択をしてしまった。いま、見直しを迫られている。

 

推進人(戦犯)

水道民営化の内容

竹中平蔵

経産大臣

(当時)

小泉政権で最初に民営化を唱えた立役者で、公共インフラの運営権を民間企業に売却(コンセッション方式)。

自治体には施設所有権を残し、老朽化や災害時の復旧を義務付け。

麻生太郎

副総理

2013年、米シンクタンクの会合で、水道の民営化・バーゲンセールを約束する演説を行った

橋下徹

大阪市長

(当時)

2014年、橋本大阪市長(当時)は、水道事業の運営権を民間企業に売却する方針を発表。市議会議員の反対にあい、地方議会の承認権を剥奪した。

浜松市長

(当時)

2017年、日本で初めて下水道運営権を仏ヴェオリア社に売却(20年契約)。熊本県合志市、栃木県小山市が続く。

安倍晋三

首相

2018年、2日の審議を経て「水道法改正案」衆院で強行採決。条文を「公正妥当な料金」から「健全経営のための公正な料金」に変更したが、マスコミも国民も気づかず。30兆円の価値を持つ日本の水道資産が外資に売られた。

 

6.まとめ(筆者の意見)

 

①日本のような災害大国では、国民の命にかかわる水道事業の民営化はやってはいけない。



②グローバリズムの対極は国民国家主義である。ゆるやかな規制(保護)と連帯による、横のナショナリズムが機能する国民国家が、平和で住み良い国家である思う。


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脱グローバリズム⑥ 「種子法」を取り戻そう [脱グローバリズム]

 前回は水道民営化の問題を解剖したが、今回は「種子法廃止」が日本の経済・社会に何をもたらすか考えてみよう。

 

1.「種子法」は食の安全保障

 1952年、「主要農作物種子法」が導入された。日本の主食である「コメ・麦・大豆」という3大農作物の「種子」の安定的な生産と普及を目指した法律である。

コメを例にとると、自治体の農業試験場が原種を栽培し、種子栽培農家で手間暇かけて栽培され、JAに集められ、「公共種子」として安定価格で一般農家に供給されてきた。この結果、奨励品種だけで300種以上のコメが「日本人の公共資産」として受け継がれてきたのである。

 地味な「種子法」だが、日本人の食の安全保障にとって、極めて重要な法律であった。

 

2.種子法廃止の経緯

2016年、内閣府の「規制改革推進会議」は「民間の品種開発意欲を阻害している『種子法』を廃止する」と決めた。そして、2018年、国会は大した議論もなしに「種子法の廃止」を議決した。

 

「種子法廃止」のとってつけたような理由は下記とされている。

①岩盤規制の緩和・撤廃による競争力強化

②現行の「奨励品種制度」が民間参入の邪魔

③都道府県の「育成品種」の優位をなくす

④都道府県の種子事業への負担を減らす、(廃止せずとも対策はある)

 

結局、種子事業を民営化して、「国産種子・農民種子」を国際多国籍企業が開発した「特許種子」に置き換える企みであった。

 

3.「種子の開発データ」の解放圧力

政府は、2017年、「良質かつ低廉な農業資材(種子を含む)の供給に関する施策」と銘打って、「農業競争力強化支援法」を制定した。

条文には、民間事業者が行う種子の技術開発、新品種育成を促進するため、都道府県が有する「種苗の生産に関する知見」を民間事業者に提供するという規定も入っている。

自治体が、長年蓄積してきた「種子の開発データ」を無料で民間企業に公開する羽目になったが、驚いたことにほとんど議論もなかったという。

 

4.規制改革推進会議 農業ワーキンググループ

 内閣府から指名されて農業分野の「規制改革を推進した」メンバーは下記。

(委員)太田ひろ子(議長)、金丸恭文(議長代理)、飯田泰之(座長)、新山陽子、林いづみ

(専門委員)斎藤一志、白井裕子、藤田毅、本間正義、三森かおり

(事務局)窪田規制改革推進会議次長、他

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

①「種子法廃止」は、モンサント社(現バイエル)など、ハゲタカ巨大企業の市場開放要求に屈した代表事例である。

 

②「農業競争力強化支援法」の制定は、農業所得の向上や、農業の競争力強化という美名のもとで、農業資材を扱う地場産業を衰退させ、地方を切り捨てる政策であった。

 

③「種子法廃止」は、TPP(環太平洋経済連携協定)の一環として進められた面もある。関税の撤廃により米国などから安い農作物が流入し、日本の農業に壊滅的なダメージを与える恐れがある。


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脱グローバリズム⑦ 米国アグリビジネスの脅威 [脱グローバリズム]

1.米国アグリビジネス開発の経緯

 1970年代の石油危機の際に、米国の穀物商6社が大儲けした。これに味をしめ、キッシンジャー元国務長官の支援を得て、米国の農業をアグリビジネスにするプロジェクトを立ち上げた。

 米国では、1996年から、遺伝子組み変え種子の商業利用が始まり、大豆・綿花・トウモロコシの9割以上が遺伝子組み替え種子に置き換わってしまった。

 

2.遺伝子組み換え種子の脅威

 業界最大手のバイオ企業・米モンサント社(独バイエル社が買収)は、除草剤・「グリホサート」(商品名ラウンドアップ)を開発した。さらに、自社の農薬(ラウンドアップ)だけに耐性を持つ遺伝子組み換え種子を開発し、種子と農薬をセットで販売して大儲けをしている。

 他社の農薬を使用すると苗が枯れてしまうので、農家はモンサントの種子と農薬をセットで購入するほかに選択肢を持たない。

年々、雑草が耐性を持ち、ますます強い農薬を使う羽目になり、特許使用料を延々と払わされることになる。そして、悪循環の末農地が荒廃し、農民はタダ同然で農地を手放し、期せずして農地の大規模化が進むことになる。

 

3.残留農薬による薬害

 グリホサートの蓄積は、がん、白血病、肝臓病、アレルギー、奇形の発生などの健康リスクがあるとする報告もある。2016年、欧州委員会はラウンドアップの使用延長をしないと決定した。そんな中で、日本政府はアメリカ産輸入大豆のグリホサート残留基準を5倍に引き上げた。

 

4.世界の失敗事例

 米国アグリビジネスの巧妙な手法によって、インド、イラク、アルゼンチン、メキシコ、ブラジル、オーストラリアなどの農業がバイオ企業の軍門に下った。自然災害に付け込まれて、「復興支援」の名のもとに遺伝子組み換え作物に転換させられた国もあった。

 大規模農場で、最新農機具やドローンなどを使えば、農薬散布などに人間の労働力は要らなくなる。農民は土地を失い経済難民となって、都市のスラムに流れていくことになる。

 

5.日本農業の行く末

手の内を知られて苦戦しているバイオ企業が、日本に狙いを定めてきた。日本の農家は、遺伝子組み換え種子と、それとセットになった農薬の購入を毎年強いられ、いずれ大量の農薬に汚染された国土を前に立ち尽くすことになりかねない。

 ほくそ笑むのは、おいしいところを攫ってゆくグローバル多国籍企業で、新自由主義に基づくグローバリズムの行き着く先である。

 良い動きもある。新潟県、兵庫県、埼玉県、北海道、長野県のように、独自の種子条例を作って、廃止された種子法を元に戻そうと活動している自治体があるという。心強いことだ。

 

6.まとめ(筆者の意見)

 

①トランプ大統領は、TPP(環太平洋経済連携協定)から離脱した。まもなく、日米FTA交渉が始まるが、農業分野でもTPPを超えた厳しい要求をしてくのは間違いない。安易な妥協をしてはならない。

 

②「遺伝子組み換え食品」の表示については、「食品表示法」により、表示が義務付けられている。日本は、「非遺伝子組み換え食品」が意図せずに混入した場合、5%以下なら表示義務がない。EUでは、表示義務免除は0.9%以下となっていて厳しい。

 

③遺伝子組み換えの餌を食べて育った家畜の肉、卵、牛乳などの畜産品には表示義務がない。また、遺伝子組み換え大豆から作る味噌にはあるが醤油にはない。これで大丈夫だろうか。

 

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脱グローバリズム⑧ ミツバチの大量死 [脱グローバリズム]

1.害虫駆除薬・ネオニコチノイド

 ネオニコチノイドは、害虫駆除を目的にしたいくつかの商品の総称で、「害虫だけに毒になり、人間には安全」な「夢の農薬」と謳われて市場に登場した。

 その効き目は抜群で、水によく溶け、土に染み込み、一度撒くと長期間土壌に残留し、虫の神経に作用する毒性を発揮し続ける。

 

2.ミツバチの大量死

 農作物の7割はミツバチが授粉していると言われており、農業にとって大事な役者であるが、世界の各地でハチが姿を消していると報告されている。

 ニコチンに似た神経毒を持つネオニコチノイドが、虫の神経を狂わせ、方向感覚を失って巣に戻れなくなるらしい。

 巨大な農薬メーカーが、毎年何千万ドルもの札束で、政治家やマスコミを操っているようだ。

 

3.「夢の農薬」に対する世界の動き

 2008年にEUは、害虫駆除薬・ネオニコチノイドを認可したが、メーカーである「バイエル社」の資料を鵜呑みにしたようだ。

2013年に「子供の脳や神経への毒性がある」との科学的見解が出されたため、一部禁止とし、のち2018年に全面禁止にした。スイス、韓国、オランダなどもこれに続いた。

実は、もっと素早く対応した国がフランス、ドイツ、イタリアであった。2008年頃、養蜂家たちの働きかけもあって、使用、販売を禁止した結果、ミツバチの大量死がぱったりと止まったという。

 

4.「夢の農薬」に対する日本の問題

日本は、害虫駆除薬・ネオニコチノイドを、田んぼや野菜、果物の畑に大量に使っている。面積当たりの使用量で言うと、中国、韓国に続く第3位の農薬使用大国である。

 農薬使用量の多い韓国と日本は、「自閉症+発達障害」の罹患率が、他国に比べて倍近く高いというデータが報告されている。(中国のデータは不明)

 2013年には群馬県で、ネオニコチノイドの空中散布後に、大勢の子供が体調不良で病院に運ばれる事件があった。

 

5.「夢の農薬」に対する日本の対応

 2010年、日本農業新聞が、全国でミツバチの死骸からネオニコチノイド農薬が検出されたと、記事に書いたが、日本政府は、「ミツバチ大量死の原因はストレス」と結論を出した。

 2013年、日本政府はほうれん草、白菜、カブなど40種類の食品について、ネオニコチノイド系農薬「クロチアニジジン」の残留農薬基準値を最大2000倍に引き上げた。2015年から2017年にかけても、登録追加や残留基準緩和をしていて、規制緩和を見直す動きはない。

 

6.ネオニコチノイド系農薬の残留農薬基準値

厚労省は、農薬の残留農薬基準を公表している。ネオニコチノイド系農薬のうち、クロアチニジンの残留農薬基準は下表(代表作物の例)。

 

作物

PPM

作物

PPM

作物

PPM

作物

PPM

作物

PPM

みかん

1

りんご

1

いちご

0.7

ぶどう

5

トマト

3

玄米

1

小麦

0.02

大豆

0.1

白菜

2

501

 

7.まとめ(筆者の意見)

 

①情報化のご時世だから、ミツバチが消えたら、ロボットミツバチで代用という声がある。それでよいのだろうか。

 

②カメムシが稲穂を吸うことで、コメに「黒い点」が付き、「斑点米」として等級が下がる。これを防ぐために、農家はネオニコチノイド系農薬を何度も使って、残留農薬の高いコメを生産しているのが実情である。斑点米の混入率をある程度許容するなど、消費者の「常識の見直し」が必要と思う。

 

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脱グローバリズム⑨ 酪農産業の命運 [脱グローバリズム]

1.牛乳・乳製品の需要と供給

 日本の牛乳・乳製品の需要量と生産量(2015年度)は下記の通り。 

 

国内総需要量

国内生乳生産量

輸入量(生乳換算)

1,189万トン

761万トン(64%)

432万トン(36%)

 

 

 

国内生乳生産量

飲用等向け

乳製品等向け(生乳換算)

761万トン

401万トン(53%)

360万トン(47%)

 

なお、乳用牛飼育農家は 17.7万戸、乳用牛飼育頭数は 137万頭。

 

2.牛乳・乳製品自給率は642015年度、日本乳業協会)

 生乳(牛乳)は100%国産で、チーズなどの乳製品を含めると自給率は64%程度になる。なお、飼料は輸入が多いので、飼料自給率42%を加味したカロリーベースの自給率は27%程度である。

64% X 42% = 27%)

 

3.乳製品の関税引き下げ

 2018年、日欧EPA交渉で日本は関税を大幅に引き下げた。特にチーズなどの乳製品については、国産を守る気が全くなかった。

生乳の消費量は夏に多く、冬に少ない。余った生乳はバターや脱脂粉乳などの乳製品に回したいが、関税を下げて乳製品の輸入が増えると、国産の生乳の自給調整が難しくなる。

そのうえ、まもなく始まる日米FTA交渉で、日欧EPA交渉結果を超える厳しい要求をしてくのは間違いない。乳用牛飼育農家のさらなる大幅減少は避けられない。

 

4.酪農家を守らない日本

 世界の酪農市場を見ると、価格競争力のトップはニュージーランドで、これと競争するため、フランスの農家は収入の9割、ドイツは7割を政府が補助している。

 一方、日本の農家は、収入のうち政府の補助金は4割弱である。農家の所得を補償する補助金制度は、民主党政権時代に始まったが、安倍政権になって半減し、2019年にはゼロになってしまった。 

 

 餌の値上がりも深刻だ。飼料畑を畜舎に変えて、飼料は輸入に頼る政策に転換した結果、アメリカのトウモロコシに依存することになり、飼料価格は2004年から10年で3倍に上昇、アベノミクスで加速した円安のダメージが重なり、酪農家の倒産が多発した。

 

5.グローバリズムの農協潰し

2017年、「改正畜産経営安定法」が施行され、農協が酪農家から生乳を全量買い取る「指定団体制度」が廃止された。日持ちのしない生乳を乳業メーカーに買いたたかれないよう、間に入っていた農協を政府が排除したことになる。

 グローバリズムの権化である規制改革委員会(当時の委員長・宮内義彦オリックス会長)が、構造改革の名のもとに農協潰しを図ったのである。

 

6.成長ホルモン入り乳製品

 アメリカは、1993年から乳牛に「遺伝子組み換え成長ホルモン」を投与し、乳量を3割増やすことに成功した。1998年に、このホルモンはがん発症率を上げるという論文が出ると、全米で反対運動が興った。カナダやEUは、この成長ホルモン入り乳製品の輸入を拒否している。

 日本は成長ホルモン入り乳製品の輸入を、毅然として拒否できるか疑わしい。日米FTA交渉の行方を注視する必要がある。

 

7.まとめ(筆者の意見)

 

①「科学的に健康被害が証明できないなら、輸入禁止は認められない」と、アメリカがWTOに提訴し、WTOは違反判決を出した。WTOが大国の圧力に弱いのは問題だ。「予防原則」を重用しよう。

 

②酪農産業をグローバリズムの餌食にしてはいけない。規制改革の本質的見直しを願う。

 

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脱グローバリズム⑩ 土地が売られる [脱グローバリズム]

1.農地法改正で外国企業にも開放

 2009年、一般企業も農地が借りられるようにする法改正が行われた。ただし、所有権は従来通り農業法人に限定する建前であった。

 2015年、安倍政権は、「日本を世界一ビジネスしやすい国にする」という目標を掲げ、農林水産業を成長産業にするという「日本再興戦略」を閣議決定した。

 これで、外国企業にも農地取得の道を開いた。

 

2.土地・農地は安全保障の重要な資産

 農地は単なる土地ではない。領土であり、水源であり、環境保全のための資産であり、国の安全保障の重要な資産である。

 2018年、参議院農林水産委員会で、「外国人が日本の農地を所有することの問題」を指摘され、斎藤農林水産大臣は、「外国法人の流入はない」と反論した。

 

3.中国の野望と各国の対応

 食料も水も不足が深刻な中国企業による農地の買い占めが、世界の脅威になっている。遺伝子組み換え作物の輸出で莫大な利益を上げる米国アグリビジネスを手本にして、急激に後を追い上げている。中国政府のお墨付きを得て、中国企業は世界各地で農地買収を推進中である。

 

 フランスのマクロン大統領は、外資による農地の買い占めを規制する方針を発表した。ブラジルも「外国人土地規制法」を進めている。オーストラリアでは、買い占めた土地でぶどうを栽培し、「オーストラリア産ワイン」として中国人に販売している。

 農地を買った中国企業は、労働者も流通も消費者も垂直統合し、全てセットで商売にするので、現地には金が落ちない。

 

4.北海道と沖縄が危ない

 2016年、日本で買われた土地面積は202ヘクタールで、前年比3倍となった。ほとんどが北海道の森林である。水源を占有されたら問題が起きかねない。

沖縄でも、国が借り上げている米軍用地の10%が中国資本の所有だという。日本の防衛ラインが棄損しかねない。

 

 日本で土地を買うとおまけがいろいろついてくる。法人を設立してスタッフを置けば、「管理者ビザ」がおり、10年たてば、永住権が取得できるという。

 外国人の土地購入は安全保障上の問題があるにもかかわらず、日本政府の反応は鈍い。

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

TPP11の付属書「投資・サービスに関する留保」の中に「土地取得の禁止・制限」条項があるが、相互性の但し書きがあって、禁止・制限は効かない。TPP11の発効で土地の市場開放は止められない。

 

②「アイヌ新法」の成立で、アイヌの権利保障が進んだが、北海道の土地が外国資本にわたって、日本の主権・領土が侵されなければよいが、心配だ。

 

コラム 日本は、コロナ危機からどう脱出するか

 

 新型コロナウイルスが猛威を振るっている。「コロナ」は「クルナ」で、人の交流を妨げ、分断まで生じている。日本は、コロナ危機からどう脱出したらよいか考えてみよう。

 

1.防疫管理体制の充実

 安倍政権の方針の揺らぎや、ちぐはぐな施策について批判が高まっている。経済は取り戻せるが、人命はかけがえがない。入国制限や非常事態宣言の発出時期などについて、迅速かつ的確な運営をするため、充実した「疾病管理センター」を作ってほしい。

 

2.医療体制の充実

 治療薬、ワクチン、重篤な肺炎患者を治療する医療機器の開発には、カネに糸目をつけず、公費による投資が望まれる。病床数削減政策をやってきたが、見直すべきだ。政府の緊縮政策は悪だ。

 

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脱グローバリズム⑪ 森が売られる [脱グローバリズム]

1.森林が多く自然が豊かな日本

 日本の森林率は64%で、フィンランド、スエーデンに次いで世界3位だ。日本は、拡大造林政策を採用し、針葉樹の植林を進めてきた。

 

2.木材輸入自由化で、林業は衰退

木材輸入自由化で、輸入木材が入ってきて値段がり、林業人口が減少して、手入れをされない森林が増えてしまった。

木材自給率は2002年に18.8%まで低下した。ただし、201634.8%まで回復したが、インドネシア341%、カナダ303%には勝てない。

 

3.森林経営管理法

 2018年、国民が気づかないうちに、国の資産を売る「森林経営管理法」が議決された。「きちんと管理する気がない」と判定されると、所有者の許可なく業者が伐採して良いことになった。

 林業を大規模ビジネスにすると称して、大型機械を走らせるための巨大な林道を作り、効率を追求した結果、豪雨時に林道は崩れ、山崩れを多発することになった。森林を林業ビジネスの商品としてしか見ない愚かな政策がすすめられてきた。

 

4.バイオマス発電事業

 林業に企業のノウハウを取り入れると称して、くだんの「規制改革推進会議」は、木材チップを使うバイオマス発電事業に目を付けた。

 国際資本の仏ヴェオリア社と提携して、バイオマス発電事業を全国展開していたオリックスが優遇を受けたのは当然。なぜなら、規制改革委員会の委員長が宮内義彦オリックス会長であったから。

ここにも、新自由主義・グローバル資本主義が日本に深く浸透している姿がみられる。

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

①「森林経営管理法」の審議資料に「8割の森林所有者は経営意欲がない」とあったが、もとのアンケートに「経営意欲」に関する項目はなかった。目的ありきで資料を改ざんする官僚の体質はひどい。

 

②秋田県の「大館曲げわっぱ」は樹齢110年以上の杉材を使うという。森林経営管理法の改正で「樹齢55年以上の木はすべて切る」となった。地場産業を潰し、巨大企業に寄り添う政策は疑問だ。

 

コラム  コロナ危機後、日本復活のシナリオ

 

日本は、30年間にわたる誤った緊縮財政政策のおかげで、劣等国に転落した。プライマリーバランス黒字化という財政均衡主義ではなく、経済均衡政策こそ目指すべきだ。民間が委縮しているデフレ期に、財政支出を拡大して民間活力を引き出すのは、政府にしかできない仕事である。論拠は下記。

 

1.財政破綻論は財務省の悪質なプロパガンダ

 ①自国通貨建てで国債が発行できる国は財政破綻しようがない

 ②赤字国債の発行は、政府の貨幣発行であって、国民の借金ではない。それどころか、国民の所得や貯蓄の増加になる。(政府の赤字=民間の黒字)

 ③赤字国債の発行限度は、唯一、インフレ率(2~4%)である。

 ④税の機能は、過度のインフレ時のブレーキ役と所得再分配役でる。税は、財源として必須ではない。

 ⑤政府の借金は国民負担ではない。借金は借り換えで凌げる。好況時、税の自然増収や累進課税で政府の借金を減らすのは構わない。GDPの増加分を、民間と政府が分け合うことになる。

 

2.政府は、政府にしかできない役割を果たせ。5%経済成長も夢ではない。

 ①デフレ期には、国債を発行して大胆な財政支出をせよ。公共投資、防災減災投資、人材開発投資、基礎技術投資を積極的に主導して、民間投資を誘発せよ。

 ②消費税をゼロにせよ。消費税は、GDP6割を占める消費への罰金である。福祉財源は別にある。

 ③次世代通信規格の5G、コロナ危機対応などの施策には、国が直接関与を強めよ。日本の補助金行政は不十分で、社会主義現代化強国を目指す中国に負けて、属国にされてしまう。

 

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脱グローバリズム⑫ 海が売られる [脱グローバリズム]

1.漁業権の民間開放

 2016年、地元の漁業協同組合が管理する漁業権を民間に開放する、いわゆる構造改革が始まった。政府の規制改革推進会議の意向に沿った、規制緩和に忠実な人々が厳選されて、ワーキンググループが立ち上げられた。日本の漁業の衰退は漁船の老朽化と、漁業者の老齢化だと決めつけ、民間資本を導入して漁業を成長産業にするという触れ込みである。

 

2.水産特区の失敗

 宮城県に設置された「水産特区」は、漁港の集約、大規模化、株式会社化を目指し、現場漁業者や組合の反対を押し切って強引に導入された。結果、県内140か所の漁港が3分に1に減らされた。漁民は行き場をなくしてサラリーマンに転向したものも多かった。

 特区で、かき養殖を担当した会社の業績は、3千万円近い助成金を得たうえで、5年間で、5千万円近い累積赤字となった。「企業参入で活性化」からはほど遠い内容にもかかわらず、政府は強引に全国展開を進めようとしている。

 

3.海外の失敗事例

 イギリスは、漁港を集約化し、漁船のトン制限を取り去って、漁業の合理化を図ったが、近隣の大型漁船が押し寄せて、地元の漁師の大半がつぶされてしまった。これは有名な失敗事例である。

 

4.海を守る地場産業の崩壊

 漁港は漁協を中心に、地元漁業者の協働で、浜の清掃、稚魚・稚貝の放流、漁場の造成、海難事故への対応などお行い、地元漁業者の生活の場となっていた。そして、漁業権は「漁業法」で守られた来た。

 いま、その漁業権が、利益ありきの株式会社に売り飛ばされようとしている。いずれ、漁業権は入札の対象となり、大手外国企業も入札できる商品になる。こうして、地場産業は崩壊する。

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

①第一次産業を規制緩和と自由化で解体し、生産から小売りまで垂直統合するアメリカ流のビジネスモデルは、間違いなく地域の生業を破壊する。

 

80年代に経済不況から新自由主義に転向したニュージーランドでは、漁業権を証券化した政府によって、漁業はまさに「商品」にされた。グローバリズムを見直す時だ。

 

TPPが発行すると、「漁業権」は入札制になり、大手の外国企業も参加するオークションの「商品」になる。

 

コラム  コロナ危機後、日本復活のシナリオ②

 

 昨年の消費税増税とコロナ危機に見舞われて、日本は未曾有の経済危機に直面している。経済のV字回復による日本復活を果たすために、前回の当コラムで指摘した反緊縮政策とともに、下記の政策を実施したい。

 

1.脱・グローバリズムの実践

 行き過ぎたグローバリズムは、国民の命を守るべき「国民国家」の働きを損なってしまうものである。当ブログで述べたように、移民法、種子法、水道法、IR推進法、漁業法など、法改正の内容をもう一度見直して、過当競争を回避し、適正な賃金を払い、国民を大切にする日本を取り戻そう。

 

2.東京一極集中の是正

 東京一極集中は、自然災害対応を困難にし、出生率を低下させ、地方の過疎化・限界集落化につながる。緊縮政策にとらわれず、政府機能の地方移転、企業の工場移転、大学の地方分散などにより、東京一極集中を是正し、「地方創生」と「人材育成」で生産性の高い豊かな日本を作ろう。

 

3.公共サービスの充実

 国土のインフラ整備は国の仕事で、一人当たりの生産性を向上する基礎である。高速道路整備、港湾の拡充、老朽化した橋梁の補強などいくらでもある。電子決済や5Gなどの先端技術分野は、初期段階は国営にして、国が積極的に関与し、軌道に乗ったら民間に移譲するのが良い。

 

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脱グローバリズム⑬ 卸売市場が売られる [脱グローバリズム]

1.公益卸売市場の役割

 卸売市場は、食品の安全と品質を生み出す全国の生産者を守り、適正価格で消費者に提供する役割を果たす公共インフラである。生産者、卸業者、仲卸業者がタッグを組んで、日持ちのしない生鮮食品の流通を担い、人を育てるプラットフォームである。ネット社会だからと言って、簡単に中抜きを狙っていいものではない。

 

2.卸売市場法の改正

 2018年、誰も気づかぬうちに「卸売市場法改正」が参議員を通過した。公益卸売市場の民営化の始まりだ。

 政府と規制改革推進会議にとっては、第一次産業や地域経済、食の安全保障を守るより、TPP協定に従う方が急務であったのだろう。

 

3.ウォルマートの事例

 アメリカのレーガン政権時代に、ウォルマートが生産、加工、流通までを自社の傘下に入れ、価格競争にさらされた中小生産者と地方商店街がバタバタと倒産した事例がある。そこでは、受け継がれてきた文化や伝統、共同体が消滅の憂き目を見た。

 

4.公共インフラ・築地の解体を許すな

 卸売市場法改正がまもなく施行される。今まで、自治体に任されてきた中央卸売市場の開設条件が変わって、民間が参入できるようになる。次には、仲卸業者を通さない直接取引を解禁も。結果、市場は、品質は二の次で、大企業主導の価格競争の場になってしまいそう。「築地ブランド」は消え、「築地卸売市場」の公的機能が政府によって解体されてゆく。築地は豊洲に移転いたが、実態は変わらない。

 

5.まとめ(筆者の意見) 

 

①規制は民の暮らしや地方の文化・伝統を守る砦である。構造改革の名のもとに、規制緩和、自由貿易、緊縮財政を強行し、小さな政府を指向する、いわゆるグローバル化はもはや限界である。

 

②コロナ危機を契機にして、世界的にグローバル化の動きに逆風が吹いている。日本の政官産学の要人が、一日も早く、これに気づいて方向転換してほしい。

 

コラム  コロナ危機後、日本復活のシナリオ③

 

1.政府主体の技術開発事業

政府は、58日、官民共同で進めていた新型コロナウイルスの感染追跡アプリの開発について、今後は、厚労省が主導すると決めた。運用も厚労省が担うという。アプリの共通規格の使用で米社から注文を付けられたとは言え、政府主体の技術開発事業は今後の良いモデルになる。5Gや電子決済システムの統合などに応用して、技術大国日本を取り戻してほしい。

 

2.経団連に告ぐ

今の経営者は、株価、配当、内部留保、役員報酬にしか関心がない。証拠は下図の通り。日本社会を動かすリーダーとして下記事項を実践してもらいたい。

 

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①政府の財政均衡論に騙されている経営者がほとんどだ。通貨発行権のある政府の財政は、家計や企業財政とは違うことを早く気付くべきだ。

 

②消費税増税への強い関与をやめるべきだ。国民を苦しめて、法人税減税を狙うのは卑怯。

 

③労賃の安い移民を導入して、国民の実質賃金低下を策謀するのはやめるべきだ。移民頼みは悪。

 

④米国のGAFAや中国のプラットフォーマーに匹敵する国内企業を育てよ。経団連にも果たせる役割がある。

 

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脱グローバリズム⑭ まとめ [脱グローバリズム]

1.日本の新自由主義と構造改革の経緯

新自由主義は、市場原理主義に基づいたグローバル資本主義で、小さな政府を指向する。米のレーガン大統領が採用したレーガノミックスが始まりで、日本では中曽根康弘、小泉純一郎が追随した。

 

 小泉純一郎元首相が「構造改革」の名のもとに、「小さな政府」、「官から民へ」、「中央から地方へ」などのキャッチフレーズを唱え、既得権の排除や規制緩和により、道路公団や郵政の民営化を断行し、経済再生を目指したが、結果は惨憺たるものになっている。

 

 「構造改革」の弊害として、国民生活の格差拡大、行き過ぎた市場・競争原理による拝金主義の台頭、社会保障での弱者切り捨てなどが起きた。今、「構造改革」への批判が高まり、見直しの動きが出ている。

 

2.グローバリズムの弊害の極致

 現在は、1980年代に始まった第二次グローバル化が、2008年のリーマンショックをピークに転換期を迎えている。図は、1997年を100とした、日本企業の売上高等の指数の推移(2017年まで)である。

 

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①配当金は5.73倍に急騰。国際金融資本の圧力を受けて、従業員の給与を削って捻出した利益を優先的に株主配当にまわすという、グローバル化の帰結。

②経常利益は3.06倍。日本の将来はそっちのけで、設備投資はせず、目先の利益を増やして配当へ。

③役員給与1.3倍。アメリカの経営者ほどではないが、役員報酬与を手前勝手に増やしている。

④、売上高1.03倍で横ばい。世界で唯一経済成長をしない国になった。

⑤従業員給与0.93倍、設備投資0.64倍。人件費をケチり、生産性向上の投資はバッサリ。

 

3.日本を売り渡す、構造改革に反対し、日本を取り戻そう

 行き過ぎたグローバリズムは、国民の命を守るべき「国民国家」の働きを損なってしまうものである。現に、移民法、種子法、水道法、IR推進法、漁業法など、安倍政権は、ろくな審議もせずに法改正を行った。米国などからの圧力に屈したとはいえ、国際金融資本に日本を売り払ったに等しい。

法改正の内容をもう一度見直して、過当競争を回避し、適正な賃金を払い、国民を大切にする日本を取り戻そう。

 

4.多国間連携の再構築

 健全な国民国家が取り戻せたら、その先は新しい「多国間連携」である。米国のような覇権国家が、「米国第一」を唱えながら、恣意的、利己的に世界を仕切るのはいただけない。地域連合と世界政府が正しく機能する、新しい統治機構を構想する時期が来ている。(当ブログ「世界政府」参照)

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

①人はなぜ「改革という言葉」に騙されるのか。改革でコストを減らし、儲けを外国の業者に差し出すのが良いはずがない。コストは、本来、国内の「国民の所得」になるはずのものである。

②聖域なき構造改革とは何か。行政改革、公務員制度改革、規制改革などなど、改革の氾濫である。中身は、人員削減、予算削減、公共サービスの削減など、緊縮政策と新自由主義政策ばかり。 

③公務員たたきが激しい。地方公務員も含めて過剰で無駄だという。本当だろうか?公務員比率中国45%、米国27%、ドイツ21%、日本11%。災害時には国民の命を守る存在を邪見にすべきではない。

④大企業のトップが、政府の諮問会議の委員になって、規制緩和を叫び民営化を果たして、自社の利益を増やすのは紛れもなくレントシ―カ―(利益誘導)である。

⑤安倍首相はかつて「国境にこだわる時代は終わった」と発言された。グローバリム信奉者の発言であり、すぐに考え方を改める必要がある。

 

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