脱グローバリズム⑬ 卸売市場が売られる [脱グローバリズム]
1.公益卸売市場の役割
卸売市場は、食品の安全と品質を生み出す全国の生産者を守り、適正価格で消費者に提供する役割を果たす公共インフラである。生産者、卸業者、仲卸業者がタッグを組んで、日持ちのしない生鮮食品の流通を担い、人を育てるプラットフォームである。ネット社会だからと言って、簡単に中抜きを狙っていいものではない。
2.卸売市場法の改正
2018年、誰も気づかぬうちに「卸売市場法改正」が参議員を通過した。公益卸売市場の民営化の始まりだ。
政府と規制改革推進会議にとっては、第一次産業や地域経済、食の安全保障を守るより、TPP協定に従う方が急務であったのだろう。
アメリカのレーガン政権時代に、ウォルマートが生産、加工、流通までを自社の傘下に入れ、価格競争にさらされた中小生産者と地方商店街がバタバタと倒産した事例がある。そこでは、受け継がれてきた文化や伝統、共同体が消滅の憂き目を見た。
4.公共インフラ・築地の解体を許すな
卸売市場法改正がまもなく施行される。今まで、自治体に任されてきた中央卸売市場の開設条件が変わって、民間が参入できるようになる。次には、仲卸業者を通さない直接取引を解禁も。結果、市場は、品質は二の次で、大企業主導の価格競争の場になってしまいそう。「築地ブランド」は消え、「築地卸売市場」の公的機能が政府によって解体されてゆく。築地は豊洲に移転いたが、実態は変わらない。
5.まとめ(筆者の意見)
①規制は民の暮らしや地方の文化・伝統を守る砦である。構造改革の名のもとに、規制緩和、自由貿易、緊縮財政を強行し、小さな政府を指向する、いわゆるグローバル化はもはや限界である。
②コロナ危機を契機にして、世界的にグローバル化の動きに逆風が吹いている。日本の政官産学の要人が、一日も早く、これに気づいて方向転換してほしい。
コラム コロナ危機後、日本復活のシナリオ③
1.政府主体の技術開発事業
政府は、5月8日、官民共同で進めていた新型コロナウイルスの感染追跡アプリの開発について、今後は、厚労省が主導すると決めた。運用も厚労省が担うという。アプリの共通規格の使用で米社から注文を付けられたとは言え、政府主体の技術開発事業は今後の良いモデルになる。5Gや電子決済システムの統合などに応用して、技術大国日本を取り戻してほしい。
2.経団連に告ぐ
今の経営者は、株価、配当、内部留保、役員報酬にしか関心がない。証拠は下図の通り。日本社会を動かすリーダーとして下記事項を実践してもらいたい。
①政府の財政均衡論に騙されている経営者がほとんどだ。通貨発行権のある政府の財政は、家計や企業財政とは違うことを早く気付くべきだ。
②消費税増税への強い関与をやめるべきだ。国民を苦しめて、法人税減税を狙うのは卑怯。
③労賃の安い移民を導入して、国民の実質賃金低下を策謀するのはやめるべきだ。移民頼みは悪。
④米国のGAFAや中国のプラットフォーマーに匹敵する国内企業を育てよ。経団連にも果たせる役割がある。
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