憲法改正の論点 ② 憲法が目指す価値 [政治・社会]
日本国憲法において、国家権力が守るべき価値は、国民主権、基本的人権尊重、平和主義で、「日本国憲法の三大原則」と呼ばれている。
1.国民主権
日本国憲法は、前文で「主権は国民に存する」、1条で「象徴天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と規定し、国民主権を宣言している。国民主権は、基本的人権尊重と合わせて民主主義のかなめである。
2012年、自民党作成の「日本国憲法改正草案」では、国民の権利に比べて義務の記述が少ないとして、義務の規定を大幅に増やそうとしている。
一例をあげると、①すべて国民は、この憲法を尊重しなければならない。(102条)、②日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない(3条2)、③自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、公益及び公の秩序に反してはならない(12条)。
人権を認めてほしければ、まず義務を果たせと、上から国民に迫る政治家の姿勢には違和感を覚える。憲法は権力から国民の権利を守る法なので、本来、義務を規定する必要はない。これでは国民は、主人(主権者)から下僕になり下がってしまうのではないか。
2.基本的人権尊重(個人の尊重)
日本国憲法13条に、「すべての国民は、個人として尊重される」と規定されている。「個人の尊重」が最高の価値で、政府はそれを守る義務を負うわけである。
ところが、2012年、自民党作成の「日本国憲法改正草案」では、「個人」が「人」に置き変わっている。「人」となると、国家権力に支配され、奉仕する群衆のイメージで、人権尊重には遠くなる。
改憲派は、憲法は国家の基本法だから、文化、伝統、道徳、倫理などを、国の形として、憲法に書くべきだ。そうしないと「行き過ぎた個人主義」が日本を駄目にするという。しかし、愛国心や家族観は権力によって押し付けられるものではなく、自発的に湧き出すよう計らうものだ。
安倍首相は、「個人の自由を担保するのは国家である」というが、政権の危険なかじ取りで、国民の生命財産が危険にさらされるのは困る。平和外交に徹してもらいたい。
3.平和主義
憲法9条は、戦争放棄、戦力不保持、交戦権放棄をうたっていて、平和主義憲法の象徴である。生まれはGHQの占領政策の一環であるが、戦争の悲惨さを嫌というほど味あわされた日本人に受け入れられてきた。
時の多数党政権が、戦争も辞さない乱暴な国家運営をしないよう、9条が歯止めになると期待されている。安倍首相は、憲法を改正しても、「必要な自衛の措置しか我々はとらない。侵略は二度としない」と述べ、平和主義は貫かれていると主張している。本当だろうか。
筆者は、安倍首相が何と言訳しようと、集団的自衛権行使の行き着く先は、日米同盟の強化、軍備拡張競争の激化、世界で戦争ができる「好戦的な国」になると思う。
日本国憲法は、世界初の理想の憲法である。理想の旗は安易におろさず、逆に、世界に広める努力をしよう。安全保障環境がより厳しくなった現在、抑止偏重のこわもての外交でなく、交流を通じた安心供与の平和外交を進めよう。最近、韓国が北朝鮮との対話で、米朝会談をお膳立てした。韓国の太陽(対話)が、安倍首相の北風(圧力)に勝った。
4.まとめ(筆者コメント)
①戦争の惨禍を経験して、ようやく手にした国民主権は、決して手放してはならない。愛国や道徳もよいが、学校で戦前戦後の現代史をしっかりと教えるべきだ。事実ほど強いものはない。
②自民党の憲法改正草案のように、人権尊重の対象である「個人」を「人」と言い換えると、個性や多様性を軽視する思想につながってしまう。
③小田実が「お助け国家日本」がよいと提案した。日本は覇権的な大国になるより、小さくてもカワイイ国、人にやさしい国、世界中から愛される平和大国になりたい。
まとめて下さって本当にありがとうございます
書かれている事、まったくその通りです。
国民に主権があるのがおかしい!そう言う人たちが多い自民党
目指すは戦前の国家主義でしょうか
今の憲法を絶対に死守しなくてはならないほど
自民党改憲案は危ないです。
すでにその兆候は至る所に見えます。
すべて同意ですが
特に③番
人に優しい平和大国ですね。
by majyo (2018-03-17 09:51)