21世紀、日本の針路 ➉東アジア共同体の段取り [平和外交]
日本は、対米従属から脱却し、アジアに正面から向き合う新機軸の外交を進めたい。その第一歩は、東アジア共同体の推進である。東アジア共同体は、どのような段取りで実現するか考えてみよう。
1.東アジア共同体の発展段階
バラッサの経済統合論を参考に、共同体の導入ステップを、表にまとめてみた。課題はあるが、克服すればメリットは大きい。10年くらい時間をかけて共同市場まで進み、その先はさらに多くの時間をかけて交渉するのが良い。交渉の中から、東アジアの平和が育まれると思う。
NO |
発展段階 |
説明 |
課題 |
1 |
自由貿易 |
参加国相互間の域内関税を撤廃し、貿易を自由化する。 |
やむを得ず関税を残す品目があれば、各国間で誠実に交渉し、協定を締結する。粗悪品の流入には要注意。 |
2 |
関税同盟 |
上記に、非加盟国からの輸入品に共通関税をかける。 域外各国と個別の関税交渉ができなくなる。 |
グローバリゼーションの時代に、非加盟国に対し、排他的な関税政策をとると、軋轢を生む。米国が黙ってはいない。 |
3 |
共同市場 |
上記に、労働力、資本などの生産要素の域内自由移動を保障する。マクロ経済政策を統一して実行する機能も持つ。 |
人の自由移動で、難民流入が増え、円で元を支えるリスクなどの不都合が起こり得る。マクロ経済政策の統一で、各国の主権が侵される。 |
4 |
経済同盟 |
上記に、構成国間の経済政策の調整が、ある程度実施される。通貨の統一もテーマになる。 |
構成国の実力がそろわず、無理を押し付けると軋轢を生む。 財政政策の自由度が減る。 |
5 |
完全な 地域統合 |
経済、財政、金融、通貨が統合されて、一つの国のようになる。 |
このような地域統合は、まだ地球上に実現していない。 |
2.東アジア共同体の段取り
(1)政府主導のプロジェクト立ち上げ
当ブログの「東アジア共同体の歩み」で述べたように、共同体は多くの産官学の枠組みで研究され、報告されている。しかし、すでに研究段階は過ぎた。政府が本気で取り組む時期である。
(2)対中国のアプローチ
東アジア共同体の交渉において、難物は中国である。中国と交渉開始の合意ができれば、8割がた、スタートアップは完了である。日本は、中国を仮想敵とせず、交渉の本気度を態度で伝えるべきである。歴史認識や靖国問題などは、霧消するに違いない。周辺国が結束して中国に立ち向かおう。
(3)ASEAN+3(日中韓)で、まず、交渉しよう
日本は共同体の交渉で中国の圧力を緩和するため、インド、豪、ニュージーランドの力を借りようとして、ASEAN+6にこだわっていている。これは戦略ではあるが、日本の弱腰で、交渉の本格スタートを遅らせるだけである。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。
(4)アメリカの説得
日本が、アメリカを排除するのではなく、その支援を得ながら、アジアの平和的発展に、本気でコミットする決意を披露すれば、説得はできると思う。
アジアのことは日本と中国に任せてもらって、アメリカは、地域連合を束ねる世界政府のような組織の中枢を担ってもらうのがよい。この構想について、アメリカの心ある要人への根回しは必須である。
とても難しいのですが
>日本は、中国を仮想敵とせず
それが良いです。
アメリカとの関係は排除ではなくアジアは任せてもらう
そういうスタンスが良いですね
いまの日米関係の不均衡を憂いている良識派もいると思います
by majyo (2018-08-10 18:29)