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脱グローバリズム⑥ 「種子法」を取り戻そう [脱グローバリズム]

 前回は水道民営化の問題を解剖したが、今回は「種子法廃止」が日本の経済・社会に何をもたらすか考えてみよう。

 

1.「種子法」は食の安全保障

 1952年、「主要農作物種子法」が導入された。日本の主食である「コメ・麦・大豆」という3大農作物の「種子」の安定的な生産と普及を目指した法律である。

コメを例にとると、自治体の農業試験場が原種を栽培し、種子栽培農家で手間暇かけて栽培され、JAに集められ、「公共種子」として安定価格で一般農家に供給されてきた。この結果、奨励品種だけで300種以上のコメが「日本人の公共資産」として受け継がれてきたのである。

 地味な「種子法」だが、日本人の食の安全保障にとって、極めて重要な法律であった。

 

2.種子法廃止の経緯

2016年、内閣府の「規制改革推進会議」は「民間の品種開発意欲を阻害している『種子法』を廃止する」と決めた。そして、2018年、国会は大した議論もなしに「種子法の廃止」を議決した。

 

「種子法廃止」のとってつけたような理由は下記とされている。

①岩盤規制の緩和・撤廃による競争力強化

②現行の「奨励品種制度」が民間参入の邪魔

③都道府県の「育成品種」の優位をなくす

④都道府県の種子事業への負担を減らす、(廃止せずとも対策はある)

 

結局、種子事業を民営化して、「国産種子・農民種子」を国際多国籍企業が開発した「特許種子」に置き換える企みであった。

 

3.「種子の開発データ」の解放圧力

政府は、2017年、「良質かつ低廉な農業資材(種子を含む)の供給に関する施策」と銘打って、「農業競争力強化支援法」を制定した。

条文には、民間事業者が行う種子の技術開発、新品種育成を促進するため、都道府県が有する「種苗の生産に関する知見」を民間事業者に提供するという規定も入っている。

自治体が、長年蓄積してきた「種子の開発データ」を無料で民間企業に公開する羽目になったが、驚いたことにほとんど議論もなかったという。

 

4.規制改革推進会議 農業ワーキンググループ

 内閣府から指名されて農業分野の「規制改革を推進した」メンバーは下記。

(委員)太田ひろ子(議長)、金丸恭文(議長代理)、飯田泰之(座長)、新山陽子、林いづみ

(専門委員)斎藤一志、白井裕子、藤田毅、本間正義、三森かおり

(事務局)窪田規制改革推進会議次長、他

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

①「種子法廃止」は、モンサント社(現バイエル)など、ハゲタカ巨大企業の市場開放要求に屈した代表事例である。

 

②「農業競争力強化支援法」の制定は、農業所得の向上や、農業の競争力強化という美名のもとで、農業資材を扱う地場産業を衰退させ、地方を切り捨てる政策であった。

 

③「種子法廃止」は、TPP(環太平洋経済連携協定)の一環として進められた面もある。関税の撤廃により米国などから安い農作物が流入し、日本の農業に壊滅的なダメージを与える恐れがある。


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