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脱グローバリズム⑨ 酪農産業の命運 [脱グローバリズム]

1.牛乳・乳製品の需要と供給

 日本の牛乳・乳製品の需要量と生産量(2015年度)は下記の通り。 

 

国内総需要量

国内生乳生産量

輸入量(生乳換算)

1,189万トン

761万トン(64%)

432万トン(36%)

 

 

 

国内生乳生産量

飲用等向け

乳製品等向け(生乳換算)

761万トン

401万トン(53%)

360万トン(47%)

 

なお、乳用牛飼育農家は 17.7万戸、乳用牛飼育頭数は 137万頭。

 

2.牛乳・乳製品自給率は642015年度、日本乳業協会)

 生乳(牛乳)は100%国産で、チーズなどの乳製品を含めると自給率は64%程度になる。なお、飼料は輸入が多いので、飼料自給率42%を加味したカロリーベースの自給率は27%程度である。

64% X 42% = 27%)

 

3.乳製品の関税引き下げ

 2018年、日欧EPA交渉で日本は関税を大幅に引き下げた。特にチーズなどの乳製品については、国産を守る気が全くなかった。

生乳の消費量は夏に多く、冬に少ない。余った生乳はバターや脱脂粉乳などの乳製品に回したいが、関税を下げて乳製品の輸入が増えると、国産の生乳の自給調整が難しくなる。

そのうえ、まもなく始まる日米FTA交渉で、日欧EPA交渉結果を超える厳しい要求をしてくのは間違いない。乳用牛飼育農家のさらなる大幅減少は避けられない。

 

4.酪農家を守らない日本

 世界の酪農市場を見ると、価格競争力のトップはニュージーランドで、これと競争するため、フランスの農家は収入の9割、ドイツは7割を政府が補助している。

 一方、日本の農家は、収入のうち政府の補助金は4割弱である。農家の所得を補償する補助金制度は、民主党政権時代に始まったが、安倍政権になって半減し、2019年にはゼロになってしまった。 

 

 餌の値上がりも深刻だ。飼料畑を畜舎に変えて、飼料は輸入に頼る政策に転換した結果、アメリカのトウモロコシに依存することになり、飼料価格は2004年から10年で3倍に上昇、アベノミクスで加速した円安のダメージが重なり、酪農家の倒産が多発した。

 

5.グローバリズムの農協潰し

2017年、「改正畜産経営安定法」が施行され、農協が酪農家から生乳を全量買い取る「指定団体制度」が廃止された。日持ちのしない生乳を乳業メーカーに買いたたかれないよう、間に入っていた農協を政府が排除したことになる。

 グローバリズムの権化である規制改革委員会(当時の委員長・宮内義彦オリックス会長)が、構造改革の名のもとに農協潰しを図ったのである。

 

6.成長ホルモン入り乳製品

 アメリカは、1993年から乳牛に「遺伝子組み換え成長ホルモン」を投与し、乳量を3割増やすことに成功した。1998年に、このホルモンはがん発症率を上げるという論文が出ると、全米で反対運動が興った。カナダやEUは、この成長ホルモン入り乳製品の輸入を拒否している。

 日本は成長ホルモン入り乳製品の輸入を、毅然として拒否できるか疑わしい。日米FTA交渉の行方を注視する必要がある。

 

7.まとめ(筆者の意見)

 

①「科学的に健康被害が証明できないなら、輸入禁止は認められない」と、アメリカがWTOに提訴し、WTOは違反判決を出した。WTOが大国の圧力に弱いのは問題だ。「予防原則」を重用しよう。

 

②酪農産業をグローバリズムの餌食にしてはいけない。規制改革の本質的見直しを願う。

 

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