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脱グローバリズム⑩ 土地が売られる [脱グローバリズム]

1.農地法改正で外国企業にも開放

 2009年、一般企業も農地が借りられるようにする法改正が行われた。ただし、所有権は従来通り農業法人に限定する建前であった。

 2015年、安倍政権は、「日本を世界一ビジネスしやすい国にする」という目標を掲げ、農林水産業を成長産業にするという「日本再興戦略」を閣議決定した。

 これで、外国企業にも農地取得の道を開いた。

 

2.土地・農地は安全保障の重要な資産

 農地は単なる土地ではない。領土であり、水源であり、環境保全のための資産であり、国の安全保障の重要な資産である。

 2018年、参議院農林水産委員会で、「外国人が日本の農地を所有することの問題」を指摘され、斎藤農林水産大臣は、「外国法人の流入はない」と反論した。

 

3.中国の野望と各国の対応

 食料も水も不足が深刻な中国企業による農地の買い占めが、世界の脅威になっている。遺伝子組み換え作物の輸出で莫大な利益を上げる米国アグリビジネスを手本にして、急激に後を追い上げている。中国政府のお墨付きを得て、中国企業は世界各地で農地買収を推進中である。

 

 フランスのマクロン大統領は、外資による農地の買い占めを規制する方針を発表した。ブラジルも「外国人土地規制法」を進めている。オーストラリアでは、買い占めた土地でぶどうを栽培し、「オーストラリア産ワイン」として中国人に販売している。

 農地を買った中国企業は、労働者も流通も消費者も垂直統合し、全てセットで商売にするので、現地には金が落ちない。

 

4.北海道と沖縄が危ない

 2016年、日本で買われた土地面積は202ヘクタールで、前年比3倍となった。ほとんどが北海道の森林である。水源を占有されたら問題が起きかねない。

沖縄でも、国が借り上げている米軍用地の10%が中国資本の所有だという。日本の防衛ラインが棄損しかねない。

 

 日本で土地を買うとおまけがいろいろついてくる。法人を設立してスタッフを置けば、「管理者ビザ」がおり、10年たてば、永住権が取得できるという。

 外国人の土地購入は安全保障上の問題があるにもかかわらず、日本政府の反応は鈍い。

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

TPP11の付属書「投資・サービスに関する留保」の中に「土地取得の禁止・制限」条項があるが、相互性の但し書きがあって、禁止・制限は効かない。TPP11の発効で土地の市場開放は止められない。

 

②「アイヌ新法」の成立で、アイヌの権利保障が進んだが、北海道の土地が外国資本にわたって、日本の主権・領土が侵されなければよいが、心配だ。

 

コラム 日本は、コロナ危機からどう脱出するか

 

 新型コロナウイルスが猛威を振るっている。「コロナ」は「クルナ」で、人の交流を妨げ、分断まで生じている。日本は、コロナ危機からどう脱出したらよいか考えてみよう。

 

1.防疫管理体制の充実

 安倍政権の方針の揺らぎや、ちぐはぐな施策について批判が高まっている。経済は取り戻せるが、人命はかけがえがない。入国制限や非常事態宣言の発出時期などについて、迅速かつ的確な運営をするため、充実した「疾病管理センター」を作ってほしい。

 

2.医療体制の充実

 治療薬、ワクチン、重篤な肺炎患者を治療する医療機器の開発には、カネに糸目をつけず、公費による投資が望まれる。病床数削減政策をやってきたが、見直すべきだ。政府の緊縮政策は悪だ。

 

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脱グローバリズム⑪ 森が売られる [脱グローバリズム]

1.森林が多く自然が豊かな日本

 日本の森林率は64%で、フィンランド、スエーデンに次いで世界3位だ。日本は、拡大造林政策を採用し、針葉樹の植林を進めてきた。

 

2.木材輸入自由化で、林業は衰退

木材輸入自由化で、輸入木材が入ってきて値段がり、林業人口が減少して、手入れをされない森林が増えてしまった。

木材自給率は2002年に18.8%まで低下した。ただし、201634.8%まで回復したが、インドネシア341%、カナダ303%には勝てない。

 

3.森林経営管理法

 2018年、国民が気づかないうちに、国の資産を売る「森林経営管理法」が議決された。「きちんと管理する気がない」と判定されると、所有者の許可なく業者が伐採して良いことになった。

 林業を大規模ビジネスにすると称して、大型機械を走らせるための巨大な林道を作り、効率を追求した結果、豪雨時に林道は崩れ、山崩れを多発することになった。森林を林業ビジネスの商品としてしか見ない愚かな政策がすすめられてきた。

 

4.バイオマス発電事業

 林業に企業のノウハウを取り入れると称して、くだんの「規制改革推進会議」は、木材チップを使うバイオマス発電事業に目を付けた。

 国際資本の仏ヴェオリア社と提携して、バイオマス発電事業を全国展開していたオリックスが優遇を受けたのは当然。なぜなら、規制改革委員会の委員長が宮内義彦オリックス会長であったから。

ここにも、新自由主義・グローバル資本主義が日本に深く浸透している姿がみられる。

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

①「森林経営管理法」の審議資料に「8割の森林所有者は経営意欲がない」とあったが、もとのアンケートに「経営意欲」に関する項目はなかった。目的ありきで資料を改ざんする官僚の体質はひどい。

 

②秋田県の「大館曲げわっぱ」は樹齢110年以上の杉材を使うという。森林経営管理法の改正で「樹齢55年以上の木はすべて切る」となった。地場産業を潰し、巨大企業に寄り添う政策は疑問だ。

 

コラム  コロナ危機後、日本復活のシナリオ

 

日本は、30年間にわたる誤った緊縮財政政策のおかげで、劣等国に転落した。プライマリーバランス黒字化という財政均衡主義ではなく、経済均衡政策こそ目指すべきだ。民間が委縮しているデフレ期に、財政支出を拡大して民間活力を引き出すのは、政府にしかできない仕事である。論拠は下記。

 

1.財政破綻論は財務省の悪質なプロパガンダ

 ①自国通貨建てで国債が発行できる国は財政破綻しようがない

 ②赤字国債の発行は、政府の貨幣発行であって、国民の借金ではない。それどころか、国民の所得や貯蓄の増加になる。(政府の赤字=民間の黒字)

 ③赤字国債の発行限度は、唯一、インフレ率(2~4%)である。

 ④税の機能は、過度のインフレ時のブレーキ役と所得再分配役でる。税は、財源として必須ではない。

 ⑤政府の借金は国民負担ではない。借金は借り換えで凌げる。好況時、税の自然増収や累進課税で政府の借金を減らすのは構わない。GDPの増加分を、民間と政府が分け合うことになる。

 

2.政府は、政府にしかできない役割を果たせ。5%経済成長も夢ではない。

 ①デフレ期には、国債を発行して大胆な財政支出をせよ。公共投資、防災減災投資、人材開発投資、基礎技術投資を積極的に主導して、民間投資を誘発せよ。

 ②消費税をゼロにせよ。消費税は、GDP6割を占める消費への罰金である。福祉財源は別にある。

 ③次世代通信規格の5G、コロナ危機対応などの施策には、国が直接関与を強めよ。日本の補助金行政は不十分で、社会主義現代化強国を目指す中国に負けて、属国にされてしまう。

 

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脱グローバリズム⑫ 海が売られる [脱グローバリズム]

1.漁業権の民間開放

 2016年、地元の漁業協同組合が管理する漁業権を民間に開放する、いわゆる構造改革が始まった。政府の規制改革推進会議の意向に沿った、規制緩和に忠実な人々が厳選されて、ワーキンググループが立ち上げられた。日本の漁業の衰退は漁船の老朽化と、漁業者の老齢化だと決めつけ、民間資本を導入して漁業を成長産業にするという触れ込みである。

 

2.水産特区の失敗

 宮城県に設置された「水産特区」は、漁港の集約、大規模化、株式会社化を目指し、現場漁業者や組合の反対を押し切って強引に導入された。結果、県内140か所の漁港が3分に1に減らされた。漁民は行き場をなくしてサラリーマンに転向したものも多かった。

 特区で、かき養殖を担当した会社の業績は、3千万円近い助成金を得たうえで、5年間で、5千万円近い累積赤字となった。「企業参入で活性化」からはほど遠い内容にもかかわらず、政府は強引に全国展開を進めようとしている。

 

3.海外の失敗事例

 イギリスは、漁港を集約化し、漁船のトン制限を取り去って、漁業の合理化を図ったが、近隣の大型漁船が押し寄せて、地元の漁師の大半がつぶされてしまった。これは有名な失敗事例である。

 

4.海を守る地場産業の崩壊

 漁港は漁協を中心に、地元漁業者の協働で、浜の清掃、稚魚・稚貝の放流、漁場の造成、海難事故への対応などお行い、地元漁業者の生活の場となっていた。そして、漁業権は「漁業法」で守られた来た。

 いま、その漁業権が、利益ありきの株式会社に売り飛ばされようとしている。いずれ、漁業権は入札の対象となり、大手外国企業も入札できる商品になる。こうして、地場産業は崩壊する。

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

①第一次産業を規制緩和と自由化で解体し、生産から小売りまで垂直統合するアメリカ流のビジネスモデルは、間違いなく地域の生業を破壊する。

 

80年代に経済不況から新自由主義に転向したニュージーランドでは、漁業権を証券化した政府によって、漁業はまさに「商品」にされた。グローバリズムを見直す時だ。

 

TPPが発行すると、「漁業権」は入札制になり、大手の外国企業も参加するオークションの「商品」になる。

 

コラム  コロナ危機後、日本復活のシナリオ②

 

 昨年の消費税増税とコロナ危機に見舞われて、日本は未曾有の経済危機に直面している。経済のV字回復による日本復活を果たすために、前回の当コラムで指摘した反緊縮政策とともに、下記の政策を実施したい。

 

1.脱・グローバリズムの実践

 行き過ぎたグローバリズムは、国民の命を守るべき「国民国家」の働きを損なってしまうものである。当ブログで述べたように、移民法、種子法、水道法、IR推進法、漁業法など、法改正の内容をもう一度見直して、過当競争を回避し、適正な賃金を払い、国民を大切にする日本を取り戻そう。

 

2.東京一極集中の是正

 東京一極集中は、自然災害対応を困難にし、出生率を低下させ、地方の過疎化・限界集落化につながる。緊縮政策にとらわれず、政府機能の地方移転、企業の工場移転、大学の地方分散などにより、東京一極集中を是正し、「地方創生」と「人材育成」で生産性の高い豊かな日本を作ろう。

 

3.公共サービスの充実

 国土のインフラ整備は国の仕事で、一人当たりの生産性を向上する基礎である。高速道路整備、港湾の拡充、老朽化した橋梁の補強などいくらでもある。電子決済や5Gなどの先端技術分野は、初期段階は国営にして、国が積極的に関与し、軌道に乗ったら民間に移譲するのが良い。

 

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脱グローバリズム⑬ 卸売市場が売られる [脱グローバリズム]

1.公益卸売市場の役割

 卸売市場は、食品の安全と品質を生み出す全国の生産者を守り、適正価格で消費者に提供する役割を果たす公共インフラである。生産者、卸業者、仲卸業者がタッグを組んで、日持ちのしない生鮮食品の流通を担い、人を育てるプラットフォームである。ネット社会だからと言って、簡単に中抜きを狙っていいものではない。

 

2.卸売市場法の改正

 2018年、誰も気づかぬうちに「卸売市場法改正」が参議員を通過した。公益卸売市場の民営化の始まりだ。

 政府と規制改革推進会議にとっては、第一次産業や地域経済、食の安全保障を守るより、TPP協定に従う方が急務であったのだろう。

 

3.ウォルマートの事例

 アメリカのレーガン政権時代に、ウォルマートが生産、加工、流通までを自社の傘下に入れ、価格競争にさらされた中小生産者と地方商店街がバタバタと倒産した事例がある。そこでは、受け継がれてきた文化や伝統、共同体が消滅の憂き目を見た。

 

4.公共インフラ・築地の解体を許すな

 卸売市場法改正がまもなく施行される。今まで、自治体に任されてきた中央卸売市場の開設条件が変わって、民間が参入できるようになる。次には、仲卸業者を通さない直接取引を解禁も。結果、市場は、品質は二の次で、大企業主導の価格競争の場になってしまいそう。「築地ブランド」は消え、「築地卸売市場」の公的機能が政府によって解体されてゆく。築地は豊洲に移転いたが、実態は変わらない。

 

5.まとめ(筆者の意見) 

 

①規制は民の暮らしや地方の文化・伝統を守る砦である。構造改革の名のもとに、規制緩和、自由貿易、緊縮財政を強行し、小さな政府を指向する、いわゆるグローバル化はもはや限界である。

 

②コロナ危機を契機にして、世界的にグローバル化の動きに逆風が吹いている。日本の政官産学の要人が、一日も早く、これに気づいて方向転換してほしい。

 

コラム  コロナ危機後、日本復活のシナリオ③

 

1.政府主体の技術開発事業

政府は、58日、官民共同で進めていた新型コロナウイルスの感染追跡アプリの開発について、今後は、厚労省が主導すると決めた。運用も厚労省が担うという。アプリの共通規格の使用で米社から注文を付けられたとは言え、政府主体の技術開発事業は今後の良いモデルになる。5Gや電子決済システムの統合などに応用して、技術大国日本を取り戻してほしい。

 

2.経団連に告ぐ

今の経営者は、株価、配当、内部留保、役員報酬にしか関心がない。証拠は下図の通り。日本社会を動かすリーダーとして下記事項を実践してもらいたい。

 

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①政府の財政均衡論に騙されている経営者がほとんどだ。通貨発行権のある政府の財政は、家計や企業財政とは違うことを早く気付くべきだ。

 

②消費税増税への強い関与をやめるべきだ。国民を苦しめて、法人税減税を狙うのは卑怯。

 

③労賃の安い移民を導入して、国民の実質賃金低下を策謀するのはやめるべきだ。移民頼みは悪。

 

④米国のGAFAや中国のプラットフォーマーに匹敵する国内企業を育てよ。経団連にも果たせる役割がある。

 

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脱グローバリズム⑭ まとめ [脱グローバリズム]

1.日本の新自由主義と構造改革の経緯

新自由主義は、市場原理主義に基づいたグローバル資本主義で、小さな政府を指向する。米のレーガン大統領が採用したレーガノミックスが始まりで、日本では中曽根康弘、小泉純一郎が追随した。

 

 小泉純一郎元首相が「構造改革」の名のもとに、「小さな政府」、「官から民へ」、「中央から地方へ」などのキャッチフレーズを唱え、既得権の排除や規制緩和により、道路公団や郵政の民営化を断行し、経済再生を目指したが、結果は惨憺たるものになっている。

 

 「構造改革」の弊害として、国民生活の格差拡大、行き過ぎた市場・競争原理による拝金主義の台頭、社会保障での弱者切り捨てなどが起きた。今、「構造改革」への批判が高まり、見直しの動きが出ている。

 

2.グローバリズムの弊害の極致

 現在は、1980年代に始まった第二次グローバル化が、2008年のリーマンショックをピークに転換期を迎えている。図は、1997年を100とした、日本企業の売上高等の指数の推移(2017年まで)である。

 

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①配当金は5.73倍に急騰。国際金融資本の圧力を受けて、従業員の給与を削って捻出した利益を優先的に株主配当にまわすという、グローバル化の帰結。

②経常利益は3.06倍。日本の将来はそっちのけで、設備投資はせず、目先の利益を増やして配当へ。

③役員給与1.3倍。アメリカの経営者ほどではないが、役員報酬与を手前勝手に増やしている。

④、売上高1.03倍で横ばい。世界で唯一経済成長をしない国になった。

⑤従業員給与0.93倍、設備投資0.64倍。人件費をケチり、生産性向上の投資はバッサリ。

 

3.日本を売り渡す、構造改革に反対し、日本を取り戻そう

 行き過ぎたグローバリズムは、国民の命を守るべき「国民国家」の働きを損なってしまうものである。現に、移民法、種子法、水道法、IR推進法、漁業法など、安倍政権は、ろくな審議もせずに法改正を行った。米国などからの圧力に屈したとはいえ、国際金融資本に日本を売り払ったに等しい。

法改正の内容をもう一度見直して、過当競争を回避し、適正な賃金を払い、国民を大切にする日本を取り戻そう。

 

4.多国間連携の再構築

 健全な国民国家が取り戻せたら、その先は新しい「多国間連携」である。米国のような覇権国家が、「米国第一」を唱えながら、恣意的、利己的に世界を仕切るのはいただけない。地域連合と世界政府が正しく機能する、新しい統治機構を構想する時期が来ている。(当ブログ「世界政府」参照)

 

5.まとめ(筆者の意見)

 

①人はなぜ「改革という言葉」に騙されるのか。改革でコストを減らし、儲けを外国の業者に差し出すのが良いはずがない。コストは、本来、国内の「国民の所得」になるはずのものである。

②聖域なき構造改革とは何か。行政改革、公務員制度改革、規制改革などなど、改革の氾濫である。中身は、人員削減、予算削減、公共サービスの削減など、緊縮政策と新自由主義政策ばかり。 

③公務員たたきが激しい。地方公務員も含めて過剰で無駄だという。本当だろうか?公務員比率中国45%、米国27%、ドイツ21%、日本11%。災害時には国民の命を守る存在を邪見にすべきではない。

④大企業のトップが、政府の諮問会議の委員になって、規制緩和を叫び民営化を果たして、自社の利益を増やすのは紛れもなくレントシ―カ―(利益誘導)である。

⑤安倍首相はかつて「国境にこだわる時代は終わった」と発言された。グローバリム信奉者の発言であり、すぐに考え方を改める必要がある。

 

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