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21世紀、日本の針路 ⑨東アジア共同体の理念 [平和外交]

 日本は、対米従属から脱却し、アジアに正面から向き合う新機軸の外交を進めたい。その第一歩は、東アジア共同体の推進である。東アジア共同体の真の目的と、目指すものは何かを考えてみよう。

下図は、このシリーズの初回に掲載した図の一部である。

 

未来

2018

 

国連

東アジア共同体

政権

国民

 

1.東アジア共同体が目指すもの

東アジア共同体のビジョンや戦略目標は、下表のとおりまとめることができると思う。

 

NO

目指すもの

内容

1

人、もの、カネの地域内移動の自由化を通じて、地域協力体制を作る。

人(特に熟練工、商用訪問者)の移動の自由化、

ものやサービスの関税撤廃による流通の自由化、

カネ(金融や投資)の自由化を通じて、地域協力を進め、

相互に利益を分かち合う。

2

地域の競争力を向上し、豊かさを実現する。

交通運輸、エネルギー、情報通信などのインフラ投資を充実し、イノベーションを促進して、単一市場としての機能を向上し、経済的豊かさを実現する。

知的財産権保護や消費者保護も進める。

3

人権と安全が守られる社会を実現する。

官民連携により、中小企業を育成し、経済格差を是正し、人権と安全が守られる社会を実現する。安全保障には、感染症やテロ対策等の非伝統的安全保障も含む。

4

グローバル連携を強化する。

域外国・域外地域との経済連携協定を改善し、強化して、世界のグローバル化の動きに適応する。

米国を敵にせず、地域協力を深める方策が鍵である。

5

戦争のない世界を実現する。

紛争を処理する機関を設け、地域内の平和を実現する。

さらに、地域外の共同体と連携して、「戦争のない世界」、「格差も抑圧もない積極的平和の世界」を実現する。

 

2.不戦時代の地域協力と国際協調

 中国の台頭を契機に、アメリカ一極支配の時代が終り、いま世界は、多極支配の時代へ向かっている。ローカルな紛争は別にして、核保有国の核兵器は、相互に防御不能であり、国と国の戦争ができない不戦時代となっている。

 不戦時代の外交は、安全保障偏重より、地域協力と国際協調である。東アジア共同体、EU,北米自由貿易協定(NAFTA)などの地域連合が、それぞれの地域の利益を増進するとともに、国際協調により、平和な地球を実現することを願う。これは、核廃絶への近道でもある。

 

3.まとめ(筆者のコメント)

 

①東アジア共同体(ASEAN+日中韓)の輸出依存度は50%強、輸入依存度は60%強である。直接投資依存度も高く、流通コストは劇的に低下している。共同体推進をためらう理由はない。

 

②政治体制や価値観が異なる国同士の共同体は成立しないという説があるが、1項の「目指すもの」見ても、障害はない。人権尊重は当該国民が決めることで、他国が押し付けることではない。

 

③岡倉天心が「アジアは一つ」と説き、福沢諭吉が「脱亜入欧」と唱えた。今は、「親亜親欧」の時代ではないだろうか。

 

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21世紀、日本の針路 ➉東アジア共同体の段取り [平和外交]

 日本は、対米従属から脱却し、アジアに正面から向き合う新機軸の外交を進めたい。その第一歩は、東アジア共同体の推進である。東アジア共同体は、どのような段取りで実現するか考えてみよう。

 

1.東アジア共同体の発展段階

 バラッサの経済統合論を参考に、共同体の導入ステップを、表にまとめてみた。課題はあるが、克服すればメリットは大きい。10年くらい時間をかけて共同市場まで進み、その先はさらに多くの時間をかけて交渉するのが良い。交渉の中から、東アジアの平和が育まれると思う。

 

NO

発展段階

説明

課題

1

自由貿易

参加国相互間の域内関税を撤廃し、貿易を自由化する。

やむを得ず関税を残す品目があれば、各国間で誠実に交渉し、協定を締結する。粗悪品の流入には要注意。

2

関税同盟

上記に、非加盟国からの輸入品に共通関税をかける。

域外各国と個別の関税交渉ができなくなる。

グローバリゼーションの時代に、非加盟国に対し、排他的な関税政策をとると、軋轢を生む。米国が黙ってはいない。

3

共同市場

上記に、労働力、資本などの生産要素の域内自由移動を保障する。マクロ経済政策を統一して実行する機能も持つ。 

人の自由移動で、難民流入が増え、円で元を支えるリスクなどの不都合が起こり得る。マクロ経済政策の統一で、各国の主権が侵される。

4

経済同盟

上記に、構成国間の経済政策の調整が、ある程度実施される。通貨の統一もテーマになる。

構成国の実力がそろわず、無理を押し付けると軋轢を生む。

財政政策の自由度が減る。

5

完全な

地域統合

経済、財政、金融、通貨が統合されて、一つの国のようになる。

このような地域統合は、まだ地球上に実現していない。

 

2.東アジア共同体の段取り

 

(1)政府主導のプロジェクト立ち上げ

当ブログの「東アジア共同体の歩み」で述べたように、共同体は多くの産官学の枠組みで研究され、報告されている。しかし、すでに研究段階は過ぎた。政府が本気で取り組む時期である。

 

(2)対中国のアプローチ

東アジア共同体の交渉において、難物は中国である。中国と交渉開始の合意ができれば、8割がた、スタートアップは完了である。日本は、中国を仮想敵とせず、交渉の本気度を態度で伝えるべきである。歴史認識や靖国問題などは、霧消するに違いない。周辺国が結束して中国に立ち向かおう。

 

(3)ASEAN+3(日中韓)で、まず、交渉しよう

 日本は共同体の交渉で中国の圧力を緩和するため、インド、豪、ニュージーランドの力を借りようとして、ASEAN+6にこだわっていている。これは戦略ではあるが、日本の弱腰で、交渉の本格スタートを遅らせるだけである。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。

 

(4)アメリカの説得

 日本が、アメリカを排除するのではなく、その支援を得ながら、アジアの平和的発展に、本気でコミットする決意を披露すれば、説得はできると思う。

 アジアのことは日本と中国に任せてもらって、アメリカは、地域連合を束ねる世界政府のような組織の中枢を担ってもらうのがよい。この構想について、アメリカの心ある要人への根回しは必須である。


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21世紀、日本の針路 ⑤平成不況期の「国のかたち」  [平和外交]

 ⑤の記事が、投稿漏れとなっていたので、遅まきながら投稿する。

バブル崩壊後の不況期と平成時代の30年は、ほぼ重なっている。この時期は、グローバル化の進展で、アメリカの多国籍(無国籍ともいう)企業の隠然たる支配があり、日米安全保障条約による、軍産複合体の日本支配も続いている。日本は、70年以上、体制転換をしようとしなかった。

平成不況期の「国のかたち」は、簡単に表わすと下図の通りになると思う。この図は、前回の当ブログに掲載した図と同じである。 平成不況期の主要な出来事の歴史的な意味を考えてみよう。

 

 

戦後

19452018

 

国体

(米国)

米・軍産複合体(注)

政権

国民

(注)ジャパンハンドラーともいわれ、日本の官僚を従えて、日本を支配している。

  :矢印の向きは国民主権の意味だが、権力の乱用もあって、十分ではなかった。

 

1.湾岸戦争

平成2年(19908月にイラクがクウェートに侵攻したのに対し、アメリカを中心とする55万の多国籍軍をアラビア半島に派遣した戦争。日本はアメリカの要求で130億ドルを支出したが、兵士を送らなかったということで感謝されず、バッシングにあった。

 

2.ソ連崩壊

平成3年(199112月に、ソ連のゴルバチョフ大統領が辞任し、同時に各連邦構成共和国が主権国家として独立したことに伴い、ソビエト連邦が解体され消滅した。アメリカとともに2大超大国として69年間続いたソ連が崩壊し、冷戦時代が終わり、アメリカ一極支配(1G)の時代に入った。

 

3.村山談話

平成7年(1995815日、村山富市元首相は総理官邸で記者会見し、「日本の植民地支配と侵略によって、多くの人々、とくにアジアの諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えた」と発表、大東亜戦争を侵略戦争と断定し、「痛切な反省の意を表し、心からお詫びの気持ちを表明いたします」と述べて頭をたれたこの種の謝罪談話は、河野、小泉(演説)、安倍など何回も繰り返されている。

 

4.日米安保共同宣言(平成8年(19964月)

訪日したクリントン米大統領と橋本首相の日米首脳会談で合意された日米安保の共同宣言。冷戦終結に合わせて、中国を念頭に、範囲を極東からアジア太平洋に拡大し、軍事同盟色を強化した。

 

5.新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)

①平成8年の日米安保共同宣言を受けて、日本の分担を、極東以外の「周辺事態」に広げ、軍事大国化路線に踏み出した。

②平成27年、中国の海洋進出を念頭に、「切れ目のない対応」と称して、いつでも、どこでも自衛隊が米軍の後方支援をする体制を作った。

 

6.平和安全法制整備法案の強行採決(平成27年(20159月)

平成267月の集団的自衛権行使容認の閣議決定を受けて、11本の法律を作り、議会で強行採決をした。前項の新ガイドラインで約束した内容を法制化したもので、違憲を承知の解釈改憲である。

 

7.まとめ(筆者のコメント)

①平成時代というと、まず今上天皇のお姿が浮かぶ。天皇は国民一人ひとりの「祈り」を集めて祈ってくださるご存在である。平和日本の象徴であり、天皇の政治利用はすべきではない。

②謝罪談話は、村山、河野、小泉、安倍など何回も繰り返されている。日本は、アメリカに従属し、アジアで、自ら「よそ者」に身をやつしているせいだ。別の道がある。

③日米同盟は敵を作り出している。軍事同盟強化は、仮想敵の軍備を強化させ、敵対関係を増強する悪循環に陥るもので、賢明な選択とは言えない。

 冷戦終結から30年近く、いまだに、対米従属から抜け出そうとしない政治が情けない。

 

 

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21世紀、日本の針路 ⑪国連改革の試み [平和外交]

 東アジア共同体のような地域連合の構築に引き続くテーマは、世界政府の樹立である。アジア、EU、米州などに、それぞれの地域連合体が首尾よく構築された後、それらを束ねる世界政府をどのように作ってゆくかを考えてみよう。日本の安全保障にも革命的な好影響があると思う。

下図は、このシリーズの初回に掲載した図の一部である。国連の表示を、世界政府に変更させていただいた。

 

未来

2018

 

世界政府

(国連)

東アジア共同体

政権

国民

 

1.国連安保理改革の現状

国連改革の最重要課題は、国連安保理改革である。194551か国で発足した国際連合(国連)は、現在193か国が加盟する国際機関となっている。

国連の安全保障理事会は常任理事国(戦勝国)の5か国、非常任理事国(任期2年)の10か国で構成され、日本は過去に11回非常任理事国を務めた。

 国連安保理改革の一つとして、非常任理事国の数を15か国に増やす案や、日本などを常任理事国に格上げする案などが検討されているようだが、73年たっても実現していない。

最大の問題は常任理事国の拒否権である。中国、ロシアがらみの議題は両国の拒否権発動で、採択されることはなない。世界政府機能を持つなどは夢で、国連は機能停止に陥っている。

20167月の当ブログ「国際改革は地域連合から」参照

 

2.世界連邦政府推進運動の経緯(次回詳報)

 世界連邦運動(WFM)は、国際的な非政府組織で、世界のすべての国家を統合した世界連邦の成立を目指している。1946年、国連の戦争抑止能力に失望した世界の有識者が、「世界連邦政府のための世界運動」を起こした。アインシュタイン、チャーチル、湯川秀樹などが賛同した。運動の詳細は、次回の当ブログで述べる。

 

3.国連中心の安全保障

 日本国憲法は1946年に占領軍によって制定され、9条により、戦争を放棄し、軍隊を持たないこととなった。日本はダルマさんになったが、何かあれば国連が守ってくれると期待されていた。

ところが、東西冷戦がはじまり、国連が全くあてにできなくなり、代わりに1952年にアメリカと安全保障条約を締結し、守ってもらうことになった。対米従属の始まりである。

 1989年の冷戦終結を機に、アメリカの代わりに国連に安全保障を委ねるとする提案があった。(加藤典洋氏の「戦後入門」参照)

国連軍を増強して、加盟国の安全保障を担ってもらう構想であるが、現行の安保理体制では、実現は難しいと思われる。

 

4.地域連合と世界政府(筆者の提案)

アジア、EU、米州などの地域連合の上に、これらを管理するための、世界政府機能の創設を提案する。これは、国連の改革というより、世界政府機能を新しく創設し、国連組織のうち、使えるものは利用するという構想である。

詳細は当ブログの後続の記事で述べる。

 

左端は大山、中央に富士山頂(町田市成瀬尾根道から)

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21世紀、日本の針路 ⑫世界連邦政府推進運動 [平和外交]

1.世界連邦運動の経緯 

2次世界大戦の末期に、「将来の世代を戦争の惨禍から救う」ために、国連が創設されたが、数週間後、広島、長崎に原爆が投下された。平和維持機構としての国連に失望して、1946年、国家を超えた権威と権限を有する世界連邦機構を作りたいという世論が起こった。

 世界連邦運動は、国連の改革と強化を通して世界連邦を実現し、世界連邦政府の法の下で、平和と人権を守ってゆける世界を構築する運動である。

アインシュタイン、チャーチル、湯川秀樹などの著名人が賛同した。

 

2.世界連邦運動の活動方針 

1947年、スイスのモントルーで開かれた第一回世界大会で、世界連邦政府運動の組織や方針を発表した。いわゆるモントルー宣言の内容を要約すると下記である。

①全世界が対象 ②国家の主権の一部を世界政府に移譲 

③世界連邦法は個人を対象に ④各国の軍備を全廃し、世界警察軍を設置 

⑤原子力は世界連邦政府のみ所有し管理 ⑥経費は個人からの税金で賄う

 

世界連邦政府への参加資格は個人単位であり、事実上の「単一世界国家」(ワンワールド)建設である。

 

3.世界連邦運動の日本の活動

終戦直後に、尾崎行雄ら有志議員が「世界連邦建設に関する決議案」を国会に提出。1948年「世界連邦建設同盟」が結成され、尾崎行雄が初代会長になった。第5代会長に湯川秀樹が就任している。

「世界連邦建設同盟」はのちに、「世界連邦運動協会」に名を変えて活動している。

2005年、衆院本会議での「国際平和の構築への貢献決議」を受けて、外務省総合外交政策局に世界連邦運動の窓口を設置した。

日本国内の関係団体として、世界連邦推進日本協議会、世界連邦日本国会委員会、世界連邦宣言自治体全国協議会、世界連邦日本宗教委員会、世界連邦日本仏教徒協議会、世界連邦文化教育推進協議会などがある。

 

4.世界連邦日本大会

 世界連邦運動の最近の事例として、2018/8/18 第34回世界連邦日本大会が亀岡市で開催された。スローガンは「地球に国境はない」で、千玄室(大宗匠)の記念講演があり、テーマは「世界の人とともに―和の心―」。後援:外務省、文部科学省、京都府

 

5.世界連邦政府の実現を求めた著名人の言葉(筆者が要約)

アインシュタイン 世界政府を擁護するのは、他に人類の破滅を避ける方法がない。

湯川秀樹     世界連邦は昨日の夢であり、明日の現実である。

バートランド・ラッセル 大戦争を恒久的に阻止する機関は世界連邦政府しかない。

尾崎行雄     世界の廃藩置県なくして、人類の平和はない。

アーノルド・トインビー 世界政府の「平和と正義」が世界を救うであろう。

賀川豊彦 人類の解放は世界連邦国家しかない。争いはやめ、公儀と親切を伝統とせよ。

ネルー(インド) 世界政府は来るであろう。それ以外に、世界の病気を治せない。

稲盛和夫 EUは世界連邦政府のひな型。為政者はその拡大を考えよ。

梅原猛  EUのような組織を世界各地に作り、その上に、世界連邦政府を作ろう。

千玄室   「普遍的な人類愛」こそ、平和な世界の実現につながる。

アグネス・チャン  平和は砂のようなもの。気を抜くと指の間から零れ落ちる。

 

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